産業用ドローンの試作機を発表/ヤマハ発動機急成長が期待される産業用ドローン市場
狭小水田の農薬散布などで本領発揮か!?

 「今回、参考出品したYMR-01は『バイク屋がドローンを作ると、こうなります』という商品。カーボンモノコックフレームによる軽量化やダブル・エアインテークの採用による冷却性能のアップ。そして着陸時の衝撃をやわらげるランディングギアなど、これまでにないドローンに仕上がっています」

 こう語るのはヤマハ発動機のUMS事業推進部長・中村克氏です。10月11日~13日に幕張メッセで開催された「農業ワールド2017」(主催:リードエグジビションジャパン)の基調講演において、「ヤマハが目指す未来の農業」について語った際の一コマです。

 普段、ドローンに接する機会は少ないのですが、他業界の動向を知ることも勉強だと思い、今回はしっかりと拝聴させていただきました。ドローンでも産業用についてはこれまで“空撮用のツール”という程度のイメージしか持っていなかったのですが、意外に用途が広いことが分かり、なかなか興味深い世界であることを認識されられました。

産業用ドローンの定義

 ドローンというと機体の四隅に複数の回転翼(マルチローター)を装備したものをイメージしますが、総務省の定義によると、産業用ドローンの形状は3種類。マルチローター以外にヘリコプター型のシングルローター、そして飛行機型の固定翼機(概ね重量25Kg未満)まで入るとのこと。すべて、自動離着陸やGPSによる自律飛行が可能なものと定義されています。

 その国内市場の規模は2016年の130億円強から、2020年には350億円超まで急拡大するとの予測もあり、かなりの成長市場といるでしょう。また、その用途は現状では農薬散布が約70%を占めており、その大半はヘリコプター型が担っているとのこと。中村部長の話では、国内では現在、約3000機が産業用途で稼働中とのことでした。

 そして今後の急成長が確実視されているのがマルチローターであり、ヤマハも今回、満を持してマルチローターのプロトタイプYMR-01を発表したわけです(発売は2018年予定)。もともとヤマハはヘリ型ドローンで30年以上の実績があり、国内ではトップクラスのシェア。そのノウハウを投入し、開発コンセプトも「農薬散布性能を極める」としているだけに、実機を展示したブースは農業関係者で大混雑。解説スタッフは終日、対応に追われていました。

 ヤマハの資料によれば国内の水田の総面積は約150万haで、現状はその1/3程度でヘリ型ドローンによる農薬散布が行われているとのこと。残りの2/3はヘリ型ドローンでは対応しにくい狭小水田であったり、高価な機体コストや操縦の難しさなどから敬遠されていたわけですが、マルチローターによる農薬散布が、これらの課題解決の一助になるとみられています。

 ヤマハのブースで話を聞くと「ヘリ型とマルチローターは今後、使い分けが進むだろう」とのこと。

 ヘリ型と比較した場合、マルチローターは小回りが利き、軽量で扱いやすいなどのメリットを持つものの、1回当たりに搭載できる農薬量の少なさや1充電当たりの飛行時間の短さ、そしてバッテリー充電時間の長さなどのデメリットもあります。

 ヘリ型の燃料はガソリンですから、ガソリンスタンドで手軽に入手可能であり、燃料補給も短時間で済みます。また、農薬搭載量についてもヤマハの最新モデル「Fazer R」の場合、最大で32Lのタンクを装備しており、1飛行当たり4haの水田に農薬を散布可能。「1日かければ30haはこなせる」(関係者)とのこと。

 一方のYMR-01はプロトタイプのため、積載容量等の詳細なスペックは未発表だったものの、「散布面積は1飛行当たり1ha」(関係者)とのこと。その後のバッテリー充電時間を考えれば、1日に散布可能な面積の差はかなり大きいでしょう。ヤマハ関係者の話では「マルチローターは今後、ヘリ型ではオーバースペックという環境下での使用がメインになるだろう。個人農家などが中心の市場になると思う」と話していました。

 マルチローターによる農薬散布は農家の負担軽減策としての期待も大きいだけに、今後の注目市場となることは間違いなさそうです。しかも、これまではマルチローターによる農薬散布を認めてこなかった国も、新たなルールを策定。こうした動きも、市場を後押しすることになりそうです。(征矢野毅彦)