シャープの中期経営計画「売上高3兆2500億円へ」事業の主軸は「8Kエコシステムの開発」
カメラから編集・配信・受信・再生まで一手に

 「自分自身に点数はつけられない。ただシャープは2015年度に2000億円近い赤字だった会社。それを私が社長に就任して1年経たずして黒字化した(いずれも経常ベース)。これが私の実績。2019年度の中期計画も必ず達成しますよ」
 5月26日にシャープが開催した中期経営計画説明会において、記者から経営改革の進捗度合いを質問された戴正呉社長は力強くこう語りました。その口調は自信に満ちあふれていたというか、「何が何でもやり遂げてみせる」という強い使命感をにじませたものでした。

中期計画では2019年に売上高3兆2500億円

 シャープが発表した中期経営計画の骨子は、2019年度に
●売上高3兆2500億円(2016年度比158.5%)
●営業利益1500億円(同240%)
以上を全社目標とし、そのための投資額として4000億円を計画しているというもの。2016年度までの構造改革期を脱し、2017年度からは成長軌道へシフトすることを明確に表明したわけです。

 もっとも目標数字の大きさからか、達成をいぶかしむ雰囲気が会場に少なからず漂っていたことも事実。その空気が戴社長の冒頭の発言につながったのだと思われます。

 中期計画の実現の可否はさておき、その核となる事業領域については、従来の5つの事業セグメントを再編成し、新たに「スマートホーム」「スマートビジネスソリューション」「アドバンスディスプレイシステム」、そして「IoTエレクトロデバイス」の4つの事業ドメインを設定。そして各事業ドメインの上部組織であり、かつ全社横断組織でもある「AIoT戦略推進室」と「8Kエコシステム戦略推進室」の2つを新設し、ここで関連した新商品・新サービスを開発する体制となりました。

 事業ドメインを個別にみると、まず「スマートホーム」のミッションは「各種機器とサービスの連携で、暮らしを便利・快適にするソリューションを提供すること」。機器としては生活家電や太陽光発電などで構成されますが、独自のIoT技術である「COCORO」や新たなクラウドサービス、そしてビッグデータ解析などにより、これまでにはなかった生活関連ソリューションを提供するとしています。

 「スマートビジネスソリューション」は「ビジネス現場の生産性を高めるソリューションの提供」をミッションとしており、例えば工場向けにはシャープの自社工場で培った多くの技術を軸とした新たなソリューションを、親会社である鴻海と協業で開発・提供するとのことです。

 また、「機器と人とのコミュニケーションを支える先進的なディスプレイの創出」をミッションとする「アドバンスディスプレイシステム」は、いわばシャープの保守本流。事業の方向性として興味深い点は、「8Kディスプレイ需要の創造」と共に掲げられている「FFD(フリー・フォーム・ディスプレイ)や有機ELディスプレイ等の早期事業化」です。スマホ向け有機ELディスプレイの量産工場を中国に新設するとの報道が今年初めになされましたが、この動きが加速することになりそうです。

 そして「8Kエコシステムの開発」を重点事業の1つに掲げる「IoTエレクトロデバイス」で注目すべきは「8K CMOSセンサー」でしょう。戴社長は「すでに開発済み」と発言しており、低価格な8Kカメラを提供する計画とのことでした。

8Kエコシステムの開発でリーディングカンパニーへ

 今回の説明会で戴社長は「8Kエコシステムの開発」に関する発言に、一際熱が入っているように感じました。周知のようにシャープはNHKとの協業で8Kディスプレイの開発を進めています。

 しかしながら戴社長は「今までのシャープはディスプレイが強かったが、これはアウトプット(デバイス)。今後はインプット(デバイス)も重視し、カメラなどを強化します。これには自信を持っています」とコメント。

 さらには「高画質映像処理・圧縮技術を用いた、映像の抽出・編集・加工領域」、「鴻海グループのストレージ技術を用いた、映像の蓄積・ライブラリー領域」、「配信サーバー/ネットワーク技術や通信5G技術などを用いた、映像配信インフラ領域」、そして「高画質映像表示技術を用いた、受信端末・表示/UI領域」などを重点事業領域として紹介。いわば8Kエコシステムのすべてを手がけるリーディングカンパニーを目指すということなのでしょう。

 戴社長は「8Kエコシステムはすべて日本で開発したい。これは私の希望」とコメント。記者からの「テレビは有機ELが主流になりそうだが?」との質問には、「薄さでも負けていない。どちらが高精細に映像を再生できるのか、きちんとチェックしてほしい」とキッパリ反論していました。

 それにしても戴社長のすごいところは中期計画の説明や記者とのやり取りなどを、すべて日本語で行ったこと。日本語を話すということは聞いていましたが、これほどとは思いませんでした。経歴を拝見すると大学卒業後に入社した会社で2年間の日本駐在を経験。その際に日本語を徹底的に学んだとのことで、今や「鴻海の徳川家康」とのニックネームを持つほどだそうです。

 その後、30代半ばで鴻海に転職したのですが、そのきっかけは新聞の求人広告。ヘッドハンティングや引き抜きなどではなく、ごくごく普通の転職だったそうです。

 しかしながら、そこからグループの総帥・郭台銘会長の腹心にまで上り詰めたわけですから、相当な敏腕の持ち主であることは確かでしょう。「2020年に向けてV字回復を絶対に実現する。シャープは企業。政府機関ではない。企業である以上、100年は継続できる体制を作りたい」との言葉に重みが感じられたのも、過去の実績に裏打ちされた確固たる自信、そしてミッション達成への強い使命感などがみなぎっていたからかもしれません。(征矢野毅彦)