必読!これがホントの“節税”講座新規創業者のための最適制度
「創業融資」七つのメリット

寄稿:梅川 貢一郎(有限会社トライアングル 代表取締役・税理士・公認会計士)

http://www.umegawa.com/

今、創業融資が熱い!

新規に創業をお考えの方はいらっしゃいませんか?

今、創業融資が熱いです。新たな事業を始めるに当たり、たとえ十分な自己資金があったとしても、超低金利の融資が受けられるのであれば、おいしくありませんか。しかも日本政策金融公庫が扱う「新創業融資」は担保も保証人も不要。

日本の銀行は上場会社以外に融資する場合は、担保はともかく必ず経営者を連帯保証人にするのが習わし。

そのため本来であれば自らの出資金のみに対してリスクを負うべき創業者は、銀行からの借入金にもリスクを負い、事業が失敗したら出資金のみならず銀行からの借入金も経営者自ら将来にわたって返済の義務を負うという悲惨なはめに陥りました。

新しいビジネスを始めるということはリスクの塊です。新設会社の5年以内生存率は20%などという都市伝説まで生まれました。これでは、ただでさえ将来に不安を抱える現代人は、借金してまで新規ビジネスに参入しようという意欲がわきません。

ところが日本政策金融公庫の新創業融資は、借金の連帯保証人という束縛から解放してくれました。

もちろんあってはならないことですが、仮に事業に失敗したとしても、自己資金が無くなるのは仕方なしですが、それ以上の負債は無くなります。サラリーマンに戻れば以前の生活に戻れる安心感は大きいです。今の創業融資は、使い勝手も以前より格段によくなっているのです。

日本経済の将来が必ずしも明るくないのは誰も否定しないでしょう。団塊の世代の経営者が引退し、後継者が見つからずに廃業する会社がとても増えています。反面、新規で開業する起業家が少ない。

日本は典型的な少子高齢化社会だから当然の声もあるでしょう。新規創業する会社の数は、今まさに発展途上にある中国やインド、東南アジア諸国には遠く及ばず、アメリカにもはるかに及ばない状況です。

日本の持続的な成長を政治公約に掲げる安倍総理でなくとも、この現実に危機感を抱くのは当然です。政府の政策目標では現状で4%台の開業率を、他の先進国並みの10%台に引き上げることが目標です。

そこで、急場しのぎというわけではないでしょうが、とりあえず考えられた政策が「お金を出す」です。

政府は、日本の開業率が低い原因を起業家精神の欠如と環境の未整備としています。起業家精神うんぬんは日本独特の「精神論」ですね。
精神力さえあれば「必ず敵に勝てる!」的な議論であり、言い訳感満載です。環境整備は制度論ですからしっかり整備してほしいものです。創業融資はその制度の一環ですが、お金出して開業させてあげたのだから、後は自力で頑張れよで終わっているのは少し残念です。

とはいえ、日本政策金融公庫の資料によれば、安倍政権発足前の2011年まで創業融資の実績額は毎年減り続け1000億円を割る寸前でした。ところが、その翌年より増え続け、なんと2017年の融資実績額は倍の2000億円を超えてしまいました。

もちろん創業融資は「融資」、すなわち「借金」です。決してお金をただで頂けるわけではなく、利息を付けて返済しなければなりません。

しかしちょっとした勇気とアイデアがあれば、お国が準備してくれる「種銭」をもとに、誰でもお気軽にビジネスを立ち上げられるのは素晴らしくありませんか。しかも一応ノーリスクです。

「創業融資」とは!?

一般に創業融資とは、起業する時に必要となる資金を、公的な機関が貸してくれる制度をいいます。

小売業、飲食業、美容室、製造業など業種は何であれ独立開業するときには、多かれ少なかれ開業のためのお金が必要となります。設備の購入が必要となる飲食店や美容室、製造業は、時には数千万円の資金が必要ですし、販売業であれば在庫のための最初の仕入れ資金が必要です。

たとえ初期の開業に必要な資金が手元にあったとしても、ビジネスは営業を開始してすぐに軌道に乗るものではありません。

セールスプロモーションを行い、顧客を開拓した後、徐々に売り上げが発生してきます。その間にも従業員がいれば給与を支払わなくてはなりませんし、家賃やリース料などの固定的な経費がかかり、毎月確実にお金がかかります。

創業には当初想定しない思わぬ出費もあるものです。もちろん自己資金が十分にあれば開業は可能ですが、なかなか十分なお金を自分で準備するのは難しいですし、時間もかかります。

仮に計画した当初の必要なお金を自己資金で賄えたとしても、ビジネスはなかなか自分の思い描いた通りの順調な展開になるとは限りません。できればお金には余裕をもって創業・開業を行いたいものです。

そこでビジネスを新規開業するときに必要なお金を融資してくれるのが創業融資とよばれる融資制度です。

では、創業融資は誰が貸してくれるのか。数は稀ですが、地元の信用金庫や信用組合が地域経済発展のため創業融資をプロパー資金で行っている場合があります。

しかし、創業融資は一般的に信用リスクが高く、貸し倒れになる可能性が大きいため(一説には3分の1ぐらいといいます)、審査は厳しく貸出利息も高めの設定(年利10%以上!)となっています。

メガバンクをはじめほとんどの民間金融機関は、プロパーでの創業融資に対する取り組みは消極的です。やはり創業融資といえば、日本政策金融公庫です。

日本政策金融公庫は100%国が出資する国策の金融機関です。かつては国民生活金融公庫(コッキン)と呼ばれていましたが、平成20年、中小企業金融公庫などと合併され現在の日本政策金融公庫となりました。

日本政策金融公庫の特徴は、一般の民間金融機関では取り扱いが難しいような小規模事業者の小口融資を積極的に行っていることです。政府の政策に基づき創業支援を行っており、創業融資にも積極的。創業融資を申し込む際、最初に訪問したい金融機関です。

日本政策金融公庫では最近、創業融資の相談のみならず、創業に関するアドバイスや相談にも応じています。専門的な講師を招いての定期的な創業セミナーも開催しています。

日本政策金融公庫と並んで利用したいのが、地方自治体がメインとなり運営する自治体制度融資です。

自治体制度融資とは、各自治体がこれから創業しようとする個人事業主や法人の創業資金調達を支援するため、信用保証協会、民間の金融機関と連携して設けている融資の仕組みです。

信用保証協会は、民間の金融機関が融資を行う際に、借り入れを行う個人事業主や法人の「保証人」となってくれる国の公的な機関です。

信用保証協会自体がお金の貸し出しを行うわけではなく、これから創業しようという個人や法人が民間の金融機関から創業融資を受ける際に保証人となり融資が受けやすくなるよう支援してくれます。

自治体制度融資では、信用保証協会が融資の保証人となり、地方自治体が融資の資金を民間金融機関に提供したり、信用保証協会が求める保証料や融資金の金利の一部を負担したりするなどの支援を行います。

このような制度により、民間金融機関が貸し倒れリスクを気にせずに、創業したばかりの個人事業主や法人に対して創業融資を出しやすくしています。

「創業融資」七つのメリット

次に創業融資を活用する七つのメリットについてご紹介しましょう。創業融資の最大のメリットは、資金や実績がない創業者に対して新規に融資を行ってくれることです。

金融機関の通常の事業資金融資では、まず過去3カ年分の決算報告書が求められます。基本的に日本の金融機関は融資の可否を決定するために、過去の実績や担保の有無を重視します。

過去に実績がある人、法人ならばこれからも事業をうまく運営でき、融資したお金も約束通り返済してくれるだろうという理屈です。金融機関は、貸したお金が戻ってくるかどうかの安全性を最も重視します。

しかし、ゼロからスタートする起業家には過去の実績がありません。金融機関としては事業の評価、ひいてはリスクの評価を行うのが困難であり、安全性を重視すれば貸し倒れリスクの高い創業融資には消極的にならざるを得ないのです。

日本政策金融公庫、あるいは信用保証協会でも創業融資に関しては、過去の実績ではなく将来の成長性を評価します。創業計画と人物が評価の対象なので、工夫次第で融資が受けられる可能性が大きいのです。

創業融資は、「創業時」にしか申し込むことができません(日本政策金融公庫は原則開業後7年まで)。しかも開業後に申し込む通常の事業融資に比べると、条件も良く審査も比較的容易な融資制度です。たとえ創業資金に多少の余裕があったとしても、一応借りておく価値はあります。

二つ目のメリットは、創業時の信用が造れることです。

創業時にはほとんどの人は信用度ゼロです。しかし、創業融資が受けられるということは創業計画と起業家本人が評価されたというお墨付きに相当します。これは外部から評価された大きな信用となります。

例えば日本政策金融公庫から創業融資を受けていると、信用保証協会付きの自治体制度融資も審査が通りやすくなります。また、日本政策金融公庫では、最初の融資の審査は厳しめですが、毎月の返済を滞りなく行っていれば、1〜2年後には追加融資が比較的簡単に出ます。返済も「実績」となるわけです。

創業融資は過去の実績がなくとも、将来の事業計画がしっかりしていれば受けられる融資です。創業融資の審査が通るということは、実は創業間もない個人事業主や法人の信用が高まるということでもあるのです。

三つ目のメリットは、事業経験のない経営者には、経営管理のトレーニングになることです。

金融機関からの融資は心理的に負担になるので、なるべくならば借り入れは行いたくないという経営者もいます。しかし、銀行からの借り入れによる「返済のプレッシャー」は経営者のマインドを鍛えてくれます。

親兄弟からの借り入れならば、資金繰りが厳しくなれば当たり前のように快く待ってくれます。しかし金融機関は待ったなしです。当然経営者は返済に滞りがないように将来の経営計画、資金計画を立案しますし、常に資金繰りに注意して経営を厳格に行わざるを得ません。これが数字に強い経営者を育てます。

また、金融機関からお金を借りるためには、自己のビジネスをアピール、プレゼンしなければなりません。もちろん創業計画書を作成しなければなりませんから、その制作過程でビジネスプランがブラッシュアップされますし、自己のビジネスの強み弱みも明確にすることができます。

創業資金を借りて、経営者が自分自身にプレッシャーをかけることは経営力を鍛えることになります。

3000万円まで無担保・無保証人

四つ目のメリットは、最大3000万円まで担保や保証、連帯保証人署名が不要ということです。

金融機関の融資では、融資金額に見合った物的な担保や連帯保証人を必要とされるのが一般的。最近では、連帯保証人は必ずしも第三者である必要がなくなりましたが、それでも法人の場合、代表者は無条件に連帯保証人となるのが常識でした。

ところが、日本政策金融公庫の新創業融資制度では、法人の場合でも代表者を連帯保証人にしなくともよいのです(融資限度額は、3000万円まで。新たに事業を始める場合、あるいは事業開始後で税務申告をまだ2期終えていない方など一定の条件があります)。

新規の創業ビジネスはどうしても一定のリスクがつきものです。自分では完璧と思った創業計画でも、思い通りの成果が出せないのは仕方ありません。そのような場合、従来のビジネスを整理して、次の新しいビジネスに再度チャレンジできる環境が重要です。

ところが、代表者が融資された借入金に対して連帯保証人となっていると、会社を法的に整理すると同時に自らも自己破産するか、あるいはサラリーマンとなって残った残債務を個人で返済していかなくてはなりません。

一方、アメリカでは、新規の起業家がたとえ失敗しても何度でも再チャレンジを行い、ついには成功させてビッグビジネスを築くことも珍しくありません。あのトランプ大統領も、過去に何度か会社を潰して整理・清算しているといいます。

そこで創業融資に関しては、起業家が再チャレンジを行うネックとなる「代表者個人の連帯保証人制度」を止めようというのが、この制度の趣旨です。

起業家は一度失敗したら二度とチャレンジできないのでは、あまりにもリスクが高く創業を目指そうという意欲のある人がいなくなってしまいます。創業者にとっては、メリットが大きく魅力的な制度です。

五つ目のメリットは、融資実行までのスピードが速いことです。通常で申し込みから一カ月以内には融資金が銀行預金口座に振り込まれます。店舗物件の購入資金のように支払いを急ぐ場合には、10日ほどで審査が下りるケースもあります。

通常の民間金融機関が行う事業資金の融資では、新規の場合、申し込みから融資の実行まで2カ月ほどの時間が必要となります。

同じ創業融資であっても、自治体制度融資は銀行での審査手続き、自治体での手続き、そして信用保証協会での審査手続きがありますから、やはり日本政策金融公庫の融資と比べると時間がかかります。申し込みから融資の実行までやはり2カ月ほどを見た方がいいでしょう。

創業時にはすぐに資金が必要になるケースがあります。例えば飲食店向けの、とても立地が素晴らしい物件が市場に出た場合、手付けを払ったとしても、保証金や礼金などの契約金を一番早く払った人が契約できることも珍しくありません。

そもそも創業の場合、素早い事業展開が求められることが多いものです。ところがそのための必要資金が不足していることが多いので、スピーディーに融資を実行してもらえることは大きなメリットとなります。

創業者のための「補助金」?

六つ目のメリットは、自己資金割合の要件が緩いことです。創業融資の場合、自己資本割合の要件が比較的緩くなります。

一般的な事業融資では、事業の遂行に必要な資金の100%を、融資で賄うということはありません。例えば個人が自宅マンションを購入する際も、最低1割程度の自己資金が必要です。自己資金の多さが、経営者の本気度の高さを示すといっても過言ではありません。
創業融資も基本的には同じです。自己資金が0円、すべて100%を金融機関からの融資で賄う事業は、創業者にとってリスクゼロですが、金融機関から見れば創業者の「本気度」を疑ってしまうことになります。
自治体制度融資の場合でも、(各自治体で一律ではありませんが)おおよそ融資金の限度額は、自己資金の2〜3倍程度です。

一方、日本政策金融公庫の新創業融資では、創業時における必要自己資金の額を創業資金総額の10分の1以上と定めています。

創業時にはスピードが求められる場合がほとんどです。せっかくのチャンスがあっても、自己資金を貯めている間にビジネスチャンスが過ぎ去ってしまうかもしれません。

迅速な設備資金や運転資金の調達が、ビジネスプランの実行には不可欠です。日本政策金融公庫の新創業融資は、元手が少なくともアイデアで勝負する起業家にはピッタリの融資制度です。

最後に七つ目のメリットとして、返済期間を長めに設定できることがあげられます。

日本政策金融公庫の創業融資(新創業融資を含む)は、返済期間の最長が、運転資金で7年まで、設備資金で20年までとなります。また、自治体制度融資(東京都)の場合は、返済期間の最長が運転資金で7年、設備資金で10年までです。

民間金融機関の事業資金融資の返済期間は、金融機関ごとにばらつきがありますが、おおむね運転資金は5年まで、設備資金が7〜10年までとなっています。

しかも創業融資の金利は固定なので、将来金利が上昇して利息の負担が増えるリスクもありません。近年のように金利が低い状況では、返済期間を長くすることは、毎月の返済額が少なくなりメリットとなります。

返済期間が長くなると、確かにトータルで支払う借入利息の金額は大きくなります。しかしながら、途中で資金がショートしてしまうリスクや、新しいビジネスチャンスに資金を投資する余裕が無くなります。

返済期間が長く、したがって毎月の返済負担が軽くなるのは創業融資の大きなメリットとなります。

また、日本政策金融公庫には、新創業融資制度の他、女性または35歳未満か55歳以上の起業家を対象とした女性、若者/シニア起業家資金制度があります。

融資限度額や返済期間は通常の新規開業資金制度と同じですが、利息の優遇を受けられます。女性とシニアの活用は安倍政権の目玉の一つでもあるわけです。

また、経営指導の専門家である認定経営革新等支援機関の指導を受けて新規事業の開拓を行う方を対象とした中小企業経営力強化資金制度があります。

税理士や中小企業診断士など中小企業庁の認定を受けた認定経営革新等支援機関が事業計画策定の支援を行う場合に申し込め、最大0.5%の利息優遇を受けられます。融資限度額や返済期間は通常の新規開業資金制度と同様です。

繰り返しになりますが、国の創業融資(日本政策金融公庫と信用保証協会が保証する創業融資)は、創業時にしか受けられません。しかも100%国または自治体の資金です。

しかも原則、担保も保証人も不要。その意味で国の創業融資は、「補助金」に近いものがあります。日本経済を元気にするための創業を促す国策として、私たちの税金を投入して行われているからです。

起業家がこれを利用しない手はありません。新規事業を立ち上げるにあたっては、スピードが大切。時間をお金で買えるのであれば買った方がいい。ビジネスの成長にレバレッジを利かせるためには、やはり借り入れは重要です。