消防庁が提言「大規模地震対策セミナー」レポート大規模地震の被害最小化を実現する
「耐震化の推進」と「出火防止対策強化」

 ヤマダ電機法人事業本部では現在、ソリューション提案の一環として「災害対策」に関する各種提案を、セミナーなどを通して行っています。これと歩調を合わせたわけではありませんが、12月13日~15日に東京ビッグサイトで開催された「第2回住宅・都市イノベーション総合展」(主催:リード・エグジビション ジャパン)は非常に興味深い内容でした。

 特に15日の午前に行われた消防庁と警視庁による防災対策と防犯対策の特別講演は、内容的には決して目新しくはありませんでしたが、改めて聞かされると「肝に銘じておかねば」と思わずにはいられないものでした。そこで今週と来週の2週に分けて、その内容をレポートします。まずは消防庁による防災編から。

大規模地震の発生確率は70%

 防災に関しては先日も東京消防庁を訪問し、そのレポートを本メルマガでもお伝えしましたが、その時と同様、今回の特別講演でも最重要テーマは「大規模地震」対策です。表1は今後発生が懸念される主な大規模地震ですが、改めておさらいしましょう。

 まず、最も被害想定が大きいと予測されているのは「南海トラフ地震」です。西日本の太平洋側のほぼ全域に影響を与えることが予想されており、その発生確率は今後30年間で70%。想定被害の最大値は死者約32万人、全壊/焼失棟数約238万棟、そして経済被害は約220兆円と予測されています。

 この被害予測を、記憶に新しい東日本大震災の被害と比較したものが表2です。日本はもとより世界を震撼させた東日本大震災ですが、あれだけの大地震と比較しても、南海トラフ地震の被害想定ははるかに甚大。死者・行方不明者が17倍、全壊棟数が18倍です。これが現実のものとなれば、日本が壊滅的な打撃を被ることは確実でしょう。

 南海トラフほどではないにしても、「首都直下地震」も大きな被害が予想されています。死者は約2.3万人で、全壊/焼失棟数は約61万棟、そして経済被害は約95兆円。何より日本の首都を直撃するのですから、予想数値以上の深刻なダメージは避けられないでしょう。

 どちらにしても起こって欲しくはないわけですが、東京消防庁を取材した際には「起こることが大前提。そのために、備えを万全にしなければならない」と聞かされました。

大規模地震の被害を減少させる二つの施策

 では、具体的に何をするべきなのか–。BCP対策や避難訓練など、さまざまなものがあげられますが、今回の特別講演では効果的な具体策として次の2点があげられました。
 1)耐震化の推進による建物被害の軽減
 2)出火防止対策棟の強化による火災被害の軽減

 まず1)耐震化の推進ですが、現状の耐震化率は全国平均で約79%とのこと。これが90%までアップすれば全壊棟数・死者数は約5割の削減が見込まれ、100%が実現すれば実に約9割の削減が期待できるとのこと。耐震化率100%という数字が現実的かどうかは別としても、建物・家屋のオーナーが耐震に関する意識を高め、そのためにコストをかけるという決断を下し、実行することで、大規模地震の被害が大きく軽減されることは確かなようです。

 同様に出火防止対策の強化についても、感震ブレーカー等の設置による電気出火の防止だけで、焼失棟数は約5割削減でき、これと並行して初期消火成功率の向上等を行うことで、焼失棟数は9割以上の削減が可能だとしています。当然ながら、火災による死者の数も大幅に削減できることになります。

 大規模地震の発生確率が70%と予測されている一方で、こうした効果的かつ現実的な対策が提言されている以上、そのことについての議論をもっと活発化すべきだと考えるのは私だけではないでしょう。例えば2018年から増税ラッシュが始まるわけですが、その使い道として防災をもっとクローズアップするとか…。耐震リフォームの補助金なども用意されてはいますが、それが強力に市場を活発化させているようには思えません。今こそ防災について、その具体策を真剣に考えるタイミングにあるように思います。

 と、こんな偉そうなことを書いておきつつ、今回の講演では防災について「こんな基本的なことも知らなかった」ということを思いしらされました。それは「緊急避難場所と避難所の違い」についてです。恥ずかしながら今日の今日まで、避難場所も避難所も同じだと思っていたのですが、まったく違うということを初めて知りました。

 「避難場所」とは、災害の危険から命を守るために緊急的に避難をする場所であり、「避難所」とは、災害の危険にともない避難をしてきた人が一定期間滞在する施設のこと。それぞれを示すピクトグラムも違います。

避難場所

避難所

 さらに避難場所は地震や津波、洪水、土砂災害などの災害種別毎に指定されており、「対象とする災害に対して安全な構造である堅牢な建築物や、対象とする災害の危険が及ばないエリアのグラウンドや駐車場」などです。考えてみれば当然で、どんなに頑丈な施設でも海岸線の近くでは津波の避難場所にはなりませんし、崖の下の建物では土砂災害のリスクから逃れられないわけです。

 災害の種別毎のピクトグラムも用意されており、その避難場所がどの災害に適しているのかが一目で分かるようになっています。とはいうものの、その意味するところを知らなければ、まったく役に立たないわけであり、消防庁でも「避難場所と避難所が必ずしも明確に区別されておらず、東日本大震災では被害拡大の一因になった」としています。


 ご存知の方にとっては「何を今さら」という内容ですが、私も含めて認識していなかった人にとっては、この機会にぜひとも認識しておくべき基本情報ではないでしょうか。(征矢野毅彦)