必読!これがホントの“節税”講座日本の現金流通量はGDPの2割
先進国で断トツが続く理由とは!?

寄稿:梅川 貢一郎(有限会社トライアングル 代表取締役・税理士・公認会計士)

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日銀券の発行残高100兆円超

1万円札が不足気味ということをご存知でしょうか。2017年1月現在、お札(日銀券)の発行残高が100兆円を突破という報道がなされました。

100兆円とは庶民感覚ではなかなか想像できない金額ですが、日本のGDPが約500兆円、日本の国家予算が約100兆円です。ちなみに銀行預金など個人の金融資産は約1800兆円といわれています。

日本のお札(現金)の流通量はGDPの約20%ですが、先進国における平均値は約5%です。特に北欧は1%台といいますから日本は突出して高いといえます。

しかもお札の発行残高は、1年前の2016年1月は約80兆円でしたので確実に増加しています。おそらく造幣局の輪転機は終日フル回転でお札を刷っているものと思われます。

日本ではお札の流通量が増加傾向にありますが、世界では現金の流通量は減少傾向にあります。その大きな理由は、クレジットカードやデビットカード、あるいは電子マネー、お財布機能のついたスマホの普及です。そして高額紙幣は犯罪やマネーロンダリングに利用されることから、廃止する国が増えているからです。

現金保有が増える二つの理由

ではなぜ日本ではお札の需要が急増しているのでしょうか。

日本の金融機関に信用不安があるなどという話は、昨今聞いたことがありません。日本人の国民性とか、日本は治安がいい(財布を落としても拾った人が届けてくれる)から安心して現金を持ち歩けるから、などという意見もありますが、どれも流通量増加の原因ではありません。

新聞などの報道では、日銀が「マイナス金利」を導入したためとありました。銀行預金をしていた人が金利を「取られる」ことを不安に感じて、預金を引き出しているからではないかということです。

もちろんそれも一つの理由としてありうるでしょう。しかし預金に対して金利が取られるのは、一般の銀行預金ではありません。銀行が預ける日銀の預金に対してです。

一般庶民が日銀にお金を預けることはありませんから、賢い富裕層が余計な心配をしてお金を銀行から引き出すことはないと思われます。

私は、人々が銀行からお金を引き出して現金で保有している理由は、「マイナンバー制度の導入」と「相続税の課税限度引き上げ」であると考えています。

日本はもとよりほとんどの国では、様々な統計数値から国の総生産であるGDPから始まり、国民一人あたりの平均所得、貯蓄などの統計数値を発表します。これら統計数値の根拠はもちろん「表(おもて)」に出てくる企業や個人が申告、公開、提示しているデータです。

しかし世の中には必ず「表」に現れない経済活動や資産があるものです。「ヤ」から始まる特殊な自由業の方々が、正直に所得を申告しているとは思えません。

一般のサラリーマンや主婦でも、ネット販売やFX取引など副業で小遣い稼ぎをした利益や、おじいちゃんから出してもらった結婚資金やマンション購入の頭金を申告していない人は山ほどいます。

このように「表」に現れない経済は、「地下経済」とも呼ばれます。実質経済破綻をしたギリシャは、地下経済が「表」の経済よりも大きいといわれています。またマフィアで有名なイタリアも表面上GDPは日本円に換算して約200兆円ですが、地下経済を含めれば倍増するともいわれています。

日本では建前上、個人が保有するお金はすべて、一度は課税されていることになっています。給与は源泉所得税が引かれますし、株や国債、不動産などを売ったお金は譲渡所得税が課されます。ご先祖(?)から受け継いだお金には相続税が課されます。

しかし「地下経済」で儲けたお金には税金がかかっていませんし、稼いだ方々は税金など払う気は毛頭ありません。地下経済で溜め込まれたお金がいくらあるかは想像がつきません。統計には現れない数字ですから推計のしようがないからです。

「マイナンバー制度」の影響

「地下経済」とはいえないかもしれませんが、小売店や飲食店など現金商売を行っている方が、売り上げから除外しているお金、平たくいえばレジから抜いているお金も相当の金額になると想定されます。

仮に一日の売り上げが20万円あるお店で、レジから毎日1万円抜いて家のツボに貯金したとしましょう。1年で365万円、10年間続ければ3650万円ものお金が貯まります。もちろんすべての商店主がお店のお金を抜いているなどというつもりは毛頭ありませんが。

マイナンバー制度は、私たち「普通」の、まともに税金を支払っている国民にとっては、特別害にはならない(もちろん得にもならない)制度です。

しかし、「地下経済」に属する人たちにとっては脅威です。

マイナンバー制度はいわずと知れた課税強化、脱税逃れ防止のための制度です。将来、銀行口座や不動産登記情報とマイナンバーがひも付けされ、税務署が個人の預貯金、有価証券、不動産を完璧に把握することになるのは確実です。

課税を逃れてきたお金が「リスクの高い」銀行預金から引き出され、税務上安全な現金で保有されるのは当たり前のことです。

しかし、現金を家の中で保有することは別のリスクも伴います。ニュースで民家に泥棒が入り、現金数千万円が盗まれたという報道をよく見ます。

一般庶民の感覚としては、なぜ安全な銀行にお金を預けずに、不用心にも家の中に数千万円もの現金を置いていたのだろうと、不思議に感じる方も多いのではないでしょうか。

あるいは、ごみ焼却場で段ボール箱から現金が数千万〜数億円見つかったという信じ難いニュースもしばしば目にします。密かに儲けたお金を家族にも内緒で段ボール箱に隠しておいて、本人はそのまま誰にも知らせることなくあの世に行ってしまったのかもしれません。

私は、これらニュースとして報道されるのは氷山の一角だろうと想像しています。好き好んで盗難や火事のリスクを承知の上で、お金を家に保管しなければならない人は、世の中には我われの想像以上にたくさんいるのです。

余談ですが、家財には盗難保険を掛けることができますが、現金は保険の対象から除かれます。宝石や金塊などの貴金属は予め保険会社に申告しておけば保険の対象となりますが、現金は本当に盗まれたかどうか、その存在自体を証明できないのです。特に「後ろめたい」お金はその存在を明らかにすることすらできません。

「相続税の課税強化」の影響

人々がお金を銀行から引き出して現金で保有するもう一つの原因が相続税の課税強化です。

タンス預金の有効性は意外なところに!?

平成27年から、相続税の基礎控除が従前の6割に引き下げられました。そのため課税対象となる人が倍増すると考えられています。

税金は誰でも払いたくないもの。みなさん税金を逃れるための方法を考えます。相続税の申告漏れが最も多いのが実は銀行預金です。

といっても亡くなった時点での銀行預金はすべて引き出しが不能になりますし、残高証明を取ればいくら相続財産としての預金があったのかは明白になります。

そこで多くの方が考えるのは、例えば被相続人であるおじいちゃんの病状が悪化して余命あとわずかと分かった時点で、おじいちゃんの預金からお金を引き出して現金化することです。

現金は、家に隠しておけば税務署から見つかることはありませんから、相続財産から除いてしまえという考え方です。

しかし、誰もが考え付くことは税務署もお見通しです。税務署は、亡くなった被相続人の銀行口座について、お金の出入りを最低過去3年間分ぐらいさかのぼって調査します。100万円単位の大きな出金については、何に使ったのかをしつこく調べられます。

ましてや、亡くなる直前に大きなお金を引き出していれば、病人が大金を使うはずがありませんから、相続人が現金で持ち出したのだろうということになります。

であれば、まだ元気なうちにお金を銀行から引き出して、現金で保有しておけばよいのではないか。銀行預金にしておくから税務署に財産として把握されてしまう。

現金で保管して約5年以上たてば、まず大丈夫。自分が死んだらタンスごと現金をこっそり子供たちに分け与えようと、銀行からお金を引き出してしまうわけです。

海外移転した個人資産は数兆円!?

銀行預金は様々な理由から魅力的ではなく、現ナマで保有することが必要な人たちが日本には大勢いることを見てきました。

しかし現金にも固有のリスクがあります。すでに書きましたが、泥棒に狙われるリスク(もしかしたら家族が見つけて勝手に使ってしまうかも)、火事で焼けてしまうリスク、価値が減ってしまうリスク(当然利息が付かない)などがあります。

利回りの見込める投資用不動産物件を購入することもありですが、不動産売買の登記情報はすべて税務署に通知され、不動産の購入者はその購入資金の原資を税務署から問われますから「足」がついてしまうでしょう。

現在は登記申請にマイナンバーの記載は不要ですが、いずれは要求されると予想するのが自然です(現に諸外国では実現しています)。そうなればマイナンバーで金融資産のみならず、不動産もすべて税務署に筒抜けということになります。

ひと昔前なら、無記名の割引債の購入や、上場会社の株を購入して株券の現物を家で保管することも可能だったでしょうが、今は証券会社などで購入した有価証券はすべて「保護預かり」になります。もちろん売買情報は税務署に知らされますから、銀行預金と変わるところがありません。

そこで考えられるリスク回避の方法は、現ナマを海外に逃避させることです。すでに海外に移転した個人資産は数兆円にのぼると考えられています(こっそり持ち出されるのでやはり正確な統計はありません)。

日本はまだまだ裕福な国ですから、外貨がほしくてたまらないという状況にはありません。一方、世界には(北朝鮮をはじめ)外貨不足で悩んでいる国が山ほどあります。

シンガポールや香港を代表とする東南アジアのほとんどの国は、パスポートさえ持っていけば、誰でも無制限に円でも米ドルでも預金ができます。

日本やヨーロッパの先進国は押しなべて超低金利ですが、東南アジアの預金金利は5%以上が普通です。さすがに現地通貨での預金は不安でも、円預金や米ドル預金であれば安心できます。

シンガポールやバンコクなどでは三菱東京UFJ銀行など日本のメガバンクが揃って支店を開設し、「日本人コーナー」を設けて日本語も通じるのでさらに便利です。

確かに東南アジアには政情が不安定な国もありますから、クーデターが起きて銀行預金が没収されるなどという最悪の事態も起きないとも限りません。

しかし経済がグローバル化した結果、海外からマネーを呼び込むことの重要性は、経済に疎い「軍人さん」にも認識されていると考えられますから、没収の可能性はかなり低いでしょう。

諸外国は外貨持込み大歓迎!?

では、かの地の税務当局が預金情報を、日本の税務当局に情報提供する可能性はどうでしょうか。

その心配もありません。確かに日本はOECD加盟国をはじめとした主要国と、相互に税務情報を提供する協定を結んでいます。しかし、テロ組織など犯罪に関するお金の情報に限られています。

仮に日本で脱税の容疑があるお金であったとしても、ほとんどの国では、脱税は犯罪の範ちゅうに入りませんので、情報提供される心配はまずないのです。

海外にお金を持ち出す手段はもちろんお札(現金)です。銀行送金は履歴がすべて税務署に筒抜けですから、一万円札の札束を飛行機で海外に持ち出すことになります。

日本では、現金の海外への持ち出しを禁止していません。ただし、一人当たり100万円以上の現金を持ち出す場合には関税に申告が必要です。もちろんそこで関税がかかるわけではありません。一人当たり100万円ですから家族4人で行けば合計400万円までは申告不要です。

中には一人で1000万円ぐらいの現金を、申告せずに持ち出す猛者もいると聞きます。

空港の手荷物検査はどこの国でも同様ですが、チェックされるのは薬物や凶器、武器や爆発物になりそうな金属、液体です。はっきりいって「紙きれ」である紙幣は彼らの関心の対象ではないのでしょう。

入国時にも一定額以上の現金を持ち込む場合には申告を必要とする国が多いようですが、やはり現金の持ち込みは実害がないので緩いのが普通のようです。スイスのように何の制限もなく「外貨持込み大歓迎」の国も珍しくありません。

このように日本のお札は、日本を離れて国外でも流通することになるのです。

アシのつかない銀行口座とは?

先日、銀行口座とそのキャッシュカードがネットオークションで売買されているという記事を目にしました。オレオレ詐欺などの犯罪に利用するのか、あるいは地下経済で儲けて表に出せないお金を保管するためかもしれないと思いました。

しかしながら銀行で口座を開設するには、必ず本人確認が必要です。その銀行口座を売買しても、本来の所有者にひも付されますからあまり意味がないのでは、と考えながら記事を読むと、売買されたのは「架空名義の口座」とありました。

なるほど理解できました。実は、銀行口座開設時に本人確認が義務付けられたのは、2003年以降のことです。それ以前は、印鑑さえ持っていけば架空名義の預金は作りたい放題でした。

すでに作られた架空名義預金の実在性は、もはや銀行でも税務署でも確認することができません。その架空名義の預金がどれだけあるかも現状では調べられないそうです。

これは確かに必要としている人には“お宝預金口座”でしょう。それがネットで売買されたというのはちょっと間抜けな感じがしますが。

ついでに書くと、実質破綻した休眠会社の実印と銀行通帳、カードも高く売れます。かつては、赤字会社を安く買って、黒字会社がその赤字会社を合併すると、赤字会社が持っていた税務上の欠損金を利用して節税できるという方法がありました。

しかしながら税制改正により、それは原則できなくなりました。

それでは、実質破たんした休眠会社を買ってどのように利用するのか。それを説明するとかなり「際どい」話になってしまいますので今回は省略します。

ただ確実にいえることは、今、法人であっても銀行口座を作るのは簡単ではありません。個人の預金口座の身元確認は、写真入りの自動車免許証などを使うのでかなり確実ですが、法人口座の場合、法人の身元確認は簡単ではないということです。

やはり「足のつかない」銀行口座は使い勝手がいいのです。現金はいくら高額紙幣の1万円札を使っても、やはり金額が張ればそれなりの「重量と体積」になります。取り引きに使うには、やはり銀行口座が便利であるために起こる現象です。