法・制度改正/2018年度税制改正積極投資を行う企業に手厚い減税
年収850万円超の会社員は増税に

2017年12月14日、自民党と公明党は2018年(平成30年)度の与党税制改正大綱を公表しました。全体的な傾向として、これまで報道されていたように、増税基調となっています。ただし、高収入の会社員などを中心に個人に関わる増税が多い一方で、企業や事業者向けでは減税策が充実しそうです。

同大綱は政府案として2018年の通常国会に法案として提出され、審議と可決を経て正式施行となるため、項目の修正や削除、追加などが行われる可能性もあります。

ここでは公表された大綱をベースに、注目しておきたい改正ポイントを速報的にレポート。SHANIMU第62号(2018年2月末発行予定)でも関連記事を掲載する予定なので、合わせて参照してください。

中小企業関連の税制改正

中小企業や個人事業者向けの税制では、この夏に経済産業省が要望事項として提出した「平成30年度税制改正に関する経済産業省要望書」の内容が、ほぼ取り入れられた形となりました。

注目は、「少額減価償却資産の特例」と「交際費課税の特例」の適用期限が2年間延長(2020年3月末日まで)されたこと。少額減価償却資産の特例は税法上の中小企業に限り、「30万円未満の減価償却資産を取得した場合、合計金額300万円を上限に全額の損金算入(即時償却)を認める」制度です。企業規模を問わず、設備投資で活用されている減税制度だけに、多くの企業にとってメリットがあるのではないでしょうか。

800万円までの交際費をすべて損金に算入できる中小企業向け交際費課税の特例は、交際費が取引先との関係継続や拡大、維持を図る上で重要なファクターの1つである事業者にとって大きなメリットといえるでしょう。

この他、法人課税関連では、「所得拡大促進税制の見直し・拡充」「情報連携投資等の促進に係る税制(IoT投資税制)の創設」「中小企業の設備投資支援」といった措置が講じられる方向です。このうち、中小企業の設備投資支援とは固定資産税に関わる制度。一定の要件を満たす設備機器を購入した資産について、固定資産税をゼロから2分の1の範囲で軽減(最初の3年間/課税標準は市町村の条例による)するという内容です。2020年度までの時限措置の予定ですが、固定資産税は赤字企業でも納付義務があるため、負担軽減により設備投資の促進が期待されています。

●2018年度税制改正では、企業向けで減税が目立つ

中小企業の代替わりを後押し

また、70代や80代の中小企業の経営者でも半数以上が事業承継の準備を終えていないなど、経営者の高齢化が進んでいる中小企業の代替わりを支援することを目的に、「事業承継税制」について、各種要件の緩和などをはじめ抜本的に拡充されます(10年間の特例措置)。

現行の制度では、株式の3分の2(納税猶予対象株式の制限)について、80%まで相続税や贈与税の納税が猶予されています。さらに、事業承継後、5年間は平均で8割の雇用を確保しなければならないといった要件があります。

改正税制では、こうした要件を緩和。納税猶予対象株式の制限が撤廃されると共に、納税猶予割合も100%に引き上げられ、雇用確保要件も弾力化される方向です。引き継いだ事業を継続している限りは全額を納税猶予できることとなり、事業継続が困難となったため会社譲渡や解散時した場合でも、納税額の減免制度が導入されます。

高所得者を中心に増税

一方、個人向けの改正税制は新聞紙上などでも話題の通り、高所得者を中心に増税となりそうです。大きく影響する改正が「個人所得課税の見直し」。具体的には、「給与所得控除」と「基礎控除」の改正でしょう。

給与所得控除とは、会社員が仕事に必要とみなされるスーツ代などを、経費として所得課税額の対象から差し引くものです。控除額は収入に応じて増えていきますが、現行制度では「年収1000万円以上で年220万円」が上限。改正税制では、年収に関わらず控除額を10万円引き下げると共に、上限を「年収850万円以上で195万円」に引き下げます。

この点だけを見れば増税ですが、同時に現行で38万円の基礎控除が一律で10万円引き上げられますから、年収850万円以下では増税にはなりません。このラインを超えれば増税になるというわけです。また、基礎控除では、年間所得が2500万円を超える高所得者については同控除が適用されず、ゼロになります。

この他、「たばこ税の見直し(紙巻たばこ/加熱式たばこ共に段階的に増税)」や「国際観光旅客税の創設(日本から出国する観光客などに対して、1度の出国につき1000円を徴収)」、「森林環境税の創設(市町村が個人住民税均等割と併せて年額1000円を徴収)」などの増税が導入される予定です。

これまでも個人向け増税、法人向けは減税という傾向はありましたが、2018年度改正では、それが鮮明となった印象です。とはいえ、法人向け減税制度も積極的に設備投資や賃上げに取り組む企業を優遇するもの。逆に、「業績がよいにも関わらず、内部留保ばかりにこだわると増税になる可能性もある」とのこと。減税制度を有効活用しながら、うまく設備投資を進めたいものです。(長谷川丈一)