地方発!世界で活躍する会社1瓶1万円超!すべてにこだわる
超高級オリーブオイルで世界へ!

農業生産法人 株式会社アライオリーブ[香川県]

香川県小豆島町

代表取締役 荒井信雅

TEL. 0879-82-0733

URL. http://araiolive.co.jp/

搾りたての果汁のような風味

「ちょっとテイスティングをしてみませんか?」

荒井信雅社長が完全遮光を施したボトルを傾ける。小皿に向かって、透明感ある若草色に輝く液体が糸を引いた。「ワインのテイスティングと同じで、まず香りをチェックします」とレクチャーされ、小皿を鼻に近づけると、青い草を思わせる爽やかな香りがした。

「熟す手前のバナナやトマトのような香りでしょう。次は口に含み、舌を使って口の中全体に広げます。それから空気を短く、強く吸い込んで、オイルをのどの奥まで引っ張るんです」

口に含むと、驚くほどサラサラしており、油というよりも搾りたての果汁のようだ。そして、ほんのり甘い。味と香りを楽しんでから、のどへと引っ張ると……チクチクした刺激を感じ、咳き込んでしまった。

「その刺激は豊富なポリフェノールによるものです。咳き込むというのは、私に対する褒め言葉なんですよ(笑)。これが究極の、世界一鮮度の良いオリーブオイルです。香りも切れ味もまるで違うでしょう」

こう語る荒井の声は自信に満ちていた。1瓶(185g)1万2960円。香川県生まれの世界に類を見ない最高級オリーブオイルは、1本1本シリアルナンバーを打たれ国内外に出荷されている。

日本が進むべき道は品質

荒井は瀬戸内海に浮かぶオリーブの島、小豆島生まれ。香川県立農業大学校で造園を学び、卒業後は実習助手をしていた。

「造園家を目指していたんですが、両親から島に帰って来ないかと。大学の先生に相談すると、小豆島に帰るのならオリーブをやらないかといわれました」

アドバイスを送った教授は、オリーブ研究の第一人者。当時、島のオリーブ産業は衰退していたが、造園学が活かせるのではと、荒井は教授に背中を押されて帰郷した。

島ではテーマパークのようなオリーブ関連施設に勤務。好きな土いじりや栽培管理は楽しかった。しかし、観光客向けの農園や土産物としてのオリーブオイル作りに対して、次第に違和感を覚えるようになる。

もやもやした思いを抱えるなか、荒井は40歳代半ばで、オリーブオイル鑑定士の資格を取りに、地中海沿岸諸国を訪れる。小豆島では考えられない広大な農場を見て、荒井は思った。到底太刀打ちはできない。だが、一つだけ手がある。

「向こうは国民性がアバウトで、実の扱い方などが大ざっぱ。だから、こうした国でできないことをやればいい。日本人だからこそできる、世界最高品質のオリーブオイル。ここに日本が進むべき方向性があると確信しました」

やりたいことが明確になったものの、勤め人の身では実現させるのは難しい。しかし、このまま行動に移さないままだと、死ぬ時にひどく後悔するだろう、と荒井は思い詰めた。

50歳になる頃、荒井は奥さんに切り出した。独立したい。地中海エリアとはまったく違う、世界一の品質のオリーブオイルを作りたいんだ。それを道標にして、後に続く人間を育てたい──。最初は「定年してからにしてね」と反対した奥さんも、「そういう思いがあるのなら、やったら」と賛成してくれた。

2010年11月、壮大な夢に向かって、アライオリーブは船出した。

コスト度外視、驚きのこだわり

荒井は勤めの傍ら、一オリーブ農家として農場を営んでいた。その農場を整備し、搾油マシンを導入し、搾油工場を建設。栽培から収穫、搾油まで、知り得るすべてを注ぎ込んでオイルを作り、県の試験機関に持ち込んだ。

知りたいのはオリーブオイルの価値を決める酸度。酸化しやすい遊離脂肪酸の割合を示すもので、数値が低いほど鮮度がよく、風味が長く保たれる。国際オリーブオイル協会の定めでは、「エキストラバージンオリーブオイル」を名乗れるのは、酸度0.8%以下のものだけだ。検査の結果は国際基準のほぼ10分の1。わずか0.09%の数値を示していた。

「ここまで酸度の低いオリーブオイルは世界中を見てもありません。私のやることは世界で通用するという感慨がありました」

以降も毎年検査し、すべてが酸度0.1以下。最も良い年は0.07%を記録した。群を抜いて高品質なのは、徹底的なこだわりがあるからだ。まず、収穫から搾油までのスピード。国際基準では収穫後、72時間以内に搾油という規定があるが、アライオリーブでは6時間以内に搾っている。

「オリーブは実をちぎった瞬間から酸化が始まるので、収穫後、いかに早くオイルにするかが重要なんです。その後も、空気に触れさせない、光に当てない、温度を上げない。これらをいかに行うかが運命の分かれ道になります」

さらに、使うのは青くて固い未熟の実のみ。熟した実なら30%のオイルが取れる一方、3%しか抽出できない。10倍の量が必要になるが、荒井は頑として譲らない。青い実はポリフェノール含有量が多いからだ。ポリフェノールが少ないと、ぼんやりした特徴のない味になってしまう。

栽培では水はけの良い土質にこだわる。水分が不足すれば、太陽光線から身を守るためにポリフェノールが多く作られる。理想的な土質を求めて県内全域を探し、三豊市に最適地を発見。20haを超える日本最大のオリーブ農場を開いた。

すべては、世界一のオリーブオイル作りのために──。荒井の進む道は揺るぎない。

海外での評判から毎年完売

起業当初から、アライオリーブの戦略は海外中心。荒井は積極的に展示会などに出展するほか、独自の売り込みにも励んでいる。世界中からトップシェフが集まる会合を訪問し、シェフたちに数百万円分のサンプルを配ったこともある。シンガポールの高級リゾートホテル、マリーナベイ・サンズには6年越しで営業をかけ、アジア屈指の有名レストラン「WAKU GHIN」に採用された。

ある時、シンガポールの展示会で、ヨーロッパからきたというシェフが声をかけてきた。名刺を交換すると、「アライオリーブが素晴らしいとはよく聞くが、なかなか出会えない。記念に、一緒に写真を撮ってくれ」とうれしそうにいった。「ああ、私は間違ってなかったと、その時は泣きそうになりました」と荒井は笑う。

いま、アライオリーブはシンガポールや香港、UAEといった6カ国に出荷。現在交渉中の商談がまとまれば、複数の湾岸諸国との取り引きも始まる見込みだ。国内でも、海外での人気の高さが伝わり、毎年、予約で完売。今後はオイルに加えて、オリーブの実を使った健康食品なども開発していくという。

「最終的な目標は、オリーブオイルの国際基準を変えること。これがアライオリーブの世界貢献」と荒井は語る。誰も真似できない、究極のオリーブオイルを武器に、荒井のチャレンジは続く。(敬称略)