福島敦子のアントレプレナー対談オフィスでの野菜・果物販売で
「農業活性」「地域活性」を実現!!

株式会社KOMPEITO(コンペイトウ) 川岸 亮造社長

株式会社KOMPEITO(コンペイトウ)(東京都港区)

株式会社KOMPEITO(コンペイトウ)
●設立:2012年9月3日
●本社所在地:東京都港区
●資本金:2億4395万5000円(資本準備金含む)
事業内容
●日本のオフィスを健康にする「OFFICE DE YASAI」の企画運営
●農産物マッチングサービスの企画運営
●食に関するイベントの企画運営
●HP:http://www.officedeyasai.jp//

起業のタイミングは30歳か60歳

福島川岸さんは大学卒業後、製造業向けのコンサルタントとしてご活躍され、2012年に日本の農業をもっと活性化したいということでKOMPEITO(コンペイトウ)を設立されました。まずはなぜ起業しようと思ったのかを、教えていただければと思います。

川岸最初に勤めた会社は製造業向けのコンサルティングファームでしたが、製造業を言い換えて「ものづくり」とすると、第二次産業だけではなく農業も入ってきます。

農業界は戦後から流通の仕組みなどがあまり変わっておらず、大きな変革がこれから起こるだろうと。あまり変化のないところだと、ベンチャーで起業しても、ある一定のポジションを作ることは難しいと思いますが、大きな変化があるのであれば、一から立ち上げた企業でも、認知される存在にはなれるんじゃないかということで起業に至りました。

福島コンサルタント時代に農業関係の仕事はされていたのですか?

川岸僕はしていないです。一緒に起業した共同創業メンバーがいるのですが、彼は前の会社で農業関係の課題を探る研究チームにいました。

そして彼と話している中で「農業は非常に大きな産業。生産者の出荷ベースで8兆円という大市場が、何十年と変わっていない。でも変化が起きる可能性があり、我われが変化の中心になれる可能性もある。

世の中に大きなインパクトを与えるとか、そういうことを自分たちの力でやれるチャンスがあるんじゃないか」と思ったのが最初のきっかけですね。

福島これから変化が起こるであろうというところにチャンスを感じたということですけれども、実際に30歳での独立起業は相当の勇気が必要だったと思います。不安や迷いはお持ちだったのでしょうか。

川岸起業するタイミングということを考えた時に、当時の僕は30歳か、60歳を過ぎてからが起業のタイミングだろうと考えていました。

福島それはどういうことから?

川岸60歳を過ぎての起業は、リタイヤ後の余生を楽しむような形ですね。退職金を元手に好きなことをやる。そういう起業の仕方も人生の選択肢としてあると思いました。

もう一つの30歳というのは、仮に起業して失敗しても、背負う借金はおそらく家を買うぐらいの金額で済むだろうということです。それならば家を買うことを諦めたり、結婚を諦めれば、仮に失敗しても、その後にその経験を生かすことで、その分は返していける。あと二十数年は働くという話になるので、その中でおそらく返済できるだろうというようなタイミングですね。

これが40歳ですでに結婚して子供もいてというタイミングだと、なかなかその選択に踏み切れない。「奥さんがいて子供もいるのに、そんな借金を背負うリスク、どうするの」という話になると思うんです。

そういう意味では30歳での起業は、当時独身でもありましたし、仮に失敗してもその後にキャリアステップを踏めばどうにかなるかな、と思ったのが踏み切る理由でした。

「OFFICE DE YASAI」とは?

福島今の主力事業はオフィスで野菜を手軽に食べてもらう「OFFICE DE YASAI」です。事業内容について詳しく教えてください。

川岸はい。契約した企業様のオフィスに冷蔵庫を置かせていただき、そこにパッケージ化した野菜や果物を定期的に配送させていただきます。

顧客企業様とは法人契約を結ばせていただき、月に何個配送するかを予め決めています。月80個のプランなのか、月160個のプランなのかというのを決めて、それに応じた月額利用料をいただいています。

利用料をいただいている分、従業員の皆様には、お好きな商品を100円からというリーズナブルな価格で購入いただけます。

福島この事業を思いついたきっかけは?

川岸最初からいきなりこれをやり始めたわけではなく、起業した当初は生産者の方をホームページ上で詳しくご紹介して「かかりつけの農家を作ろう」ということをやっていました。

例えば夏は北海道の田中さんから野菜が届き、冬は宮崎の鈴木さんから野菜が届くという形です。

個人で繋がるような関係での売買がいいんじゃないかと思ったのですけれども、全く受けませんでした。

高品質な有機野菜をかなりお安い価格で提供できたのですが、農家から宅配便で個人宅にお送りするので、その配送料をプラスすると、先行する大手さんと変わらなくなってしまったからです。

しかも僕らは農家さんに直送してくださいとやったので、ある農家さんがニンジン、タマネギ、ジャガイモを作っているとすると、毎回ニンジン、タマネギ、ジャガイモなんです。それしかこないので、なかなか「次にまた買おう」とならない。

一方、大手さんは1回倉庫に集めて、いろいろな生産者の方からの野菜を組み合わせているので、商品としての魅力度が高いものをお届けできる。結局、農家から個人宅に届けようとすると他社と値段が変わらなくなってしまい、商品の種類数という意味でも負けてしまうと。

だとすれば、ある一定量をまとめて消費できるところに送った方が、送料が薄まるのでいいだろうと思ったんです。

人が集まっているところはどこだろうというのを考えた中に、一つのアイデアとしてオフィスがありました。ただし、当初は野菜そのものをオフィスに送って、みなさんで持って帰ってもらう、というスタイルでした。

福島会社で買ってご自宅で食べてください、というスタイル?

川岸そうです。会社で福利厚生として一括で買ってもらったら安いですし、みなさんでお金を出し合って買うというスタイルでもいい。

ところが、ある会社の方に「若手社員はどうせ家に帰っても調理をしないだろうし、それよりもその場ですぐに食べたい」といわれたんです。そこから今のスタイルがスタートしました。

最初は試験をして無料でトマトを置いたりしたのですが、あっという間になくなってしまったケースもありました。会社で野菜や果物を食べたいというニーズはあるなということは、その時に思いましたね。

「おいしさ」を明確に説明できるか

福島今は何軒ぐらいの農家と提携されているのですか?

川岸季節によって変動するのですが、平均すると年間で40軒ぐらいの方とやりとりをさせていただいています。

福島基本的には何かの特徴を持っている農家ですか。有機栽培しているとか、ちょっときれいなトマトを作っているとか、個性のある野菜を作っているとか。

川岸基本的にはそういった農家を探しています。ただし、その一方で安定供給を考えなければいけないという部分もあるので、バランスを取りながらやっています。

事業のスタート当初に生産者さんを探していた時のフェイズでいうと、自分たちの作物のおいしさについて「なぜおいしいのか」を明確に説明できる方を大切にしていましたね。「有機野菜だから」とか、そういう基準だけでは決めない。僕は「有機野菜=おいしい」ではないと思っているんです。

そうではなくて、「自分たちの土地はこういう土壌なので、こういう耕し方をして、それに合った品種を選び、それに適した育て方をしている。だからおいしいものが作れる」ということを説明できるかどうか、ということです。

それが説明できる生産者さんは、あまり出来が良くないものができた年にも、その理由がちゃんと分かって改善して、次の年にはそれよりもレベルの高いものを作れる可能性がある方かなと思っていまして、なるべくそういう方を選んでいます。

「有機無農薬でやっているのでおいしいんです」といわれると論理飛躍がすごいので。有機無農薬は「農薬を使っていません」や「有機肥料を使っています」ということしかいっていない。なぜおいしいのかとは論理的には繋がらないですね。

福島そうですね。安全という部分はあるかもしれませんが。

川岸あるかもしれませんし、そういうものを使っていない育て方をしているという宣言にはなります。

でもそのことがおいしい理由かというと、そこはまたちょっと違ってきますよね。

設置した冷蔵庫で情報発信

福島OFFICE DE YASAIの事業はだいぶ軌道に乗ってきているとのことですが、今後の戦略や展望は、どのように考えておられますか?

川岸今後の戦略という意味では、僕らとしてはまず、冷蔵庫をいろいろな企業様に設置させていただくということを、もっと積極的に進めていきたいと思っています。

それはなぜかというと、今は小分けした野菜をその場で食べていただくというモデルでやっていますが、この事業を通じた僕らの強みは企業の中にオフィシャルに、定期的に入り込めるということだからです。

今の時代は保険レディの方なども、簡単にはオフィスに入れなくなってきていますし。

福島昔は日頃から当たり前のようにきていましたよね。

川岸ええ。でも今は企業の中に入り込むのは簡単ではありません。

しかし僕らはかなりオフィシャルに入り込めて、かつ、商品を実際に試していただける。試食するとか、食べ物じゃなければ、ちょっと触ってみるとか。そういったものをお届けできます。

しかも、冷蔵庫を使って情報発信もできると思っています。例えばアナログでいえば、冷蔵庫のドアに冊子などを置いて読んでいただくとか、もっとデジタルにしていくのであれば、モニターを装着してデジタルサイネージのように情報発信するとか。

そういったことが公にできる存在になれるだろうと思っています。

冷蔵庫設置を広げたあとはそれをうまく活用して、例えば小分けの果物を食べてみて「なるほど。高知県産の文旦か。すごくおいしくて気に入ったので実家に送ろう」とか「家で食べるので箱で買いたいな」とか、そういったところに進んでいきたいと思っています。そうすれば、もともとやろうとしていた農業の活性化や地域の活性化ということに、より繋がっていくと思うんです。

福島自ら農業を手掛けようとは思っていらっしゃらない?

川岸そうですね。僕らが農作物を実際に作るところまでやるということは、あまり考えていないですね。仮に「やる」という方向に舵を切る場合は、垂直統合することで圧倒的に利益率を高められるとか。そういう場合はあり得るかもしれませんが、でも、そうでない限りは、流通に止まる方がいいかなと思っています。

 

KOMPEITO(コンペイトウ)の由来

福島将来、日本の農業は良い方向に変わっていく、強くなっていくというような手応えについては、どう感じていらっしゃいますか?

川岸最近は新規で就農される方も増えているように感じるので、そういった意味では年代がスイッチしていくのかなとは思います。

でもデータで見ると、まだまだ農業で就業している方の人数は減っていますし、農業従事者の平均年齢は相変わらず六十数歳。

そのあたりのデータは変わっていないので、僕らみたいなサービスがうまく広がって「農業はやりようによっては儲かる」というふうに思われないと、なかなか先に進まないのかなとは思っています。

新興企業が農業や農業周辺の分野で利益を出して、「やりようによっては、農業は儲かるね」「自分の工夫で勝敗をひっくり返せるような可能性があるね」となれば、若い方や優秀な方が農業をやり出すというところに行き着くかなとは思います。

福島最後にKOMPEITOという社名の由来をお聞かせください。

川岸最初に「起業しよう」という話を仲間とした時に、社内もそうですし対社外も含めて「お互いに刺激し合える関係がいいよね」となったんです。

それで、刺激の象徴といえる「角」のイメージ。それから各々の人が持っている様々な色ですね。いろいろな色があって角があるというそのイメージがお菓子の金平糖にすごくフィットしたので、会社名をKOMPEITOにしたんです。

あとは農業関連ということで「アグリ○○」という会社名でスタートすると、先行き、事業がアグリじゃなくなったら、やりにくいかなとも思いました。

福島それはそうですね。

川岸農業活性とか地方活性ということで、当時思ったのは、地方特産品や伝統工芸品を売るとか。そういう方向にビジネスが寄っていったとすると、それをやっている企業名がアグリ○○というのはちょっとやりづらいかなと。それで、KOMPEITOという別の名前にしておこうと思いました。

福島なるほど。逆にお菓子関係の会社なのかなと思う方も、もしかしたらいるかもしれませんね。

川岸確かにそうかもしれませんね。でも最近は「お菓子の名前なのに野菜を売っている会社です」というと、ニコッと笑ってくれたりする方が、けっこういるんですよ(笑)。(敬称略)

川岸 亮造(かわぎし・りょうぞう)氏
麻布高校を卒業後、二浪して東京理科大学へ。同大学を卒業後は日本能率協会コンサルティングで経営コンサルとして働き、その後同期の渡邉瞬(現KOMPEITO取締役COO)と共に株式会社KOMPEITOを設立。現在はOFFICE DE YASAIを通じて農業活性・地域活性を目指し、イベント等ではトマトマン(ボストマト)として登場しています!(※同社HPより転載)
福島敦子(ふくしま・あつこ)
ジャーナリスト / 津田塾大学英文科卒。中部日本放送を経て1988年独立。NHK、TBSで報道番組を担当。テレビ東京の経済番組や週刊誌「サンデー毎日」でのトップ対談をはじめ、日本経済新聞、経済誌など、これまでに600人を超える経営者を取材。現在、BSジャパンの経済番組「マゼランの遺伝子」のキャスターを担当。経済・経営の他、環境、コミュニケーション、地域再生、農業・食などをテーマにした講演やフォーラムでも活躍。上場企業の社外取締役や経営アドバイザーも務める。島根大学経営協議会委員。1997年にはワインアドバイザーの資格を取得。主な著書に「愛が企業を繁栄させる」(リックテレコム)をはじめ、「それでもあきらめない経営」「ききわけの悪い経営者が成功する」「就職・無職・転職」「これが美味しい世界のワイン」などがある。
URL: http://www.atsuko-fukushima.com/