無線LAN機器の注目用語、「トライバンド」とは?安定・高速化実現の3帯域仕様
多台数接続ニーズ拡大への対応

2.4GHz+5GHz(W52・W53)+5GHz(W56)の3帯域

IT機器では、技術進化に伴い耳慣れない新しい用語が次々と登場してくるものです。無線LAN関連機器も、例外ではありません。MIMO(*1)やチャネンルボンディング(*2)などもそうですが、最近になって取り上げられる機会が増えている注目ワードが「トライバンド(Triband)」です。
(*1)送受信側の双方に複数のアンテナを搭載し、同じ周波数帯でデータの同時通信を行うことで伝送速度を高速化する技術
(*2)2チャンネルを束ねて通信する技術

トライバンドを直訳すると「3帯域」となり、文字通り通信機器が3つの周波数帯域での通信に対応していることを意味しています。これまでの無線LANアクセスポイントは、2.4GHzと5GHzの2つの帯域を使って通信を行っていたため、デュアルバンド仕様が一般的でした。

これに対し2.4GHz帯と、5GHz帯(W52・W53)/5GHz帯(W56)という2つの5GHz帯に対応するアンテナを装備し、計3つの帯域を使って通信を行う無線LANアクセスポイントがトライバンド仕様です。

●バッファローが2017年1月に発売したトライバンド対応の法人向け最新機

爆発的に増える接続端末

なぜトライバンド化が必要となるのでしょうか。大きな目的は、通信帯域の混雑を緩和してパフォーマンスが低下するリスクを軽減し、接続端末数が増えても安定した通信環境を実現することです。

従来、無線LANアクセスポイントとの接続はPCが主流のため、例えばオフィス内に5台の機器があれば、基本的に同時接続は5回線でした。しかし、スマートフォンやタブレット端末の登場で、アクセスポイントへの同時接続台数は急増。こうした状況が想定されていない時期に開発された数年前のアクセスポイントでは、接続台数が増えるとパフォーマンスが大きく低下します。

最近の無線LANアクセスポイントは、スマートフォンやタブレット端末なども含めた複数端末からの同時接続が考慮された設計となっており、通信パフォーマンスの安定性は高められています。

とはいえ、今後はモバイル端末だけでなく、スマートテレビや複合機、冷蔵庫、洗濯機、その他の様々な機器がインターネットにつながるIoT(モノのインターネット)時代が本格化することにより、無線接続が求められる端末は爆発的に増える可能性があることは想像に難くないと思います。

現状のデュアルバンド仕様の無線LANアクセスポイントでは通信帯域が不足します。というのも、無線通信では、同一周波数帯域で通信を行える端末は1台のみ。複数台の端末が無線LANアクセスポイントに接続されて通信が行われている場合でも、きめ細かく端末を切り替えながら通信を行っているとのこと。同時に通信しているように見えて、接続されている端末は実は1台というわけです。

そうなると、同時接続端末が増えるほど順番待ちが長くなり、パフォーマンスは低下してしまいます。これを避ける1つの手段がトライバンドです。

トライバンドは、2車線の道路に1本の道路を追加して3車線にしたイメージです。車線増加により、これまで詰まっていた自動車が分散されるのでスムーズに流れるのと同じように、帯域を増やし接続端末を分散させることでパフォーマンスが安定します。

トライバンド実現の課題

トライバンド対応の製品は、コンシューマー向けでは2015年頃から無線LANルーターが登場し始めましたが、その考え方や技術そのものは以前からあったとのこと。ただし、製品化には解決すべき課題がありました。

DFS(Dynamic Frequency Selection)障害の問題です。トライバンド仕様で採用される5GHz帯の一部のチャンネル(W53とW56)は気象観測や航空レーダーなどの公共事業用周波数としても使われています。このため、W53とW56で気象・航空レーダーなどとの干渉があった場合、無線LANアクセスポイント側が干渉しない別のチャンネルに移動しなければなりません。

しかも、「移動予定の別のチャンネルで公共のレーダー波と干渉しないかどうかを60秒間監視してからでないと電波を出してはいけない」と規定されています。公共電波が優先と考えれば仕方ないことですが、この規定により干渉が起こった場合、最低1分、場合によってはさらに長い時間にわたり通信が止まってしまいます。

これでは、せっかく高速化したにも関わらず、状況次第ではその恩恵に与れないことにもなりかねません。特に、ビジネス用途では避けたいことではないでしょうか。

そうした中、DFSによる無線LAN通信の停止を回避する機能を備えた製品が登場し始めました。その1つがバッファローのDFS障害回避機能を搭載した法人向け無線LANアクセスポイントです。

気象・航空レーダー監視専用のアンテナを搭載し、常にレーダー波が干渉しないチャンネルを監視・把握することで、レーダー波を検知した際には瞬時に干渉のない別チャンネルへ自動移行できるもの。これにより、干渉発生時も通信が停止することなく、快適で安定的なパフォーマンスを維持できるというわけです。

●DFS障害回避機能。バッファローのHPより引用

無線LANアクセスポイントの通信負荷増大の問題は、すでに顕在化しています。例えば、文部科学省が2016年に公表した教育の情報化加速プランにより小中学校では、「2020年までに児童生徒ひとり1台のICT端末環境の実現」が進められています。そこでは、1クラス30人前後、しかも複数のクラスが同時に通信を行うことが想定されるため、無線LANアクセスポイントには多台数接続や高い通信負荷における安定的なパフォーマンスが求められます。

こうした環境では、従来のデュアルバンド仕様の無線LAN機器では限界があります。学校現場に限らず、通信負荷が飛躍的な増加が予想される今後、トライバンド対応の無線LAN機器もラインアップが充実していくものと思われます。(長谷川丈一)