知ってトクする「年金講座」基礎の基礎第3章:老後の年金の詳細
老後の年金を夫婦単位で見る(第22回)

 前章では、「2階建て年金」をキーワードとして、老齢、障害、遺族年金までの年金制度の概観を述べてきた。本章では、多くの人にとって老後の生活設計に欠かせない「老齢年金」について、さらに詳しく述べていくこととする。

 ところで、本章のタイトルを「老齢年金の詳細」ではなく、「老後の年金の詳細」としたのは、前章の最後に述べたように、「長期要件」の「遺族厚生年金」も、夫死亡後の妻の年金という面では、夫婦単位で見た場合の「老後の年金」に含まれるからである。特に、「遺族厚生年金」の年金額が比較的大きな額になる「夫がサラリーマン」である夫婦にとっては、「遺族厚生年金」の知識は必須である。

サラリーマン夫婦の年金の基本形

「夫がサラリーマンである夫婦の年金」の時系列的な経過は次のようになる。

 この図表のモデルは、夫が一般的なサラリーマン、妻は年下で多少の会社勤めの経歴があるという夫婦で、概ね平均的な夫婦像と言えると思う。横軸は時系列、年金の厚みは年金額を表している。したがって、妻の老齢厚生年金が薄くなっているのは、厚生年金の年金額が低いことを意味している。

 世代が若くなるにつれて、夫婦共稼ぎの割合が増えてくると思われるが、妻の会社勤め期間が長いほど、妻の老齢厚生年金の「厚み」がもっと厚くなる(年金額が高くなる)と思えば良い。夫の方は、学卒後60歳から65歳ぐらいまで会社勤めをしたというイメージだ。

 図表中の「第1ステージ」「第2ステージ」「第3ステージ」とは、年金制度の正規の用語ではなく、私が年金の説明をするときに、便宜上使用している用語である。

「第1ステージ」とは、夫婦のうち年上の方が年金を受給する期間、図表では夫が年上という前提なので、夫だけが年金を受給する期間となっている。「第2ステージ」は夫婦がともに年金を受給する期間。「第3ステージ」は夫の死後に妻が年金を受給する期間である(夫が先に死亡するという前提)。

 また、ここでは年金支給年齢は夫婦ともに65歳となっているが、世代によっては、65歳前から年金を受給できる。ただし、65歳前の年金は「経過措置」の年金であり、これを受給できる世代は限られている。65歳前の年金については、いずれ解説することにする。

 もちろん、すべての夫婦の年金がこのように推移するわけではない。妻が年上のケースも、妻の方が早死にしてしまうケースもあるだろう。妻の方が老齢厚生年金の額が高いケースも、夫が自営のケースもあると思う。しかし、日本ではおおよそ8割がサラリーマンで、女性の平均寿命は男性より7歳ぐらい高いので、概ねこの基本形に当てはまる夫婦が多数派であるはずだ。

 では、夫婦の年金の基本形について、もう少し詳しく解説していこう。

「加給年金(第1ステージ)」

「第1ステージ」は、年上である夫が先に65歳になり、夫だけが年金を受給する期間だ。この期間では、夫の「老齢厚生年金」に「加給年金」と呼ばれる「家族手当」のような年金が加算される。

 「加給年金」は、18歳未満の子と65歳未満の配偶者を対象に支給される加算年金であって、これが支給されるためには、老齢厚生年金受給者(この図表では夫)の厚生年金加入期間が最低20年以上あることが必要である。一般的なサラリーマンであれば、この条件はほとんどクリアするはずだが、脱サラ等の期間がある人は、最寄りの年金事務所で事前に確認しておいた方が良いだろう。

 「加給年金」は、18歳未満の子と65歳未満の配偶者を対象とするが、その金額は異なる。
子を対象とした「加給年金」の額は、224,300円(2017年度価額)で、この額が「加給年金」の基礎額だ。

 配偶者対象の「加給年金」は、その基礎額に配偶者加算がついて、389,800円(2017年度価額)となっている(厚生年金受給者の生年月日が昭和18年4月2日以降の場合、昭和18年4月1日以前生まれの場合は、段階的に加算額が低くなっている)。「加給年金」は、子が対象の場合は、子が18歳になった年度の年度末、配偶者対象の場合は、配偶者が65歳になった時点で支給が終わる。

 65歳になった人に18歳未満の子がいることは稀だから、ここでは配偶者対象の「加給年金」について述べると、「加給年金」とは、配偶者が65歳になって、自らの「老齢基礎年金」を受給するまでの「‘つなぎ’の年金」という捉え方ができる。

 なお、「加給年金」の対象者である配偶者に年850万円を超える収入がある場合には、「加給年金」は不支給である。配偶者が高所得であれば「家族手当」は不要ということである。また、妻が年上の場合であって、妻の厚生年金加入期間が20年以上ある場合は、妻に「加給年金」が支給される可能性もある。

「第2ステージ」

 「加給年金」は、配偶者が自分の年金を受給するまでの「つなぎ」であるから、配偶者に年金が支給される65歳になるとその支給は終了する。そして、「夫婦の年金」は「第2ステージ」に転換することになるが、この期間は夫婦がともに年金を受給する期間である。

 「第1ステージ」からの夫婦合計の年金額の変化は、「これまでの夫の年金額+妻の年金額-加給年金額」となる。単純に妻が受給する年金の分増えるというわけでないことに留意してほしい。妻の年金は、会社勤め期間(厚生年金加入期間)が1カ月でもあれば「老齢基礎年金+老齢厚生年金」の「2階建て年金」になる。

 妻の「老齢基礎年金」は、「第3号被保険者」という制度があるから、専業主婦であっても、満額の老齢基礎年金の受給が可能だが、妻が「第1号被保険者」(年収が130万円以上あると第3号にはならない)であった期間があれば、滞納という事態もあり得るので、必ずしも満額の老齢基礎年金にはならない可能性は残る。

 また、第3号被保険者という制度ができたとき(1986年度=昭和61年度)にすでに20歳を超えていた女性は、満額にならない可能性がある。なお、満額の「老齢基礎年金」の年金額は、779,300円(2017年度価額)である。

 「老齢厚生年金」は、老齢年金の受給資格があり、1カ月でも厚生年金加入期間があれば、年金額は微々たるものだが受給できる。老齢年金の受給資格期間には、第3号被保険者期間も含まれ、しかも受給資格期間は2017年8月に10年に短縮されたので、老齢年金の受給権がないという事態は考えにくくなり、ほとんど専業主婦だった女性でも、少しでも会社勤め期間(厚生年金加入期間)があれば、年金額の多寡はともかく、「老齢厚生年金」が受給できるのが普通だ。

「第3ステージ」については次回に述べる。

渋谷康雄(しぶや やすお)
社会保険労務士 / 昭和32年生まれ。社会保険労務士。明治大学卒業。平成13年「渋谷社会保険労務士事務所」開業。平成18年「特定社会保険労務士資格」取得。得意分野は公的年金・65歳までの継続雇用制度構築・高齢者賃金設計・就業規則・個別労働関係紛争の相談等(年金、社会保険、労働法に関する分野)等。他に講演やセミナー講師、テレビコメンテーターなどとしても活躍。主な著書に「60歳からの年金・健保・雇用保険・税金の判断基準」(平成25年三訂版、日本法令)、「ケース別サラリーマン夫婦の年金がわかる本」(平成26年、日本法令)がある。
URL: http://yasuo-shibuya.main.jp/