ビジネスプリンター/「新商品」レポートPIXUSのビジネス向け「TR」シリーズ
小売店や飲食店から注目される理由とは?

2017年10月に発売されたキヤノンのビジネス向けA4対応インクジェット複合機(プリント/コピー/スキャン/ファクス搭載)の「TR」シリーズが、注目を集めています。

同社は、すでにビジネス向けではA4対応の「MAXIFY(マキシファイ)」ブランドを展開しています。これに対して、新製品TRシリーズはコンシューマ向けブランド「PIXUS(ピクサス)」にカテゴライズされます。TRは、MAXIFYと位置づけ的に何が違うのでしょうか。新モデルの概要と、注目される理由をレポートします。

ビジネスインクジェット複合機「TR8530/TR7530」

ビジネス向け新製品は、「PIXUS TR8530」と「PIXUS TR7530」の2モデルです。両機種は液晶サイズ、ネットワークやメモリーカード対応などの点が違う程度で、印刷速度や原稿読取速度などの基本性能は変わりません。

●A4ビジネスインクジェット複合機「PIXUS TR8530」
機種 TR8530 TR7530
印刷速度(カラー/モノクロ) 10ipm/15ipm 10ipm/15ipm
ファーストプリント(カラー/モノクロ) 約10秒/約8秒 約10秒/約8秒
インク色数 5色ハイブリッド 5色ハイブリッド
液晶モニター 4.3型(タッチパネル対応) 3.0型(タッチパネル対応)
ネットワーク 有線/無線 無線
給紙容量 前面給紙100枚+背面給紙100枚 前面給紙100枚+背面給紙100枚
メモリーカード ――
インクコスト(カラー/モノクロ)
※標準インクタンク時
約9.6円/約3.1円 約9.6円/約3.1円
サイズ/質量 W438×D351×H190/約8.0kg W438×D350×H190/約7.9kg

主な特徴は、「小型」「快適な操作性」「5色ハイブリッドインク」といったところでしょうか。TRシリーズは、製品の系列的には従来機MX923の後継に相当します。MX923は、明確にビジネス向けに展開されたわけではありませんでしたが、業務用途に活用されることも多かったといいます。

TRシリーズは、MX923から大幅なコンパクト化を実現。基板や電源の小型化、内部レイアウトの最適化により、設置面積で約18%、体積で約32%も削減されました。Wi-Fiにも標準対応なので、設置の自由度は高いでしょう。

前面と背面の両側からの2WAY給紙により、普通紙と専用紙、A4とB5といった種類やサイズの異なる用紙の同時セットが可能。同サイズの普通紙なら、最大200枚を収納できます。最大20枚を積載できるADFを装備するなど、ビジネスを意識した改良が盛り込まれています。また、5色ハイブリッドインクなどの、従来機でも評価されていた特徴は、そのまま継承されています。

顔料BK/染料CMYKのハイブリッドインク

ビジネス用途で見るとスペック的に物足りなさを感じそうですが、実は一部の業務用途では逆にそうした部分で関心を引いています。最も大きなポイントは、5色ハイブリッドインクです。

TRシリーズでは、顔料BK/染料CMYKというように2タイプ5色のインクが搭載されています。インクジェットプリンターは印刷コストや電気代が安いといったメリットはありますが、業務で使うには普通紙への印字品質などに課題がありました。そこで、業務使用を意識して開発設計すると共に、にじみや擦れに強い顔料系インクを採用したビジネスインクジェットプリンターが登場してきたことは周知の通りでしょう。

今では、ビジネスインクジェットプリンターといえば、全色顔料系インクを採用したモデルがほとんどです。顔料系インクは普通紙への印刷では威力を発揮しますが、写真印刷での鮮やかさなどについては、あまり期待できません。

ビジネスでも、写真をキレイに印刷したい用途は多いでしょう。例えば、小売店や飲食店などはチラシやPOP、美容院ならヘアカットのイメージ写真集などの作成で高品質な写真プリントが欠かせません。その一方で、従業員のシフト表や資料、回覧といったビジネス文書も、にじむことなくくっきりと印刷することが求められます。

このため、写真を重視する用途などでは、コンシューマ向けインクジェット機を業務用途に転用して使っているケースが見られます。しかし、ビジネスが意識されていないため、使い勝手はよいといえないでしょう。

そこに登場したモデルがTRシリーズというわけです。店舗のバックヤードは狭いことが多く、場合によってはレジ周辺が事務作業の場を兼ねていることも少なくありません。小型化により設置性が高く、機能はビジネスに配慮し、ファクス機能も搭載、黒文字も写真も高画質で印刷でき、しかも操作感はコンシューマ機に近いといった特徴が、一部の用途で受けているというのも頷けます。

キヤノンも、戦略的にこの辺の事情を意識しているようで、一般オフィスなど向けにフル顔料インクのMAXIFYに加え、今回のTRシリーズをビジネス向けとして明確に位置づけて展開したとしています。エプソンの大容量インクタンク搭載の「エコタンク」など、ビジネス向けに新たなカテゴリーが登場しているインクジェット機には、注目しておきたいところです。(長谷川丈一)