商品研究商品研究4 プロジェクター

概要

半導体光源モデルの選択肢が拡大
教育・サイネージなど長時間使用に最適
  • レーザーやLEDなどの半導体光源を採用した新製品が相次ぎ登場
  • メリットは高い耐久性(長寿命)や省エネ性、高速起動による使いやすさなど
  • 長時間使用が前提の教育やサイネージ、高輝度の常設設置などに効果的
  • TOCをシミュレーションし、用途や使い方に合わせて水銀ランプ機との選び分けがポイント

 レーザーやLEDなどの半導体光源を搭載したビジネスプロジェクターの選択肢が、大きく広がりそうだ。

 半導体光源モデルではカシオやNECなどがラインアップを揃え、市場をけん引してきた。そこに、エプソンがレーザー機の新製品8モデルを一気に発表し、JVC(*1)は独自レーザー光源技術「BLU-Escent」採用の業務用モデルを投入するなど、新製品の登場が相次いでいる。

 特に、業務向けプロジェクターでトップシェアのエプソンが、レーザー光源採用モデルの展開を本格化させたことは大きい。同社は大会議室や大ホール向けにレーザー機を揃えていたが、今回の新製品は5000~15000lmクラスの常設機と4000lmの超単焦点タイプであり、幅広い用途で使うことが可能だ。

 プロジェクターは、水銀を使用した製品を規制する「水俣条約(水銀に関する水俣条約)」では、特殊用途の位置づけで規制対象外であり、照明のようにLED化が推進されているわけではない。それでも、半導体光源搭載モデルが増えてきた理由には、環境意識の高まりも挙げられるが、水銀ランプに比べ優位性を持つことが大きい。

優れた光源耐久性と省エネ性

 半導体光源には、レーザー方式やLED方式、ハイブリッド型といったタイプがあり、それぞれに特徴がある。各光源の特徴についての詳細は表に譲るとして、いずれにも共通するメリットが水銀ランプに比べ「光源の耐久性(寿命)と省エネ性に優れている」ことだ。

 これまでの主流光源である水銀ランプは、以前より耐久性が向上し寿命が延びているとはいえ、その使用時間は2500時間~5000時間程度。経年劣化が大きく、使用時間の経過と共に急激に画面が暗くなる。

 寿命に近くづくほど、光量は不安定になり、フリッカーなどの画質を落とす現象が生じやすい。突発的なランプ切れのリスクもあるため、予備ランプの用意や定期交換が欠かせない。

 これに対して、半導体光源にも経年劣化はあるが、劣化速度は圧倒的に緩やかで耐久性が高い。その寿命は約2万時間が一般的で、水銀ランプの4倍以上だ。毎日10時間でフル稼働するような使い方でも、プロジェクターの耐用年数とされる5年以上にわたり、光源交換や画像劣化などを意識することなく継続使用できる。

 以前は、ランプだけを半導体光源に置き換えたモデルもあったという。半導体光源は光が強く他のパーツの部品劣化を早めるため、故障や短期寿命化の原因となっていた。最近の半導体光源モデルでは無機素材が採用されるなど、半導体光源に適した部品が採用されており、機器全体として高耐久性が実現されている。

 省エネ性の点では、同じ輝度であっても半導体光源は水銀ランプに比べて消費する電力量が低いので、ランニングコスト削減につながる。

 また、水銀ランプ式プロジェクターでは、電源オンから輝度が安定するまでに時間がかかる。機種によっては60秒近く待たねばならない。だが、電源を入れて数秒で安定発光する半導体光源は使用開始を待つ必要がなく、起動が早いことも利点といえるだろう。

 水銀ランプ機でも一般的となった即時シャットダウンにも、半導体光源モデルは対応している。高速起動とあいまって、液晶テレビのような感覚で気軽に電源スイッチのオンオフが可能だ。会議や授業などではプロジェクターを使わない時間帯もあるが、進行をさえぎることなく電力消費を抑えられる。

 こうしたメリットが、ビジネスプロジェクターを活用する上での利便性を高めてくれるため、半導体光源モデルが増えているわけだ。

■表 プロジェクター光源の種類と特徴

種類 概要
半導体光源
レーザー(LD) 高輝度化しやすく、長寿命や低消費電力がメリットだが、LEDに比べてパーツが高価なことや小型化が難しいなどの技術的な理由から、特に耐久性が求められる高輝度クラスの常設モデルで採用されてきた。だが、本文でも解説したように、最近は4000lmクラスでも採用機が増えるなど、今後のラインアップ拡大が見込まれる。
LED(発光ダイオード) 消費電力が少なく光源からの発熱が少ないので、筐体サイズを小型軽量化できる。LEDだけでは輝度を上げにくいため主流は低輝度モデルだが、色再現性に優れており輝度が低くとも鮮やかな発色を特徴とする。ミニプロジェクターでは、一般的的にLEDが使われていることが多い。
ハイブリッド型(LED&レーザー) LEDとレーザー(LD)を組み合わせた技術。カシオが2010年に開発した。赤色に高輝度LED、青色に半導体レーザーを利用し、青色レーザー光を蛍光体に当てて緑色に変換しRGBを作り出している。エントリーから上位クラスまで、製品ラインアップが充実している。
水銀ランプ光源
水銀ランプ 本体コストを抑えながら高輝度を実現できることがメリットである。ただし、ランプの経年劣化が大きく、光源寿命(輝度半減)は2500~5000時間が一般的で、ある程度の輝度を維持するとなると交換サイクルは、さらに早まる。

話題の“手のひら”モデルは半導体光源が実現

 手のひらほどの超小型サイズで話題のピコプロジェクター(またはミニプロジェクター)は、半導体光源により実現されている。
 輝度100lm前後が主流でそれほど明るくはないが、バッテリーやメモリー内蔵、USBメモリー接続対応といったモデルもあり、手に持ったままでも様々な場所やシーンで気軽に使うことが可能だ。
 例えば、分譲マンションの営業で内覧時に資料などの映像を壁に投写して顧客と情報共有する、あるいはモバイルプロジェクターを設置するスペースもない狭い場所での打ち合わせに使うなど、これまで以上に幅広い用途で情報共有・提示が可能となる。

用途を見極めて選択

 とはいえ、どのような用途においても、半導体光源モデルが適しているかといえば、そうではない。イニシャルコストの高さがネックとなっていることが理由である。

 今や、ビジネスプロジェクターは会議での情報共有やプレゼンテーションだけでなく、教育現場やプロモーション(サイネージ&空間演出)など様々な分野で使われている。

 これら用途で、半導体光源モデルのメリットを最大限にいかせる領域が学校の授業やサイネージ&空間演出などの長時間の使用が前提となる使い方、メンテナンスに手間がかかる天吊りや壁掛けといった常設設置だ。

 前述したように、半導体光源モデルの特徴は長寿命。例えば、学校の授業で、50分6コマでプロジェクターを使用すると仮定すると、1日あたり5時間。1カ月間では100時間(5時間×5日間×4週間)となり、水銀ランプの場合は約2年に1度は光源を交換しなければならない。

 実際には、明るく高画質を維持する必要があるため、交換サイクルはさらに短くなる。ランプの購入費はもちろん、天吊りや壁掛け設置されたプロジェクターのランプ交換に要する作業は大きな負担となる。

 こうした用途に半導体光源モデルを選ぶことにより、ランプ交換のコストも手間も不要となる。しかも、削減できるランプ費用やランニングコスト分で、導入時の価格差を十分に吸収できるはずだ。

 また、エントリークラスの半導体光源モデルには、実売7万円前後と値ごろ感が出てきている。水銀ランプ機のエントリー機が実売5万円台と多少の価格差はあるが、高速起動などの使いやすさなどを評価して半導体光源搭載機を選ぶのも一考だろう。

 だが、「プロジェクターは必要だが使う機会が少なく、ランプは交換しない」なら、TCO(購入から廃棄までの総費用)を考えると、水銀ランプ機の方が安い。用途や投写時間、使い方などをシミュレーションした上で、半導体光源モデルと水銀ランプ機を選び分けることが賢い使い方といえる。