女性起業家レポート: (株)アンドゥアメット・鮫島弘子氏エチオピアのシープスキンに魅せられて
皮革製品を現地で製造、日本で販売

 11月末発行予定のシャニム61号は現在、編集作業のまっただ中。先日は福島敦子さんの対談取材のため、株式会社アンドゥアメットを訪問。代表取締役兼チーフデザイナーの鮫島弘子さんに話をうかがってきました。

 鮫島さんは青年海外協力隊として3年間、エチオピアとガーナへ赴任。帰国後、5年間の外資系ブランドのマーケティング担当を経て、2012年に起業。世界最高峰といわれるエチオピアのシープスキン(羊皮)を使用したレザー製品の企画・製造・販売を行う(株)アンドゥアメットを設立した、非常にエネルギッシュな女性経営者です。

エシカルなだけではモノは売れない

 同社の一番の特徴は、エチオピアに現地法人を設立し、その直営工房で現地人の職人を育成・雇用。現地でエチオピアン・シープスキンを仕入れ、現地で製造・加工を行った上で、日本に輸入し販売していることです。

 今流行の言葉で言えば「エシカル(倫理的、道徳的)」ファッションということになるわけです。もともとデザイナーだった鮫島さんだけに、青年海外協力隊時代に初めて目にしたエチオピアン・シープスキンに、さぞや魅せられての起業だったのだろうと思いました。

 ところが意外にも、鮫島さんが現地で初めてエチオピアン・シープスキンを見たときには「こんなものか」という感想。その素晴らしさを心底実感できたのは、エチオピア赴任後、しばらく経ってからだったそうです。

 実は当時、上質のエチオピアン・シープスキンはその大半が欧米に輸出されており、国内で流通するものはローグレード品ばかり。まあ、エチオピアにとっては重要な外貨獲得産業だけに、それも致し方のないところでしょう。

 しかし、鮫島さんが鋭いところは、エチオピアン・シープスキンがそれだけ素晴らしい素材であるにも関わらず、自国には大した利益をもたらしていないことに気付いた点です。素材としてのみ輸出されるだけであり、加工や商品化などの付加価値をもたらす技術が、エチオピア国内にはほとんど育っていなかったからです。

 そこから起業を思い立ったわけですが、その経緯等についてはシャニム61号の「福島敦子のアントレプレナー対談」をご一読いただくとして、ここでは鮫島さんの言葉で印象に残ったものを紹介しましょう。

 アンドゥアメットのバッグは、いわゆるエシカルに分類できます。エチオピアに直営工房を持ち、フェアトレードで生産。水や空気を汚さない環境に配慮された皮革を用いており、伝統技法やハンドメイドなどを応用して製造。鮫島さんのこだわりによるこうした企業活動は、日本国内のみならずロンドンの展示会でも高く評価されています。

 ところ鮫島さんは「エシカルな商品だからというだけでは、モノは売れない」と断言します。エシカル消費を増やすべき、という気運が世界的な高まりを見せつつあることは確かですが、「では、エシカルというだけの商品に10万円を払いますか?」と問えば、多くの人が尻込みするのが実情でしょう。

 実はアンドゥアメットの設立当時、エシカルを前面に打ち出したイベントに数カ月間出店したそうです。ところがたいした実績につながらず、それ以後は商品としてのデザインや品質を前面に訴求するプロモーションに変更。それと同時に業績が上向き始めたとのことです。

 エシカルとは今後のモノ作りにおいて、極めて重要なキーワードであることは確かです。しかしながら、それはあくまで根底を支えるものであり、基本的な経営方針を具現化したもの。それ以前に商品は、10万円を払う価値を感じるだけの品質やデザインであるべき。その上でエシカルであって初めて、人は背中を押されるということなのでしょう。

 「ビジネスはきれい事だけでは成立しない」という極めて当たり前のことですなのですが、その最前線で奮闘されている方から聞くと、重みが違うということを改めて感じた次第です。(征矢野毅彦)