2018年度税制改正の動向は!? 経済産業省の要望事項ポイント「少額減価償却資産の特例」延長を要望
事業承継を促進する税制の拡充・創設へ

各府省庁、税理士連合会や会計士協会などの関係団体から2018(平成30)年度税制についての要望書や意見、建議書などが提出されています。そうした中で、中小企業の税制に影響が大きい経済産業省からも「平成30年度税制改正に関する経済産業省要望書」として要望事項が2017年8月30日に提出されました。

要望書のポイントをまとめた資料が下記の通り。その大枠として、IoT(モノのインターネット)などによりもたらされる産業構造の変化への対応を意識した「1:第4次産業革命に対応した『攻めの経営・投資』の強化」「2:中小企業の生産性向上・地域経済の活性化」「3:エネルギーの安定供給」「4:車体課税の抜本見直し」「5:申告納税手続の環境整備」が挙げられています。

●2018(平成30)年度税制改正に関する経済産業省要望のポイント。経済産業省の資料より引用

「少額減価償却資産の特例」や「交際費の特例」を延長要望

このうち、中小企業や小規模事業者にとってダイレクトに関係してくる税制は「2:中小企業の生産性向上・地域経済の活性化」でしょう。様々な要望項目が提出されていますが、注目は「少額減価償却資産の特例」と「交際費課税の特例」の適用期限について、いずれも2年間の延長(2020年3月末日まで)が要望されていることです。

周知のように、少額減価償却資産の特例は税法上の中小企業に限り、「30万円未満の減価償却資産を取得した場合、合計金額300万円を上限に全額の損金算入(即時償却)を認める」制度です。設備投資に際して積極的に活用されている制度だけに、これまでも期限を迎えるごとに延長要望が提出され、それが認められてきました。2018年度改正でも延長措置が講じられれば、設備投資にとって大きな味方になることは間違いないでしょう。

●「少額減価償却資産の特例」の概要。経済産業省の資料より引用
●「少額減価償却資産の特例」の活用状況など。経済産業省の資料より引用

また、交際費課税の特例は、「税法上の中小企業は定額控除限度額800万円までの交際費をすべて損金に算入できる」という制度。中小企業にとって、交際費は取引の維持や拡大を図る上で重要なファクターの1つだけに、少額減価償却資産の特例と共に、延長措置に期待したいところです。

各種税制で事業承継を後押し

中小企業関係税制として、2018年度改正ならではといえる要望事項が事業継続を促すための制度といえます。中小企業庁は昨年来から、若い世代への事業承継を積極的に促すため、「事業承継ガイドライン」や「事業承継5ヶ年計画」などを策定しています。この背景には、世代交代の平均年齢とされる70歳に達する経営者が2020年までに30万人に達することや、70代や80代の中小企業の経営者でも半数以上が事業承継の準備を終えていないことなどあります。

こうした状況の改善を目指す施策の1つとして税制面から支援しようと、事業承継関連について多くの要望が提出されているわけです。

親族や従業員などへ株式を贈与・相続する場合の特例の抜本的な拡充だけでなく、他の企業や親族外経営者への事業引き継ぎ、ファンドを通じて事業承継を行うといったケースについても税負担を軽減する措置(「中小企業・小規模事業者の再編・統合等に係る税負担の軽減措置」)が、経済産業省から要望されています。

「中小企業・小規模事業者の再編・統合等に係る税負担の軽減措置」は、後継者不在により事業承継や継続を断念せざるを得ないといった、中小企業が抱える事業承継課題の解決を目指すもの。事業売却やM&Aにより経営資源や事業の再編・統合を促すため、事業の譲渡益課税の軽減、ファンドからの出資を受けた場合にも中小企業関連税制を適用できるよう要件の緩和などを要望しています。

●中小企業経営者の次世代経営者への引継ぎを支援する税制措置の創設・拡充。経済産業省の資料より引用

さらに、中小企業や小規模事業者にとどまらず、個人事業者の事業承継に関わる制度(「個人事業者の事業用資産に係る事業承継時の負担軽減措置」)の新設が要望されていることも、2018年度改正に向けた注目ポイントといえるのではないでしょうか。

●個人事業者の事業用資産に係る事業承継時の負担軽減措置。経済産業省の資料より引用

なお、経済産業省が提出した要望書の詳細については、こちらのページを参照してください。

安倍晋三首相が衆議院解散の意向を表明したことから、2018年度税制改正に向けた検討スケジュールに少なからず影響が出てくることが予想されていますが、内容については経済産業省をはじめ各府省庁から提出された項目から大きく外れることなないはずです。例年通りであれば、12月に税制改正大綱が発表される予定なので、その動向に注目しておきたいところです。(長谷川丈一)