日立・シャープ・東芝が相次ぎ 「コードレスクリーナー」を発表日立はメイン機として使えるスティック型
海外展開を視野にする東芝&シャープ

 家電IT業界を取材しているのですが、いわゆる生活家電や白モノ家電には、あまり接する機会が多くありません。ところが先週・先々週と主要メーカーのクリーナー新製品発表会が続いたこともあり、久々に生活家電を取材してきました。日立、東芝、シャープが相次いでコードレスタイプの新製品を発表。各メーカーとも最上位機種は10万円前後するシリーズだけに、さすがに力の入った発表会でした。

コードレススティック型の伸びは120%超

 クリーナーの年間需要はここ数年、500万台前後で推移しており、ほぼ横ばい基調とのこと。ただし、タイプ別の構成比が大きく変化しており、そこにメーカー各社のビジネスチャンスが潜んでいます。

 表は2017年度のタイプ別需要を予測したもの。これを見ると、まずダイソンが先鞭を付けて大ヒットしたシリンダー型(キャニスター型)サイクロンは、構成比こそ19%を占めているものの前年比は85%と二桁減。また手軽な布団用掃除機として人気を集めたハンディ型も、構成比では10%でしかなく、前年比は77%の大幅減。完全にシュリンク基調に突入しています。

 前年比で伸びが予測されているのはコードレス・スティック型(126%)とロボット型(109%)の2タイプのみ。ロボット型はここ数年、大ブームともいえるほど注目されていますが、それでも台数構成比はわずか6%。ニッチ商品の域を超えられずにいます。

 こうなると、やはりメーカーが期待をかけるのはコードレス・スティック型ということになります。同モデルの2016年度の構成比は27%で、従来の主流タイプだったシリンダー型(キャニスター型)紙パックとほぼ同数だったのですが、2017年度には逆転し、クリーナーの主流タイプになると予測されています。

日立「パワーブストサイクロン」PV-BEH900

 この予測をストレートに新製品へ反映したのが日立アプライアンスです。同社の新製品PV-BEH900は「立体おそうじ」を新たに提案している意欲作。本体に取り付ける8種類のツール(吸い口)を用意しており、これを掃除する場所に応じて付け替えることで、掃除がしにくい場所でも“立体的に”掃除ができるというコンセプトです。

 例えばサッシの溝や引き出しの中などには先端がブラシ形状となっている「ほうきブラシ」、家具の隙間などには先端の隙間吸い口部が100mm伸ばせる「マルチすき間ブラシ」、布団や車のシートなど柔らかい場所のゴミ取れ性をアップさせる「ミニパワーヘッド」、そして、掃除の負荷を軽減するためにヘッド部は右手・本体は左手と持ち分けられる「スマートホース」など。コードレス・スティック型はこれまで、簡易的な掃除用器具とのイメージがありましたが、日立アプライアンスは完全にメイン用器具としてポジショニング。家のあらゆる場所を掃除しやすくするためのツールを標準で付属させています。

 また、メインの掃除機とするためには吸引力が重要ですが、これも新開発の「小型ハイパワーファンモーター」や「パワフルスマートヘッド」などの採用でクリア。しかも、連続使用時間は約40分(標準運転時)を確保しており、実用性も十分といえそうです。同社の話では「リチウムイオンバッテリーの大容量化と小型化、そして低価格化などにより、コードレス・スティック型でもメインの掃除機として位置づけられる機種を開発できた」とのことでした。

日立「PV-BEH900」(スマートホース装着時)

 これに対して「コードレス・キャニスター型」という新たな市場開拓に乗り出したのがシャープと東芝ライフスタイルです。キャニスター型は家庭用クリーナーのメイン機種であり、本体を腕で支える必要がないことから、掃除の負担が少ないというメリットがあります。しかしながら、コードの絡みつきや電源差し替えなどの不便さがあり、これをクリアするにはコードレス化しかありませんでした。

 実際、過去にも数社からコードレス・キャニスター型製品が投入されてきたのですが、いずれも不発。一番の理由は、連続使用時間の短さでした。しかし今回のモデルはこの課題をクリア。シャープも東芝も最大で約60分を確保しており、両社とも「いよいよ本格的な普及期を迎える」と語っていました。

 両社の新製品は、コードレス・キャニスター型という基本形状こそ同じながら、その特徴はまったく異質。それぞれのこだわりをのぞかせるものとなっています。

シャープ「ラクティブエア」EC-AS700

 まずはシャープ。新製品EC-AS700の最大の特徴は、コードレス・キャニスター型として世界最軽量を実現したこと。本体のみでは1.8kg。ホースやパイプ、ヘッドを合わせた総質量でも2.9kgという軽さです。これがどの程度の軽さなのかといえば、同社が2013年に発売したコードレス・キャニスター型1号機は、本体だけで3.5kg。総質量は4.9kgという重量級。そこから約40%もの軽量化を実現したことになります。

シャープ「EC–AS700」

 シャープの話では「コード付きキャニスターの本体だけの質量が平均で2.9kg。この質量をコードレス・キャニスター型では総質量で実現したかった」とのこと。このためメインモーターを54%軽量化し、バッテリーは60%軽量化。さらにはパイプ部の素材に、航空機などに使われる軽くて強い「銅鑼-カーボン」を採用しています。

 手で持って使う家電の中で最重量級は掃除機といわれますが、そのことが家事の負担になっていることは明らか。この問題を大きくクリアし、コードレスならでは取り回し性のよさを併せ持つEC-AS700は掃除の負担を間違いなく軽減させるモデルといえそうです。

東芝「コードレスクリーナー」VC-NXシリーズ

 一方の東芝ライフスタイル。新製品VC-NXS1は総質量こそ4.2kgと標準的ですが、新開発「ハイスピードDCモーターHD45」や「ラクトルパワーヘッド」による強い吸引力が最大の特徴です。HD45の最大回転数は1万2000rpm。これはジェットエンジンをも超える高速回転とのことで、同社では「従来にない強力な吸引力を実現した」と話しています。しかも、このモーターは100V~220Vまでの電源を選ばないDCタイプ。同社では世界戦略機種と位置づけて、今後、中国を皮切りにグローバルな展開を計画中とのことでした。

東芝「VC-NX」シリーズ

 またVC-NXS1の特徴として、本体のゴミ捨てやフィルターの手入れが不要なダストステーションの付属があげられます。これは同社製ロボット掃除機「トルネオ」で先行搭載された機能。同ステーションは本体の充電のみならず、本体ダストカップのフィルターのチリ落とし、そしてゴミの吸い出しを自動で行うため、面倒なゴミ捨てやメンテナンス作業が大きく軽減されます。ダストステーションには大容量タイプのダストカップを採用しており、ゴミ捨てと本体のフィルター掃除は「約1カ月間不要になる」とのこと。掃除の作業負担が大きく軽減されることは確かです。

 なお、東芝ライフスタイルとシャープに共通することは、今回の新製品を通じてグローバル展開を開始するということです。両社とも海外メーカーの子会社となったことにより(東芝ライフスタイルは中国マイディア傘下、シャープは台湾鴻海傘下)。親会社の販路を通じての商品供給を本年度から本格化するとのこと。まずは中国からスタートして、近い将来の欧米進出も視野にしているようです。

 生活家電のグローバル展開は、従来の純国内資本時代にはほとんど考えられなかったことだけに、日の丸家電の新たなステージの始まりといえるでしょう。その成否にも注目が集まりそうです。(征矢野毅彦)