警察庁に学ぶ「安心安全なまちづくりセミナー」レポート実践のハードルは決して高くはない!
犯罪のおきにくい地域作り「4原則」

 先週に引き続き12月13日~15日に東京ビッグサイトで開催された「第2回住宅・都市イノベーション総合展」(主催:リード・エグジビション ジャパン)の特別講演レポートです。今回は警察庁による「安全安心なまちづくりの現状と今後の展開」についてです。

 日本の治安の良さが世界トップレベルであることに、異論を差し挟む余地はないでしょう。例えば刑法犯罪認知件数の推移をみると、2002年に記録した戦後最多の285万3000件強をピークに、以後14年連続で減少。2016年は戦後初めて100万件を下回り99万6000件強にとどまったとのこと。この実績はやはり、日本の治安のよさを裏付ける一つのデータであることは確かでしょう。

 ここで余談になりますが、刑法犯罪認知件数の推移グラフをみると1999年頃から2002年にかけて急激に伸びていることが分かります。1997~8年頃までは毎年150万件前後の推移なので、その後の急激な伸びにはいささか違和感を覚えるほど。あの当時、そんなに治安が悪かったのかどうなのか–。個人的にはピンと来ない感じもします。

 2002年までの認知件数急拡大の要因については、専門家の間でもさまざまな議論がなされており、現状では主に「掘り起こし効果説」と「現実の増加説」の二つがあるようです。

 まず「掘り起こし効果説」とは、警察の方針転換によるもの。1999年の桶川ストーカー殺人事件では、警察による被害届の不受理などが問題視されましたが、それを受けて被害届受理の積極化などを行った結果、それまで埋もれていたり見過ごされていた犯罪が掘り起こされ、認知件数が急激にアップしたというものです。

 これに対して「現実の増加説」とは、この時期、実際に犯罪が増加したというもので、その要因は経済環境の悪化や失業率の上昇などの影響とされています。どちらの説が正しいのか、それとも他の理由があるのかについては専門家にお任せするしかありませんが、犯罪件数の戦後最多が、わずか15年前のことというのはちょっとした驚きではないでしょうか。

建物や敷地の防御を強化

 話を本題に戻しますと、今回の特別講演で改めて防犯対策の原則を再認識することができました。図1は「犯罪のおきにくい地域作りの4原則」。ここに書かれていることはどれも、昔からいわれてきているものであり、実践がそれほど難しいものとも思えませんが、同時に、普段見過ごしにしているかもしれないと反省させられることでもありそうです。

図1 犯罪のおきにくい地域づくりの「4原則」(出典:警察庁資料)

 まず①「被害対象の回避・強化」とは、「頑丈な錠や窓ガラス等の使用」や「防犯対策を施した安全な駐車場」など、建物や敷地の防御を強化すること。当たり前ことですが、意外にできていない項目なのかもしれません。特に賃貸物件などの場合、カギやガラスは大家さん任せというケースも少なくないでしょう。それらに不安がある場合には、まずは大家さんと話し合うということが防犯対策の第一歩といえるでしょう。

 また②「接近の制御」については、特に「建物侵入の足場を取り除く」ことが、すぐにでもチェックして、必要なら対策を講ずべき項目といえるでしょう。例えば大きな鉢植えや物入れなどを不用意に放置したままでは、これを足場代わりに使われて容易に侵入を許すということにもなりかねません。その防御は、特にコストもかからないわけですし、ちょっとした対応ですぐに実践可能です。

 ③「監視性の確保」では防犯灯・防犯カメラの設置が推奨されています。これはコストのかかる対策ですが、最近では自治体が設置を積極化するケースが増えているようです。先日もある地方都市へ防犯灯の取材に出向きましたが、その町では地域住民が一体となって自治体に防犯灯の設置を要請したとのこと。こうした動きが全国で活発化すれば、日本の治安はさらにアップすることになるわけです。

 そして④「領域性の強化」とは、住宅の周囲を花で飾ったり、敷地の領域をフェンス等で明確化すること。これなどは何の目新しさもないように感じますが、地方の郊外エリアなどでは、まだまだ実践されていないケースが多いとのこと。確かに敷地が広大な場合などでは、手つかずのままということもあるのでしょう。どう対策するのかについて、まずは専門家に相談することが重要だといえそうです。

 この4原則を見ても分かるように、その施策は決して大がかりなものだけではなく、ちょっとした配慮や考え方などで実践できるものが数多くあります。図2は犯罪者が侵入をあきらめる時間の分布ですが、70%近くの犯罪者は5分以内に侵入できなければあきらめるという結果になっています。その対策をどう実践するかは、それほど難しいことではないように思われます。(征矢野毅彦)

図2 犯罪者が侵入をあきらめる時間(出典:警察庁資料)