外国人接客にも有効な「Pepper for Biz」小売り・飲食業“人手不足解消”の切り札に!?

 飲食業や小売業などで人手不足が深刻化しています。つい先日もファミリーレストラン「ロイヤルホスト」などを展開するロイヤルホールディングスが年中無休を中止。2018年から休業日を設定すると発表したばかりですが、その要因も不足する人材の確保とのこと。「休業日を設定することで従業員が働きやすい職場とし、顧客満足度も高められる」としています。

 こうした状況下で開催された「SoftBank Robot World 2017」(2017年11月21~22日)は、実にタイミングのよいイベントだったと思います。基調講演で、ペッパーを店舗スタッフとして活用している企業の事例が紹介されたからです。

 登壇したのはカフェ「プロント」などを展開するプロントコーポレーション(以下プロント)と、スナック菓子メーカーであり直営店舗「カルビープラス」などを展開するカルビーです。両社ともペッパー導入の目的について、販売スタッフの効率化を目指すと共に、拡大するインバウンド需要に対応することをあげていました。

プロント「事前注文受け付けペッパー」

 まずはプロント。同社は2016年11月に、東京・浅草店でペッパー導入をスタート。翌17年3月には東京国際フォーラム店にも導入しています。その目的は当初、ペッパーによる「顧客の呼び込み・挨拶」「商品紹介」及び「顧客の遊び相手」でした。

 そして第2段階の目的として今回紹介された事例が「ペッパーによる外国人顧客対応の効率化・満足度アップ」でした。

 ペッパーによる対応を開始する以前の同社は、外国人顧客対応策として「外国語による店頭告知物の展開」「外国語のメニュー表示」そして「フリーWiFI導入」などを行っていました。

 ところがこうした展開だけでは「外国人顧客との意思疎通が困難」との課題が発生。具体的には「接客がスムーズにいかない」や「接客に時間がかかる」「レジでうまく説明できない」などの問題が生じ、外国人顧客へストレスを与える要因ともなっていたとのことでした。

 その解決策として、ペッパーの英語・中国語機能を活用した「事前注文受け付けペッパーの導入」をスタートしたわけです。外国人顧客はペッパーのタブレット上で外国語によるメニューを選択し、印刷された注文票をレジへ持参して商品受け取りと決済を行います。その流れは以下のようなもの。

 「Tell me your order」(呼び込み)
 「Select your order」(注文選択)
 「Give your ticket to the staff」(注文票発券)→レジへ持参

 文字にしてしまうと非常にシンプルで、店舗の現場で実際にどれほどの効果があるのか、とも思えますが、店舗スタッフの反応は今のところ悪くはないようです。

 「店頭に立ち止まる顧客が増えた」
 「注文票への対応も難しくはなくスムーズ」
 「ペッパーの反応が以前よりも早くなり、ストレスがなくなった」

 これと同時に課題もまた、浮き彫りになったといいます。その一つは「メニューの改訂に合わせて定期的な更新作業が必要」ということ。これについてはペッパーでなくともデジタルサイネージなどでも必要とされる作業。改訂作業をなくすという方向よりも、より簡易的な改訂作業を実現し、作業負担の軽減を図ることが現実的な対策のように思われます。

 また「品切れ時にはレジスタッフの口頭によるフォローが必要」との課題もありましたが、これも基本的な対策は上記に準じるのではないでしょうか。要は定型的作業であれば問題はないが、非定型作業を行う際に、その対応をどれだけ簡略化できるかが、ペッパーを店頭で活用する際の、現状の課題なのだと思います。

 同社では今後への期待として「POSレジと連動した電子決済への対応」や「CRMを用いた顧客情報管理」、さらには「注文から会計までの一連の流れを自己完結できるシステム化」などをあげていました。

カルビー「ペッパーの販売スタッフ化(多言語接客から会計まで)」

 一方、「カルビープラス」を展開しているカルビーも、ペッパーを外国人顧客へのスムーズな接客ツールとして活用する実験をスタートしています。

 カルビーといえばポテトチップスなどのスナック菓子メーカー大手ですが、カルビープラスはもともと「揚げたてのポテトチップスを、味わってほしい」とのコンセプトでスタートした直営店で、現在は国内11店舗、海外(香港)1店舗で展開中。具体的には次の3つをミッションとしています。

 1.物販:ここでしか買えない素材・製法等にこだわった限定商品の販売。
 2.コミュニケーション:店内小型キッチンを通じて素材・製法のこだわりを伝える。
 3.ファストフード:店内で作ったできたて商品のおいしさを体験。

 こうしたミッションを展開する中で、浮かび上がってきた課題が「顧客の検討時間が長い」や「商品や買い方などをうまく伝えられない」というもの。特に外国人顧客に対して、この課題が顕著だったとのこと。その解決策の第一弾としてスタートしたのが「ロボホンを使った量り売りコーナーでの、買い方説明」でした。

 量り売りコーナーとは、顧客が選んだ商品の価格を重さで決めるもの。ところが外国人には馴染みが薄かったため、買い方の説明に時間を要したそうです。そこでロボホンに英語や中国語でその説明を担わせたところ、顧客は買い方をスムーズに理解。そしてスタッフへの質問は、買い方に関するものから商品内容などへと質的に変化してきたといいます。

 そして、ロボット接客の第2段階としてスタートしたのが「ペッパーの販売スタッフ化(多言語接客・商品説明から会計まで)」です。今回の実験ではターゲットを中国人として、対応する決済サービスもアリペイ(中国アリババグループが提供する中国最大規模のオンライン決済サービス)に絞り、原宿竹下通り店において2週間実施したとのこと。

 結果は中国人顧客の商品の理解が深まり、客単価アップを実現。同時期の平均客単価に対して、ペッパー売り上げは1.35倍の客単価アップにつながったとのことです。その意味ではやはり、正しい商品説明は売り上げアップに不可欠であることを立証したといえるでしょう。

 しかも、「店内がより明るく賑やかになった」や「顧客が興味を持ち、会話のきっかけになった」、さらには「混雑時の接客補助係として有効だった」などの副次的な効果も生まれたそうです。

 その一方で課題が生じたことも確かであり、それは「ペッパーで決済までができると思われていない」ことです。これについては「どのように語り出させるか、シナリオの再考が必要」と話していました。

 ペッパーの導入事例については過去に、複数の企業を取材しました。その際に聞かれた今後の要望として、最も多かったものが決済機能です。繁忙期の混雑緩和を期待しているわけですが、その実用実験は一定以上の成果に繋がっていることは確かです。その精度の向上にともなって今後、導入企業も着実に増加するものと思われます。(征矢野毅彦)