商品研究商品研究3 デジタル周辺機器/NAS

概要

NASベースのBCP対策でデータ保護
簡単・便利なクラウド併用が効果的
  • BCP対策ツールとして導入しやすいNAS
  • そもそもNAS内のデータを守るバックアップ環境は不可欠
  • リレーNAS方式はダウンタイムを削減。ただし、BCP対策には工夫が必要
  • クラウドストレージ併用型は、単一拠点の事業者に最適

社内ファイルデータの共有・保存ツールとして、SOHOや小規模事業者、ワークグループなどで導入が進んでいる機器が「NAS」である。

NASとは、英語表記のNetwork Attached Storageの頭文字をつなげたもの。その概要については囲み解説の「NASとは」に譲るが、簡単にいえばネットワークに接続して使うハードディスクドライブ(HDD)のことで、LAN接続HDDともいう。

ファイルサーバー用途に使われることの多いNASは、BCP(事業継続計画)対策としても要注目だ。

というのも、BCPは自然災害やテロ攻撃などの緊急事態下で、事業資産の損害を最小限にとどめ中核事業の継続や早期復旧を実現するための計画のこと(こちらに関連記事)。様々な情報資産が電子化されている中で、そのデータをいかに保護・復旧させるかは重要ポイントの1つであり、NASはその対策ツールとして導入しやすいことが理由である。

そこで、今回はNASを活用したビジネスデータの「BCP対策」について見ていくことにしたい。

NASとは

本文で触れたように、NASはLAN接続のHDDである。USB接続の外付けHDDと違いネットワークでつながるため、様々な端末で保存データを共有できることが大きな特徴だ。

CPUやメモリー、OSを搭載するなど、構造的にはPCとほぼ同じ。写真やムービーなどを保存して少人数で楽しむことを主目的としたホーム向けと、データ保護や業務での利便性を徹底追及した法人向けがある。

法人モデルは高性能で耐久性に優れたパーツの採用により物理的な信頼性が高く、バックアップ環境を実現するための様々な機能を持つ。

さらに、ビジネスNASは搭載OSにより、「Linux」と「Windows Storage Server(WSS)」がある。Linux機は大規模用途や拡張性には欠けるが安価で導入しやすいので、小規模事業者などに適している。一方のWSS機は操作感がWindows OSライクなので使いやすく、機能も追加しやすい。価格が高く設定に知識が必要なため、どちらかといえば数十人規模以上のオフィス向きといえるだろう。

バックアップが不可欠

まず、確認したいのがバックアップの意味だ。バックアップとは、「同じデータが2カ所以上に存在していること」であり、この定義でいえばNASを導入しただけでは、バックアップ環境を整えたことにはならない。

ここで誤解されやすいのが、NASのメイン機能ともいえるRAIDである。実際、「RAIDを組んでいるから安心」と考えるユーザーも少なくないようだが、そもそもRAIDは複数のディスクを1台のHDDとして運用してデータの冗長性を構築する仕組みのこと。余裕を持たせることでHDD故障によるデータ消失リスクを削減しているだけで、冗長性の範囲を超えた故障(RAID崩壊)時にはデータは消失してしまう。

つまり、大事な共有データを守るためには、別の記憶装置などにデータを複製して、NASに障害が発生した場合でもデータを復旧できるバックアップ体制が必要というわけだ。

NASのバックアップを構築する方法には様々あり、代表例は①NAS+外付けHDD、②NAS+NAS(リレーNAS)、③NAS+クラウド(オンラインストレージ)など。このうち、BCP対策には②と③が有用だが、①から順に解説していこう。

最も簡単なNASのバックアップ手法は、①NAS+外付けHDD。NASと接続したUSB HDDに同じデータを複製することで、NASが故障した場合でも外付けHDDからデータを復旧させることができる(図1)。

ただし、同じ場所にデータがあることから、災害などでオフィスが被害を受けた場合、機器破壊によるデータ消失リスクは大きい。

BCP対策を兼ねた手法

これに対し、データ運用とBCP対策の両面から効果的な手法が②NAS+NAS(リレーNAS)だ(図2)。特に、NAS障害時のダウンタイム削減や2拠点以上の事業所がある場合などに適している。

同系統のNASを2台用意。日常的に使うメイン機とバックアップ用サブ機という構成とし、メイン機にデータを書き込むのと同時にサブ機にも複製データを作成する(レプリケーション)。そして、メイン機に障害が発生した場合、サブ機をメイン機に切り替え(フェイルオーバー)て、データ運用を継続する仕組みだ。

NASのデータ復旧は容量にもよるが、場合によっては数日かかることもある。リレーNAS方式なら、万一の障害発生時にも、復旧を待つことなくビジネスを再開できるので、業務停滞や機会ロスを防げる。さらに、それぞれのNASはインターネット上にあれば設置場所を問わない。例えば、サブ機を支社や社長宅などに設置することでBCP対策にも有用となる。

とはいえ、小規模事業者などは単一拠点が多いため、オフィスから離れた遠隔地にNASの設置場所を確保するのは手間やコストがかかり負担も大きい。

そうしたケースに適したバックアップ環境が、③NAS+クラウド(オンラインストレージ)である(図3)。

NASに搭載されている「クラウドストレージ連携」機能により、NAS内のデータをクラウドにも保存。障害や災害発生によりNAS内のデータが消失しても、クラウド上に保存されている最新データにより業務を継続できると共に、新しいNASにデータを復元して早期に業務を再開することができる。

「クラウドのオンラインストレージだけでも十分では」との声も漏れ聞こえてきそうだが、複数のPCからダイレクトにクラウドへアクセスするとデータ転送が遅くなるほか、ファイル同期タイプのクラウドストレージではPCのHDD容量を消費してしまうなどのデメリット(*1)がある。

NASとクラウドを組み合わせることで、オフィス内の日常業務ではNAS内のデータを高速に読み書きし、外出時や災害時にはクラウドの最新データを活用するといった使い方が可能となる。

ただし、障害時などにクラウドからデータを復旧させる場合、かなりの時間がかかる。ダウンタイムを削減して業務停滞を防ぎたいなら、②のリレーNASとクラウドを組み合わせた図4のシステムがよい。日常的に快適な使い心地と障害時の速い復旧、そして災害時のデータの安全性が最も担保されるからだ。

どの手法が最適かは、デジタルデータへの依存度や災害時のBCPのレベルなどに左右される。NAS導入時には、バックアップ方法も含めて機種選択やシステム構築を検討してほしい。

(*1)最近は、選択同期などPCのディスク容量を消費する課題を解決する機能を提供するサービスも登場している