商品研究商品研究4 デジタル周辺機器/Wi-Fi

概要

Wi-Fiリプレイスが必要な理由
多台数接続の同時通信が進化!

  • 無線LAN機器を取り巻く外部環境は、ここ数年で大きく変化
  • 3~5年前のWi-Fiアクセスポイントは最新機への買い替えで快適性アップ
  • 複数台端末による同時接続が強化され、通信品質が安定
  • 温泉街や海辺などの観光地向けに高耐久モデルもラインアップ

 現在お使いの無線LAN(Wi-Fi)アクセスポイントはいつ導入したものだろうか。もし、5年前後よりも以前の機種ならリプレイスを検討してほしい。というのもWi-Fiを取り巻く外部環境が、大きく変化しているからだ。

 文部科学省が2016年に公表した教育の情報化加速プランにより、学校の現場では「2020年までに児童生徒ひとりに1台のICT端末環境を実現する」という計画が進む。また、自然公園や文化財などの観光地やホテルでは、急増する外国人旅行者のスマートフォン利用対策として、Wi-Fi環境の整備が求められている。

 さらに、一般オフィスではスマートフォンやタブレット端末の活用が浸透すると共に、プリンターやプロジェクターなどのオフィス機器で無線機能の搭載が標準化されてきた。

 こうした環境変化を背景に、Wi-Fiアクセスポイントへ接続される端末数は急増し、コンテンツの大容量化ともあいまって、通信負荷が急速に大きくなっている。

 しかも、いずれも3年~5年程度で急激に変化してきたこと。それだけに以前の機種では、こうした環境での利用を想定して設計されておらず、接続の集中や大容量データの送受信時など、場合によっては通信品質の低下が避けられない。

 今後、様々な機器がネットにつながるIoT(モノのインターネット)が本格化してくれば、Wi-Fiアクセスポイントへの接続台数は爆発的に増える可能性もあり、通信容量はさらなる増加傾向にある。

 こうした中、デジタル周辺機器を手掛ける主要メーカー各社は、多台数接続を前提として機器設計を根本的に見直すと共に、最新技術を積極的に導入することで通信パフォーマンスの安定性を高めた最新モデルを製品化しているのだ。

トライバンドで通信安定

 以上が、Wi-Fiの買い替えを勧める理由であるが、最新機は具体的にどう進化しているのか。注目の技術や機能を中心に見ていきたい(表)。

 まず、最も新しい話題の技術として挙がるのは「トライバンド」ではないだろうか。その詳細は囲み解説に譲るとして、簡単にいえば「3つの周波数帯域を使用して通信を行う」ことである。

 既存モデルでは、2.4GHzと5GHzの2つの帯域(デュアルバンド)を使った通信方式が標準仕様となっている。これに対して、トライバンドでは2.4GHz帯と2つの5GHz帯による3帯域で通信を行う。これにより使える帯域幅が増えるため、通信の混雑が緩和され接続端末数が増えてもパフォーマンスの低下リスクが軽減されるというわけだ。

 現在、法人向けでは主に文教モデルなどでトライバンドが採用されている。前述した通り、ひとりに1台のタブレット端末環境を整備するためのバックボーンとして、Wi-Fiの整備が急務の課題とされていることが背景にある。

 校内に設置されるWi-Fi機器には1クラスあたり30人前後、あるいはそれ以上の生徒が一斉にアクセスする。時には数クラスが同時に使うケースもあるため、多台数接続や高い通信負荷への耐久性などが要求される。もともと文教向けは、100台を超える同時接続が可能とされているが、トライバンドの採用で、さらに安定した通信品質が実現されているわけだ。

 また、トライバンドと共に、文教向けモデルに搭載されていることの多い機能が「通信平準化機能」である(図)。これは無線環境を安定させることで端末ごとの通信機会を平均化するもの。

 授業では十数人の生徒が同時にアクセスポイントに接続するため、端末ごとに再生遅延などのタイムラグが生じる。通信平準化機能は、このタイムラグを解消し、タブレット活用時のスムーズな授業進行に役立つ。

■表 最新Wi-Fiアクセスポイントに搭載される注目技術や機能

技術/機能 概要
トライバンド 3帯域を使用して通信を行う技術。既存のデュアルバンドに比べて帯域が増えるため、多台数の端末接続時にも通信品質が安定しパフォーマンス低下を防ぐと共に、高速な通信環境を実現する。
通信平準化機能 同時接続時に端末ごとに生じる通信遅延を平準化することで、再生/ダウンロードなどのタイムラグをなくす機能。「平等通信機能(エレコム)」や「公平通信制御機能(バッファロー)」など、メーカーにより名称は異なる
802.11ac 国内では2013年3月の電波法関連規則の改正により使用が可能となったWi-Fi最新規格。規格値で6.9Gbpsの高速通信を実現できる
MU-MIMO MIMO(マルチ・インプット・マルチアウト・プット/マイモと呼ぶ)の拡張機能で、伝送速度を高速化する技術のこと。MIMOが1台の端末に対して1:1で通信を行うのに対して、MU-MIMOでは送受信側の双方に複数のアンテナを搭載し、同じ周波数帯でデータの同時通信を行える
ビームフォーミング 電波の指向性を高めて通信品質を向上させる技術。送受信機同士がお互いの位置を検知するための信号などをやり取りすることにより、指向性を高める
防水/防じん 外部環境的に電子機器の使用が難しい場所への設置を目的に、耐久性を高めた特殊モデル。低温から高温まで、動作保証範囲が広く気温変化にも強い

■図 通信平準化機能による通信イメージ

 

トライバンドとは

 「トライバンド」とは、文字通り3つの周波数帯域で通信を行うこと。既存のデュアルバンドは2.4GHz/5GHz(W52・W53)であるのに対して、トライバンドでは2.4GHz帯/5GHz帯(W52・W53)/5GHz帯(W56)の3帯域が使われる。

 無線通信で複数台の端末が同時に接続されている場合、実はきめ細かく端末を切り替えながら通信を行っている。このため、接続端末が増えるほど順番待ちが長くなり、パフォーマンスが低下する。これを解消するための手法の1つがトライバンドである。簡単にいえば、2車線の道路が3車線になったことで自動車の流れがスムーズになるように、帯域が増えたことで通信が安定し高速化するわけだ。

 コンセプトは以前からあったが、実現のネックとなっていたのがDFS障害の問題。5GHz帯の一部のチャンネル(W53とW56)は気象観測や航空レーダーなどの公共事業用周波数として使われており、干渉があった場合はWi-Fi側が別のチャンネルに移動しなければならない。

 さらに、移動先でレーダー波との干渉がないかどうか60秒間の監視が要求されるため、干渉時には最低でも1分以上も通信が停滞する。これでは帯域を増やしても効果は小さいことから、法人向けでは敬遠されてきた。

 そうした中、バッファローはDFS障害回避機能の搭載により、この課題を解決。法人向けモデルとして、初めてトライバンド対応機を2017年1月に製品化した。

 公共レーザー監視用アンテナを搭載し、常にレーダー波が干渉しないチャンネルを監視・把握することで、レーダー波を検知した際には瞬時に干渉のない別チャンネルへ自動移行できるため、2つの5GHz帯を有効に活用できる。

 通信負荷の飛躍的な増大が予想される今後、トライバンド対応モデルのラインアップ充実が期待される。

今こそ必要な最新規格モデル

 表の「802.11ac」や「MU-MIMO」などは、主に伝送速度の高速化に貢献する技術といえる。

 802.11acは周知のように、Wi-Fi規格の最新版。従来規格「11n」と比較した場合、規格値でのデータ通信速度は最大約11.5倍(実際の速度は製品により様々)と超高速だ。

 同規格は、2013年3月からドラフト版として国内で使えるようになった。このため同規格対応モデルが本格的に製品化されるようになったのは2013年後半から2014年にかけてのこと。11ac対応端末が増えてきたことを考えれば、3年以上前の同規格に非対応のWi-Fiアクセスポイントでは、その恩恵を十分に享受できていないことになる。

 MU-MIMO(マルチユーザー・マイモ)とは、送受信側の双方に複数のアンテナを搭載し、同じ周波数帯でデータの同時通信を行うことにより伝送速度を高速化する技術だ。指向性を高めて受信側が受け取りやすい信号を送る技術であるビームフォーミングとあいまって、Wi-Fiアクセスポイントが持つ伝送性能を最大限に発揮させることを可能としている。

 それぞれ独立した技術というよりは、MU-MIMOとビームフォーミングとも11ac規格で高速通信を実現するために採用されており、同規格準拠のモデルには、基本的に搭載されていると考えてよい(*1)。

 一方、Wi-Fi環境の整備が推進されている観光地、特に源泉に近い温泉街や海辺などは電子機器を設置するには厳しい環境といえるだろう。

 だが、最近のWi-Fi機器のラインアップには、こうした特殊用途向けのモデルが用意されている。設計段階から耐久性に配慮し、腐食に強い内部基盤を採用することで防水/防じん性能を高めると共に、低温から高温まで動作温度の範囲が広いので、観光地の公衆無線としてはもちろん、学校の校庭や畜舎といった環境にも好適だ。

 最新モデルには、ここに挙げたポイント以外にも、メーカーや機種により様々な技術や機能が採用されている。その導入により快適な無線LAN環境を実現してほしい。

(*1)MU-MIMOとビームフォーミングは11acの第2世代からサポート