知ってトクする「年金講座」基礎の基礎第2章:年金制度の基本
「定額年金」「報酬比例年金」の意味(第15回)

 前回は、「2階建て年金」をキーワードに年金の適用と給付の説明をした。簡単に整理すると、日本の年金制度では、年金加入者はすべて国民年金加入者であり、「第1号被保険者」「第2号被保険者」「第3号被保険者」の3種類に分類される。

 そのうちの「第2号被保険者」が厚生年金加入者であって、国民年金と厚生年金に同時に加入していることになる。受給できる年金は厚生年金加入に対応する「報酬比例年金」の「厚生年金」と、国民年金加入に対応する「定額年金」の「基礎年金」という2階建て年金になる。

 そして、「第1号被保険者」(自営業者等)と「第3号被保険者」(第2号の被扶養配偶者)は、国民年金だけに加入し、受給できる年金は基礎年金だけの1階建て年金である。

 では、「定額年金」「報酬比例年金」とはどういうことか?

「定額年金」の意味

 まずは、「定額年金」である「基礎年金」から説明しよう。2017(平成29)年度の「基礎年金」の額は779,300円だ。しかし、「定額年金」といいながら、誰でも779,300円の基礎年金を受給できるわけではない。

 779,300円という額は、一般に「満額」の基礎年金額といわれている。国民年金の加入期間(加入が義務付けられている期間)が20歳から60歳までの40年間であり、「満額」とは40年間=480カ月加入した場合の額をいう。もちろん、この480カ月は保険料を支払った月だ。保険料の滞納などがあれば、満額の基礎年金は受けられないことになる。

 ただし、第2号被保険者は給与から天引きされる厚生年金保険料に国民年金分が含まれ、3号被保険者は保険料の納付義務がないので、保険料の滞納があり得るのは第1号被保険者だけである。

 1991(平成3)年度までは、20歳以上であっても「学生」は国民年金加入義務が免除されていた。だから、現在40歳代後半以上の人は会社に就職してから初めて年金制度に加入していたはずで、大卒の場合は、22~23歳からの加入になる。こういう人たちは60歳時点で国民年金加入期間は40年に満たないため、やはり満額の基礎年金は受給できない。

 要するに「定額年金」の「定額」とは、加入期間に対して「定額」という意味なのだ。
年金加入期間の最小単位は「月」だから、満額の779,300円を40年=480月で割ると1カ月分は約1,630円である。つまり、国民年金に1カ月加入すれば、基礎年金額は約1,630円になるわけで、これを480カ月積み重ねて、ようやく満額の基礎年金を受給する権利を得ることになる。

 年金制度の用語ではないのだが、私は、これを年金の「月単価」と呼んでいる。そう考えれば、「定額年金」の「定額」の意味は「月単価が定額」というになるのである。「月単価」が定額であれば、基礎年金の年金額を決める要素は、「加入期間(月数)」だけということになる。

 ただし、この加入期間は保険料を支払ったことが前提であり、第1号被保険者には滞納や低所得者のための「保険料免除制度」というものがある。「保険料免除制度」については次回詳しく解説するが、「保険料免除制度」が適用された月は丸々1カ月とはカウントされないので幾分複雑になる。

「報酬比例年金」の意味

 同様に、「報酬比例年金」の「報酬比例」も、「月単価が報酬比例」という意味になる。「厚生年金」は報酬比例年金なので、基本的に、厚生年金に加入していた期間の平均報酬が高いほど年金額も高くなるが、高くなるのはあくまでも「月単価」だから、脱サラなどで厚生年金の加入期間が短い場合には年金額はさほど高くならない。

 厚生年金の年金額計算方法は、基本的に「加入期間の平均報酬×乗率×加入月数」である。この計算式の内、「加入期間の平均報酬×乗率」が厚生年金の「月単価」になる。乗率は2002(平成14)年度までは、「1000分の7.125」、2003(平成15)年度以降は「1000分の5.481」である。

 2003(平成15)年度から賞与からも保険料を取り、その代わり賞与も年金計算上の「報酬」に含めることとなった(「総報酬制」という)。2003(平成15)年度を境に保険料徴収と年金額計算の「報酬」のベースが賞与分増えたので、保険料率と年金計算上の乗率が下がったのである。

 そのため、厚生年金の年金額計算は2003(平成15)年度前と以後の期間を別々に算出し、それを合計することになっている。さらに、時代的な賃金水準の変動を補正するために、実際の給与や賞与に「再評価率」を掛けて「加入期間の平均報酬」を算出するため、厚生年金の年金額の計算は相当複雑になる。

 ここでは、「報酬比例年金」である「厚生年金」の年金額を決める要素は、「報酬」と「加入期間(月数)」の2つの要素があるということを認識してほしい。

渋谷康雄(しぶや やすお)
社会保険労務士 / 昭和32年生まれ。社会保険労務士。明治大学卒業。平成13年「渋谷社会保険労務士事務所」開業。平成18年「特定社会保険労務士資格」取得。得意分野は公的年金・65歳までの継続雇用制度構築・高齢者賃金設計・就業規則・個別労働関係紛争の相談等(年金、社会保険、労働法に関する分野)等。他に講演やセミナー講師、テレビコメンテーターなどとしても活躍。主な著書に「60歳からの年金・健保・雇用保険・税金の判断基準」(平成25年三訂版、日本法令)、「ケース別サラリーマン夫婦の年金がわかる本」(平成26年、日本法令)がある。
URL: http://yasuo-shibuya.main.jp/