10年間メンテナンス不要の空気清浄デバイス開発/三菱電機世界初の摩擦帯電技術による集じん方式を実現
中国でフィールド試験着手、2020年度事業化

2017年12月21日、三菱電機は都内で記者発表会を開催。摩擦帯電方式の新しい空気清浄デバイスの開発を公表しました。同技術は世界初といい、特許も申請しているとのこと。2020年度の事業化を目指すとしています。

●三菱電機の摩擦帯電方式による新空気清浄デバイス(三菱電機の資料より)

約10年間メンテナンスが不要

新しく開発された摩擦帯電方式の空気清浄デバイスの最大の特長は、省メンテナンスであること。大気中のPM2.5、花粉やホコリなどを除去し、世界保健機関の環境基準(PM2.5濃度10µg/㎥以下)を満たす換気を、約10年間メンテナンス不要で継続使用できます。

「ビルや住宅向けなどの換気空調システムでは、空気清浄フィルターの目詰まりが最大の課題。目詰まりが発生すると、換気・空清機能や省エネ性などが低下するため、2年に1度はフィルターを交換しなければならない」と、三菱電機先端技術総合研究所・環境システム技術部長の古川誠司氏。「今回開発した摩擦帯電方式は静電気と自動清掃ブラシによりフィルターが目詰まりするのを防ぐため、メンテナンスは10年に1度で済む」といいます。

空気清浄システムに限ったことではありませんが、機器のメンテナンスの手間や費用はそれなりにかかるものです。「業務向けの空清システムで約10年間もメンテナンスフリーを実現したものはない」(同前)とのことで、実用化されれば利便性の向上に大きな期待が持てるのではないでしょうか。

静電気を利用する摩擦帯電方式

新技術の詳細は他に譲りますが、その概要は下図の通りです。静電気を発生させてプラスやマイナスに帯電したホコリを、逆に帯電させた側に引き寄せるという技術を応用したもの。三菱では、空気清浄システム本体にプラスチック製の捕集板と自動清掃・再帯電部(不織布ブラシ)を搭載。それらの摩擦により静電気を発生させ、プラスに帯電したPM2.5、花粉やホコリなどをマイナスに帯電した捕集板に付着させます。

付着したホコリなどは、不織布ブラシを動かすことで自動清掃されると共に摩擦により再帯電されるという仕組みになっています。集じんされたホコリはダストボックスに集められますが、そのゴミ捨ても10年に一度でよいとのことです。

具体的なデバイスは、上記の摩擦帯電方式集じん(マイナス帯電)部とフィルター部で構成されています。これには以下のような理由があります。

ゴミやホコリなどの粒子の帯電性質は、その大きさに左右されます。比較的大きな粒子ではプラスに帯電しているものが多く、帯電方式により集じんできますが、それ以下の粒子については帯電方式では取りきれないため、フィルターで集じんしようというわけです。

これにより、摩擦帯電方式集じん部の捕集率70%、フィルター部を含めた全体の捕集率90%が実現されています。

●静電気による集じん技術のイメージ(三菱電機の資料より)
●三菱電機の摩擦方式による集じんイメージ(三菱電機の資料より)
●プラスチック製の捕集板(左)と不織布ブラシ(右)

これまでも帯電による集じん技術はあったとのことですが、三菱電機の帯電方式は“摩擦”による帯電が特長です。従来の放電技術による方式は、経時劣化によるフィルターの定期交換が必要で、オゾンなどが発生し火災リスクなどがありました。これに対して、摩擦帯電方式は非放電のため火災リスクは小さく、前述した通り約10年の省メンテナンス性を備えています。

●従来の放電方式と三菱電機の摩擦方式の集じん比較(三菱電機の資料より)

まずは、換気・空調機器の需要が大きい中国で同技術を搭載したシステムによりフィールド試験を開始し、2020年度に事業化。基本的に、業務用システム向けを想定しているとのことですが、いずれは家庭用機器への搭載も視野に入れているとのことです。

家庭用の空気清浄機では、パナソニックの「ナノイー」やシャープの「プラズマクラスター」、日立は自動フィルター掃除機能をいち早く採用するなど、メーカー各社は機能訴求が盛んです。将来的に、ここに三菱電機の新技術が搭載された製品が加われば、さらに市場は賑やかになりそうです。(長谷川丈一)