福島敦子のアントレプレナー対談ヤマダとU-NEXTが格安SIMで合併
「ヤマダニューモバイル誕生!!」

株式会社U-NEXT 鹿瀬島 礼取締役

株式会社U-NEXT(東京都渋谷区)

株式会社U-NEXT
●代表取締役 二宮 康真
●設立:平成29年1月25日
●資本金:100百万円
●事業内容
1. 電気通信事業法に定める電気通信事業
2. 電気通信サービス、放送サービスの加入手続きに関する代理業務
3. 携帯電話の販売に関する代理業務
4. 前各号に関連する調査、企画、研究、開発、教育、研修及びその受託業務
5. 前各号に関するコンサルティング業務
6. 前各号に付帯又は関連する一切の業務

合弁会社設立の経緯

 福島 Y.U-mobileは、コンテンツ配信を手がけるU-NEXTと、ヤマダ電機との合弁会社で、ヤマダ電機専用の格安SIM「ヤマダニューモバイル」を展開しています。まずは、なぜ、ヤマダ電機と一緒に事業を始めることになったのか、会社設立の経緯から教えてください。

 鹿瀬島 U-NEXTは独自の格安SIM「U-mobile」を持っており、WEBを中心に展開しているのですが、それだけでは、お客様に対して十分に安心感などをお伝えしきれなかった面があったのです。

 しかし、全国に1000店舗以上を展開するヤマダ電機さんの力をお借りして一緒に展開することができれば、この課題を払しょくできると考えました。

 実はヤマダ電機さんとはそれ以前から業務提携しており、U-mobileを軸にした専用の格安SIM「YAMADA SIM powered by U-mobile」(以下YAMADA SIM)をご提供してきました。

 これをもっと踏み込んだ形に発展させれば、ヤマダ電機のお客様の声や販売スタッフの声を吸い上げたプランをご提供できますし、ヤマダ電機さんにとっても他社との有力な差別化商材になります。そうした方向性で一致したことが、今回の合弁会社設立のきっかけでした。

 福島 そもそもこのお話はいつ頃、どちらから声をかけたのですか。

 鹿瀬島 そうですね。ふだんからYAMADA SIMで頻繁にやり取りをしていたので、どちらからともなく話が発展したのだと思います。

 福島 では、YAMADA SIMがスタートしたきっかけは?

 鹿瀬島 もともとは映像やコンテンツ配信の連携で話を進めていました。その中で「我われにもSIMがあります。ぜひ、お取り扱いいただけませんか」といった流れになり、「どうせならU-mobile ではなく、YAMADA SIMブランドで展開しましょう」とご提案。これをご快諾いただけたという経緯です。

 福島 従来のYAMADA SIMと、新しいヤマダニューモバイルとの違いはどこにあるのですか。

 鹿瀬島 YAMADA SIMの料金・サービス体系は基本的にはU-mobileと同じで、例えばインターネット使い放題などのヘビーユーザー向けプランがありました。

 しかし、ヤマダニューモバイルではファミリー層を意識しています。そういった方々には使い放題よりも、もっと分かりやすいものがいいだろうということで、プラン内容を明確化しました。

 お客様の用途に応じて、月額525円の低価格のものから大容量30.3ギガのものまで、幅広いラインアップを特徴としています。

 しかも、ヤマダニューモバイルでは「10分かけ放題オプション」を月額800円(税別)でご用意しています。これは10分以内の国内通話であれば何回でもかけ放題というサービスで、やはりファミリー層を強く意識したサービスです。

参入企業は400社以上!?

 福島 格安SIM市場、MVNO市場の現状については、どう見ていらっしゃるのでしょうか。

 鹿瀬島 総務省の後押しもあって、格安SIM市場は伸びてきています。ただし参入企業が、一説には400社以上ともいわれており、競争が激しい市場であることもまた、実感しています。

 福島 市場が活況を呈して通信料金が安くなることは、ユーザーにとってありがたいことです。その分、格安SIM事業者の競争が、かなり熾烈になってきているのですね。

 鹿瀬島 はい。料金の部分でいえば、格安SIMはもう下がり切っている状態といえます。ですから、いかに付加価値を伸ばしていくのかが、今後の我われに求められていることですし、勝ち残りのために必要なことだと考えています。

 福島 格安SIMのユーザーは、どちらかというとITのヘビーユーザーというイメージがあります。実態はどうなのでしょうか?

 鹿瀬島 おっしゃるように今現在のメインは、30〜40代の男性で、ITリテラシーの非常に高い方です。しかしヤマダニューモバイルで獲得を重視している層は、全国のファミリー層です。それには格安SIMにありがちな面倒くささや分かりにくさなどをクリアする必要があります。

 それはヤマダ電機さんの店頭の力をお借りすることで、十分に可能だと考えています。ヤマダ電機さんと協業することで、どんな方々でも分かりやすく簡単に、そして安心して格安SIMをお使いいただけます。

 福島 実際にサービスを開始して、お客様や店のスタッフなどからの反響はいかがですか。

 鹿瀬島 非常に良好です。ご好評いただいており、多くのお客様にお申し込みいただいています。また、販売スタッフの方からも「ヤマダニューモバイル」とはっきりブランディングされたことで、「ヤマダ電機が展開している格安SIMであることをお客様にアピールしやすくなった」という声を多くいただいています。

ファミリー層がターゲット

 福島 YAMADA SIMのユーザーはITリテラシーの高い方がメインだったとのことですが、ヤマダニューモバイルはいかがですか? 重点ターゲットであるファミリー層や一般の方たちへ広がってきているのでしょうか。

 鹿瀬島 はい。今は着実に広がりつつあるという状況です。ヤマダニューモバイルがファミリー層へアピールできる最大の特徴は、ヤマダ電機さんの店舗を通じて、安心感をお伝えできることです。

 今、ヤマダ電機さんの1000店舗でお取り扱いいただいていますが、そのうちの570店舗は即日、音声SIMを開通できます。新規だけでなく番号変更やMNPも含めて、その場で即日開通させて、お客様にお渡しできます。その間、対面でサービス内容などの説明も受けられます。これは他の格安SIMにはない特徴で、たとえITを得意としていない方でも安心してお申し込みいただけます。

 福島 それは心強いですね。ネットを使って一人で手続きをやれといわれても、私なんか、絶対無理です。

 鹿瀬島 そういう方が、たくさんいらっしゃいます。

 福島 格安SIMの事業においても異業種と連携することによって、他社とは違う付加価値、差別化を生み出せるということですね。

 鹿瀬島 そうです。全国津々浦々で、お客様に安心して対面でご購入いただけますし、何か困ったことがあっても店頭でご相談いただけます。そういったところが安心感という付加価値につながると考えています。多くの同業他社はWEBがメインですから、対面での問い合わせなどがしにくいケースが大半です。

 これ以外にも例えばポイント連携のメリットなどもあります。今、ヤマダ電機さんが力を入れている商材の一つに「FUNAIテレビ」があります。テレビとなると、お客様にとっては大きな買い物ですし、還元されるポイントも大きい。ヤマダニューモバイルはこの還元ポイントを、月々の通信料金に充当できるサービスを計画中です。これもお客様にとっては、非常に大きなメリットになるだろうと考えております。

U-NEXTとの連携

 福島 親会社のU-NEXTは多くのコンテンツをお持ちで、それが強みになっています。それらとヤマダニューモバイルが連携することでも、独自の付加価値を生み出すことができそうですね。

 鹿瀬島 今は単純に「ご一緒にU-NEXTに加入しませんか」というご案内程度です。しかしながら、U-NEXTにご加入いただいたお客様に対して、さらにヤマダニューモバイルへご加入いただくことで、何らかの特典を差し上げられないか、というようなことを計画しています。

 福島 ヤマダニューモバイルがU-NEXTを付加価値にするのではなく、U-NEXTの付加価値としてヤマダニューモバイルを活用する形ですか。

 鹿瀬島 そうです。例えばAmazonさんだったら「プライム・ビデオ」ですよね。プライム会員だったら、プライム会員にプラスして「ビデオが見られます」と。

 U-NEXTも今、多くの会員を抱えておりますので、その中で格安SIMを使いたいという会員様には、何らかのメリットが生じるようなプランをご提供できないかということで、いろいろと模索しています。

 これにつきましては明確になった段階で改めて、きちんとご説明させていただきます。

 福島 これから格安SIMマーケットの競争は、さらに激しくなっていくと思います。今後の業界はどう変化していくと予測していますか。

 鹿瀬島 繰り返しになりますが、やはり「安心感」や「分かりやすさ」などがポイントになるだろうと思っています。安心感の面では、我われにはヤマダ電機という非常に強い店舗が、全国に1000店舗もあるので、そこは大きなアドバンテージを持っていると考えています。

 分かりやすさに関しては、これは当社も含めて反省しなければならない部分です。大手キャリアも格安SIM事業者も含めて現状では、料金体系やサービス体系などが非常に分かりづらくなっています。「繰り越し」や「違約金」「縛り」等々。

 そういった部分をもっと分かりやすい商品・サービスにしていかないと、ファミリー層などにはなかなかご理解・ご納得をいただきにくい。当社としましてはお客様に、もっと分かりやすいプランを提供していきたいと思っております。

 あとはプラスワンの付加価値ですね。これについては我われの持っているコンテンツサービスを織り交ぜることで、お客様に「ヤマダニューモバイルに入ってよかった」といっていただけるサービスをご提供したいと思っています。

目標は5年で100万回線

 福島 ヤマダ電機との連携について今後、さらなる展開を何かお考えですか?

 鹿瀬島 これはヤマダ電機さんときちんとお話をしなければいけないことなのですが、当社としましては、大手3キャリアさんと同じような間仕切りのあるブースタイプのカウンターを、店内に設置させていただければいいなと考えております。

 福島 お客様によりアピールしやすくなりますね。

 鹿瀬島 はい。アピールの度合いが全然違ってくると思います。

 福島 ヤマダ電機が得意とする家電製品などとの連携についてはいかがでしょう。IoT時代ということで、最近ではSIMドライブを搭載した家電製品やIT機器も、かなり出てきています。

 鹿瀬島 はい。そういう連携も近い将来、現実になると思います。ヤマダ電機さんが得意とする、例えばエアコンでもパソコンでもいいのですが、SIMが刺さる機器であったら、それらとヤマダニューモバイルとが連携するという展開はとても重要ですし、しっかりと取り組んでいきたいと思っています。

 福島 パートナーが家電製品を扱っている企業だからこそ、今後、いろいろな形でビジネスが広がっていきやすい環境にあるわけですね。最後にヤマダニューモバイルとしての契約獲得目標を教えてください。

 鹿瀬島 現状で格安SIMトップシェア企業の契約数が約70万回線ですから、まずはそれを超えることが重要です。しかし、今の当社のアドバンテージ等を考えれば、それよりも上の100万回線ですね。そこが当面の目標です。これを5年で達成したいと考えています。

 福島 かなり高い目標ですね。

 鹿瀬島 はい。でも、ヤマダ電機さんの全国ネットワークをお借りすれば、できない数字じゃないと思っています。そのためにも、しっかりとしたマーケティング調査やリサーチ、プラン設計などを実践して、お客様に受け入れられる商品を作っていきたいと思っています。 (敬称略)

鹿瀬島 礼(かせじま・れい)氏
1976年(昭和51年)8月19日生まれ。2001年(平成13年)3月 慶應義塾大学 経済学部卒。2001年(平成13年)4月 株式会社有線ブロードネットワークス(現 株式会社USEN)入社。2010年(平成22年)12月 株式会社U-NEXT 入社(転籍)。2017年(平成29年)1月 Y.U-mobile株式会社取締役 就任(現任)。2017年(平成29年)6月 株式会社U-NEXT NEXT事業本部 NEXT営業部部長 就任(現任)。
福島敦子(ふくしま・あつこ)
ジャーナリスト / 津田塾大学英文科卒。中部日本放送を経て1988年独立。NHK、TBSで報道番組を担当。テレビ東京の経済番組や週刊誌「サンデー毎日」でのトップ対談をはじめ、日本経済新聞、経済誌など、これまでに600人を超える経営者を取材。現在、BSジャパンの経済番組「マゼランの遺伝子」のキャスターを担当。経済・経営の他、環境、コミュニケーション、地域再生、農業・食などをテーマにした講演やフォーラムでも活躍。上場企業の社外取締役や経営アドバイザーも務める。島根大学経営協議会委員。1997年にはワインアドバイザーの資格を取得。主な著書に「愛が企業を繁栄させる」(リックテレコム)をはじめ、「それでもあきらめない経営」「ききわけの悪い経営者が成功する」「就職・無職・転職」「これが美味しい世界のワイン」などがある。
URL: http://www.atsuko-fukushima.com/