「Pepper for Biz」導入事例レポート小売業やホテル、病院などでフル稼働
会員獲得数や検診予約数アップを実現

 先日開催された「ソフトバンクワールド2017」(7月20~21日)では「Pepper for Biz(以下ペッパー)」の最新動向も知りたいと思っていました。このところ、ヤマダ電機が納入したペッパーの、導入企業を取材する機会が増えてきたからです。

 ペッパーの企業ユースについて最初は疑心暗鬼の部分もあったのですが、導入企業からは予想以上にその有効性を聞くことができました。

 しかも、各社に共通していたことは「今はここまでしかできないが、次にはこういうことをさせたい」とか、「こういうアプリが開発できないか、打診している」といった、先に向けての前向きな発言が聞かれたこと。ペッパーを実際に使っている中で、その可能性を見出し、「だったら、ここまでやらせたい」との思いが強くなってきたようです。

顧客の待ち時間がペッパーの出番!?

 ソフトバンクによれば現状のペッパーが就労可能な業種は、飲食小売業や製造業、警備、介護など7業種。さらに個々の業種毎に、作業の項目を3つに分類しており、難易度の低い順から、
●ステップ1「Human Engagement(対面・接客作業)」
●ステップ2「Mobility(移動を伴う作業)」
●ステップ3「Object Handling(手作業)」
とカテゴライズしていました。

 例えば飲食小売業の場合、ステップ1は販売・注文・決済、ステップ2は配膳・配達、ステップ3は単純調理・皿洗い・片付けといった具合です。そして現段階でのペッパーが就労できるのはステップ1が中心であり、今後の進化と共にステップアップを目指す計画とのことでした。

 こう書いてしまうと「やっぱり、まだその程度か」と思われるかも知れません。しかしながら現段階でのペッパーでも、なかなかの成果につながっている企業事例が多数紹介されました。

 例えば小売業V社の場合、ペッパーを活用した会員獲得の実証実験を行いました。その獲得件数はペッパー導入前の週末実績44件に対して、導入後の週末は236%増の104件を獲得したそうです。

 これは「自動会員登録アプリ」を用いたもの。まずペッパーが顧客の免許証を読み取って住所や氏名などを自動入力。そして顧客にペッパーのタブレットへ携帯電話番号を入力してもらい、その番号へURLを送付して会員登録を完了するというもの。ペッパーによる人寄せ効果に加えて、顧客の入力負担を最小化できることが会員獲得数のアップにつながったようです。

 また都内のシティホテルHでは、エレベーターの改修工事に伴い、稼働基数の減少による顧客のストレス緩和を目的としてペッパーを導入。ロビーのエレベーターホールに配置されたペッパーは、宿泊客に簡単な英語や日本語の挨拶などで呼びかけを行い、待ち時間に感じるストレスの緩和を実現したとのことです。

 実はこれと同じ効果を、自分も取材先で聞くことができました。そこは温泉街のリゾートホテルなのですが、繁忙期になるとチェックアウトなどではどうしても顧客を待たせてしまいます。ところがペッパーをロビーに配置し、顧客とコミュニケートを図らせることで、かなりのストレス緩和を実現したとのこと。しかも、その延長としてこの旅館では、ペッパーにチェックアウト作業そのものをやらせられないか、模索しているとのことでした。

 一方でペッパーは、医療業界でも活用されています。神奈川県のS病院ではペッパーを活用した疾患啓発の実証実験を行いました。対象疾患は「睡眠時無呼吸症候群」で、ペッパーに疾患の注意喚起や簡単な健康チェックを行わせ、検診受診を呼びかけさせたとのこと。その結果、2週間の検証期間で約500名がペッパーによる健康チェックを受け、そのうち54%が検診受診を希望すると回答。実際に5名が予約を行ったそうです。

 前述したホテルの事例も同様ですが、要は顧客の待ち時間を利用してペッパーに顧客とコミュニケートさせることで、待ち時間のストレス緩和はもちろんのこと、顧客の次のアクションを誘発する効果を狙えるということなのでしょう。それが実現するのであれば、ペッパーの月給5万5000円(本体の月額レンタル料)は高くはないのかもしれません。

 ソフトバンクではペッパー用のアプリ開発に拍車をかけており、さまざまな業種に適したものをラインアップするとのこと。今後、どういった業種でどんな成功事例が出てくるのか、追跡したいと思います。(征矢野毅彦)