知ってトクする「年金講座」基礎の基礎第2章:年金制度の基本
第1号被保険者と保険料滞納(第16回)

 年金加入者は、すべてが国民年金の加入者で、国民年金加入者は「第1号被保険者」「第2号被保険者」「第3号被保険者」の3種類に分類される。
 「第2号被保険者」はイコール厚生年金加入者でサラリーマンである。「第3号被保険者」は、その被扶養配偶者、「第1号被保険者」は「第2号」でも「第3号」でもない「その他すべて」だ。

 ただし、「第3号」には、20歳から60歳までという年齢要件がつき、「第1号」には同様の年齢要件に加えて、さらに日本国内に居住するという「国内居住要件」がつく。

保険料の滞納があるのは「第1号被保険者」だけ

 厚生年金加入者である「第2号被保険者」は保険料納付の負担は負うが、保険料を年金機構に収める義務を負っているのは企業だ。サラリーマンは給与から本人負担分の保険料を天引きされるが、企業は本人負担分と同額の企業負担分を合わせて年金機構に支払っているのである。

 だから「第2号被保険者」には「滞納」という概念がない。その代わり年金機構は企業に対して大変強い保険料徴収権を持っている。「第3号被保険者」は、そもそも保険料を負担することになっていないので、やはり「滞納」という概念はない。

 したがって、まれに企業が保険料を滞納しているケースもあるが、一般的に保険料の滞納が問題視されるのは「第1号被保険者」のみである。「第1号被保険者」だけが保険料を自ら納付する義務を負っているのである。

 だから、報道で「保険料の未納(滞納と同義)が4割」などというときは、「第1号被保険者」の保険料の滞納率のことを指しているわけだが、これをもって「年金制度」が危ないということは大きな誤解だ。

 「第1号被保険者」は年金加入者の内の一部であり、保険料も「第2号被保険者=厚生年金加入者」に比べてだいぶ低い。「滞納率4割」という数字自体は大きいが、金額で見れば年金制度を危ぶませるほどのスケールにはならないのである。

 平成26年度の年金加入者数は全体で約6,558万人、内「第1号被保険者数」は1,742万人、「第2号被保険者」が3,884万人、「第3号被保険者」が932万人だ。保険料納付義務がない「第3号」を除くと、保険料納付義務がある加入者数は5,626万人、「第1号」はその約3割ということになる。

 保険料の金額ベースで見ると、「第1号」の保険料は年間だいたい20万円弱(平成26年当時)。これに対して「第2号」は、年収400万円とすると、保険料率(本人負担と企業負担の合計)は17%強(平成26年当時)だから年間およそ70万円だ。

 実際に平成26年度の年金財政を見ると、「第2号」の保険料総収入は約30兆円だから、加入者数で割ると、一人当たりの年間保険料は約80万円で、「第1号」の4倍だ。細かい計算抜きで、第1号の人数は保険料を支払うべき年金加入者の約3割、納めるべき保険料の額は「第2号」の4分の1ということだけでも、「滞納率4割」が年金制度の継続性を揺るがすほどの大問題でないことはわかるはずだ。

 もちろん、「第1号」は法律により保険料納付が義務付けられるので、滞納は法規範からして問題がある。また、保険料滞納によって、滞納者が将来無年金になったり、年金が低額になる可能性があるので、滞納者自身の老後の問題、さらにはその人たちが将来生活保護を受けることになれば、生活保護制度の財源問題にもなりかねないから、問題がないわけではない。
 しかし、年金制度の継続性という観点では、大きな影響はないということである。

保険料免除制度など

「第1号被保険者」が支払うべき国民年金保険料は定額の保険料だ。保険料が定額ということは、保険料はその人の収入とは無関係だから、高所得者にとっては負担が軽く、低所得者にとっては負担が重いということでもある。

 そこで、「第1号被保険者」については、その人の所得の状況によって、保険料を免除する制度や、保険料の納付を猶予するという制度が設けられている。

 例えば、所得の低い人に対しては、その所得に応じて4段階の保険料免除制度がある。全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の4段階で、これらの免除を受けた期間に対しては、基礎年金の国庫負担分(基礎年金給付費は、平成20年以前は3分の1が、平成21年以降は2分の1が国庫負担として税金で補助されている)と支払った保険料割合の分が将来の基礎年金になる。

 どういうことかというと、全額免除を受けた月は「2分の1カ月」として基礎年金の年金額が計算されるということである。半額免除を受けた月は、国庫負担割合の2分の1に、残りの2分の1の保険料納付割合の2分の1を加える。2分の1に4分の1(2分の1×2分の1)を加えるから、年金額計算上は「4分の3カ月」となる。

 前回、「基礎年金」の「月単価」は、満額の779,300円(平成29年度価額)を40年=480月で割った額の約1,630円であると説明した。全額免除を受けた月は、その半分の815円が年金になり、半額免除を受けた月はその4分の3の1,222円になるということだ。

 保険料免除制度に対して、保険料納付猶予制度という制度もある。

 こちらは学生や若年層が対象で、免除制度との違いは、その期間が年金額にまったく反映されない。それでは、滞納と同じで意味がないと思う人もいるかもしれないが、正式に保険料を支払わないことが認められるという点で滞納とは異なる。

 年金額に反映しなくても「受給資格期間」になり、いずれ取り上げるが、障害年金や遺族年金の受給資格に影響する滞納率(滞納率が一定割合を超えると受給資格が得られない)に含まれないという点で意味があるのである。

渋谷康雄(しぶや やすお)
社会保険労務士 / 昭和32年生まれ。社会保険労務士。明治大学卒業。平成13年「渋谷社会保険労務士事務所」開業。平成18年「特定社会保険労務士資格」取得。得意分野は公的年金・65歳までの継続雇用制度構築・高齢者賃金設計・就業規則・個別労働関係紛争の相談等(年金、社会保険、労働法に関する分野)等。他に講演やセミナー講師、テレビコメンテーターなどとしても活躍。主な著書に「60歳からの年金・健保・雇用保険・税金の判断基準」(平成25年三訂版、日本法令)、「ケース別サラリーマン夫婦の年金がわかる本」(平成26年、日本法令)がある。
URL: http://yasuo-shibuya.main.jp/