2018年度中小企業関連「税制」ガイド設備投資から賃上げ支援まで、中小企業の経営基盤強化を後押し!

「少額減価償却資産の特例」2年延長
事業承継時の納税負担は事実上ゼロ

2017年12月14日、自民党と公明党による2018年度(平成30年度)の与党税制改正大綱が公表された。

マスメディアで既報の通り、高収入の会社員を中心に増税基調となっているが、中小企業や小規模事業者向けでは設備投資や事業承継関連などの減税策が充実する見通しだ。

なお、本稿は税制改正大綱ベースの解説であり、最終決定や詳細については通達や省令を確認すると共に、具体策は必ず税理士や会計士などに相談してほしい。

2018年度、中小企業や個人事業者向けの主な減税策は表1の通り。経済産業省が提出していた要望書の内容がほぼ取り入れられた改正となっており、継続税制を含めて設備投資関連が充実すると共に、行政が強く推進する事業承継に関わる減税制度が目玉といえる。

以下、改正策を中心に各制度のポイントを見ていくことにしよう。対象者や要件などの制度設計の概要については表2も参照してほしい。

表1 2018年度税制の中小企業・小規模事業者向けの主な制度

設備投資関連減税
少額減価償却資産の特例 延長
固定資産税の特例 創設
中小企業経営強化税制 継続
中小企業投資促進税制 継続
商業・サービス業・農林水産業活性化税制 継続
交際費関連減税
交際費課税の特例 延長
事業承継関連減税
事業承継税制 創設・拡充
所得・研究開発関連減税
所得拡大促進税制 拡充
中小企業技術基盤強化税制(研究開発税制) 継続

※延長:適用期限が到来したが延長措置が講じられたもの/拡充:内容がプラスの方向に変更されたもの
※創設:新しく導入されたもの/継続:前年度以前から適用されており、2018年度も適用可能なもの

■設備投資関連減税

表1で掲げたように、設備投資関連減税には5つの施策がある。このうちメリットが大きい制度は、少額減価償却資産の特例と固定資産税の特例だろう。

まず、少額減価償却資産の特例は設備投資減税の中でも、特に利用率が高い。2018年3月末で期限を迎えることとなっていたが、今回の改正で2年間の延長措置が講じられる。

この特例では、30万円未満の設備を購入して年度内に事業用として使い始めることを要件に、年間で合計300万円まで損金算入できる。新品や中古、すべての減価償却資産が対象となり、PCや複合機、プロジェクターなど幅広く適用が可能だ。

年間を通じて使える制度だが、特に決算直前の節税策に有効といえるだろう。例えば、3月末を決算月とする事業者が3月に25万円の減価償却資産を事業用に購入した場合、本則で損金算入できる費用は、購入価格を耐用年数で割った1年分のうちの1カ月分に過ぎない。だが、特例では全額を損金として計上できるので、大きな節税効果が期待できる。

30万円未満かどうかの判断は消費税の会計方法により異なり、税込経理方式の場合は税込価格で、税抜経理方式ならば税抜価格で判断を行う。例えば、税別28万円の資産を購入した場合は税込価格で30万2400円。税込経理で処理を行う事業者は、特例を適用できなくなるので注意したい。

なお、消費税の免税事業者については税込みの購入価格で、30万円未満かどうかが判断基準だ。

また、「上限300万円まで」とは金額ベースで全額を損金にできるという意味ではない。28万円の機器11台を購入すると合計金額は308万円だが、このうちの300万円を損金にできるわけではないのである。即時償却できるのは10台分の280万円(28万円×10台)で、残りの1台については耐用年数に応じた減価償却により処理しなければならない。

このため、特例を上限金額まで有効に活用するには、決算時に特例を使って即時償却する資産を選択することがポイントだ。

起業したばかりで事業年度が1年以下の事業者は、300万円を12で割り特例を適用する事業年度の月数を乗じた金額が上限。例えば、初年度事業期間が4カ月なら100万円(300÷12×4)となる。

なお、この特例を適用した設備は地方税である償却資産税の対象となる点に留意しておくことが必要だ。

固定資産税の特例は、2018年度改正で新たに創設される制度。中小企業などが一定の要件を満たす設備機器を導入した場合に、その資産について固定資産税をゼロから2分の1の範囲で軽減(最初の3年間/課税標準は市町村の条例による)する制度だ。

2016年度税制で創設された固定資産税の特例を記憶している読者もいるだろうが、今回の減税策は現行制度とは異なるもの(現行制度は新制度の創設に伴い2019年3月に終了)。新施策は、国と市町村が一体となり中小企業の投資を強力に後押しすることを狙いに、思い切った減税措置が講じられている。

適用要件は、大きくは3つ。「市町村計画に基づく投資」「生産性革命を実現する投資」「収益向上に直接つながる投資」であることだ。

新制度では、中小企業を後押しする主体は自治体であり市町村ごとに計画が異なり、軽減率も市町村ごとに違う。この減税を使うには、まず商工会議所などと連携して設備投資計画を作成。それが市町村の計画に合致しなければならない。

さらに、設備投資により、労働生産性が年平均3%以上向上(生産性革命の実現)すること。導入設備は、旧モデル比で生産性が年平均1%以上向上するもの(工業会が認定)で、生産や販売活動に使うもの(収益向上に直接つながる設備)であることが必要だ。

対象資産には最低取得価格や販売開始時期の要件もあるが、これについては表2の概要を参照してほしい。

今改正で創設される固定資産税の特例措置は、集中投資期間(2018年度~2020年度)に限定される。固定資産税は赤字企業でも納付義務があるだけに、同減税策による負担軽減のメリットは大きい。適用を検討するなら、地元自治体の取り組みを確認することが必要だろう。

表2 2018年度税制における中小企業・小規模事業者向けの主な設備投資減税の概要

少額減価償却資産の特例
適用対象者:青色申告を行う中小企業や個人事業者など(従業員1000人超の法人は除く)
減税措置:購入金額30万円未満の減価償却資産を取得した場合に、全額を損金算入(即時償却)できる。上限は合計で年間300万円
対象設備/資産等:すべての減価償却資産(機械装置/器具備品/工具/ソフトウエアなど)
要件:設備の取得後、即時償却を適用する年度内に事業用として使用を開始すること
備考:中古資産も対象。同制度を適用して導入した資産は償却資産税の対象となる
適用期間:2020年3月末
固定資産税の特例
適用対象者:青色申告を行う中小企業や個人事業者 ※導入促進基本計画の同意を受けた市町村(市町村内で地域指定がある場合あり)
減税措置:固定資産税の課税標準を3年間ゼロ~2分の1に軽減(市町村の条例で定める割合)
対象設備/資産等:生産性向上の指標が旧モデル比で年平均1%以上向上する設備
要件:●市町村の計画に基づく投資 ●労働生産性年平均3%以上 ●価額要件と販売開始時期:機械装置(160万円以上・10年以内)/測定工具・検査工具(30万円以上・5年以内)/器具備品(30万円以上・6年以内)/建物付属設備(60万円以上・14年以内※家屋と一体となって効用を果たすものを除く)
備考:●生産・販売活動などに直接使うものであり、単純更新やバックヤードの設備などは対象外 ●中古資産でないこと
適用期間:2020年3月末
中小企業経営強化税制
適用対象者:青色申告を行う中小企業や個人事業者など
減税措置:要件を満たす対象設備を導入した場合に、全額の損金算入(即時償却)か税額控除(7%または10%)を選択適用できる(税額控除10%は資本金3000万円以下、または個人事業主)
対象設備/資産等:●生産性向上設備:機械装置/測定工具や検査工具/器具・備品(試験・測定機器、冷凍陳列棚など)/建物付属設備(LED照明、空調など)/ソフトウエア(情報の収集・分析・指示機能) ●収益力強化設備:機械装置/工具/器具・備品/建物付属設備/構築物/ソフトウエア
要件:●「中小企業等経営強化法」の認定取得 ●生産性向上設備は「生産性が旧モデル比で年平均1%改善する設備」、収益力強化設備は「投資収益率で年平均5%以上を実現する投資計画に関わる設備」 ●価額要件は、機械装置160万円以上/測定工具・検査工具30万円以上/器具・備品30万円以上/建物付属設備60万円以上/ソフトウエア70万円以上
備考:●設備要件の確認は、工業会等(生産性向上設備)と経済産業局(収益力強化設備)が行う ●当該業種の生産に関わる設備が対象で、バックヤード等の設備は除外される(最終的な判断は税務署による)
適用期間:2019年3月末
中小企業投資促進税制
適用対象者:青色申告を行う中小企業や個人事業者など
減税措置:一定規模の設備投資を行った場合に、特別償却30%か税額控除7%を選択適用できる(税額控除は資本金3000万円以下、または個人事業主のみ)
対象設備/資産等:すべての機械装置/測定工具・検査工具/一定のソフトウエア(複写販売するための原本、開発研究用ソフトウエアなどは対象外)/貨物自動車/内航船舶
要件:機械装置:160万円以上/測定工具・検査工具:1台120万円以上、1台30万円以上かつ複数合計120万円以上/一定のソフトウエア:1つのソフトウエアが70万円以上、複数合計70万円以上/貨物自動車:車両総重量3.5t以上/内航船舶:取得価格の75%
備考:器具・備品は対象外
適用期間:2019年3月末
商業・サービス業・農林水産業活性化税制
適用対象者:青色申告を行う中小企業や個人事業者など。対象業種は、商業/サービス業/農林水産業(*1)
減税措置:経営を改善する設備を取得した場合に、特別償却30%か税額控除7%を選択適用できる(税額控除7%は資本金3000万円以下、または個人事業主のみ)
対象設備/資産等:耐用年数表上の建物付属設備(照明/冷暖設備/給排水設備/トイレなど)と器具・備品(椅子や什器など)のすべて
要件:●専門機関にアドバイスを受けて、その証明書に記載された設備であること ●建物付属設備:1台60万円以上/器具・備品:1台または1基30万円以上
備考:●アドバイス機関は、認定経営革新等支援機関(税理士など)や商工会議所など ●主業である必要はない ●確定申告時にアドバイスを受けた証明書類を提出
適用期間:2019年3月末
中小企業技術基盤強化税制(研究開発税制)
適用対象者:青色申告を行う中小企業や個人事業者など
減税措置:試験研究費総額の12%~17%(総額型/12%超の部分は上乗せ措置)、特別試験研究費の20%または30%(オープンイノベーション型)、高水準型の合計額を税額控除できる
対象設備/資産等:●製品の製造、技術の改良や考案、発明に関係する試験研究費(原材料費/人件費/経費/外部委託研究費/中小企業等からの知財権使用料など) ●IoTやビッグデータ、AIなどの第4次産業革命型サービスの開発に関わる費用
要件:●総額型:試験研究費がある場合に適用可能 ●オープンイノベーション型:大学や試験研究機関、企業との共同研究や委託研究に関連した費用(特別試験研究費)がある場合に適用可能 ●高水準型:試験研究費が平均売上金額の10%を上回る場合に適用可能
備考:●総額型の上乗せ措置と高水準型は、いずれかを選択適用 ●総額型の控除上限は法人税額の25%で、試験研究費の増加率が5%を超える場合は10%の上乗せ措置により最大35%。オープンイノベーション型の控除上限は法人税額の5%、高水準型は同10% ●トータルの税額控除上限は、合計で最大40%まで
適用期間:上乗せ措置は2019年3月末

※中小企業とは税法上の区分で、資本金が1億円以下の法人 ※設備投資減税では、①リースはファイナンスリースのみ対象(所有権移転外リースは税額控除のみ)でオペレーティングリースは適用外、②中古品は基本的に対象外、③取得設備は減税制度を利用したい当該年度内に使用を開始すること (*1)指定事業の規定、および公序良俗に反するものなど一部除外業種あり

継続税制も充実

この他、設備投資関連の減税策としては、継続税制の中小企業経営強化税制や中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制がある(いずれも概要は表2参照)。

中小企業強化税制は前述の固定資産税の特例と制度設計が似ていることに加え、前者は国税、後者は地方税であるため同時適用できる。計画的に活用することにより、大きな減税効果が期待できそうだ。

また、中小企業投資促進税制は全業種を対象とした税制だが、製造業や建設業など向けの色合いが濃い。これに対して、商業・サービス業・農林水産業活性化税制は小売や飲食店などの個人店舗や小規模事業者などに適した減税制度といえる。いずれも、根拠法の認定が不要で適用要件も緩やかな点で、固定資産税の特例や中小企業経営強化税制より使いやすい。

減税効果の大きい固定資産税の特例と中小企業経営強化税制の併用を検討し、ハードルの高さを感じるなら中小企業投資促進税制や商業・サービス業・農林水産業活性化税制の適用を考えるとよいだろう。

■交際費関連減税

円滑な事業活動に不可欠といわれる交際費については、交際費課税の特例が中小企業向けに2年間延長される予定だ。

単純延長なので、「税法上の中小企業は定額控除限度額800万円までの交際費をすべて損金に算入できる」という基本的な措置内容は従来と変わらない。2014年度創設の「支出飲食費の50%を損金算入(上限なし)できる」制度も継続されるので、いずれかを選択して適用できる。

とはいえ、よほど交際費を使う慣例がある業種でなければ、基本的には前者で十分に減税効果を享受することが可能だろう。

また、社外関係者との1人あたり5000円以下の飲食費を交際費とは別に損金処理することが、この特例を最大限に活用するポイントとなる。

■事業承継関連減税

中小企業の代替わりが進んでいない現状を背景に、行政が次世代経営者への事業引継ぎを支援することを目的に創設・拡充される制度が事業承継税制だ。

この減税策は、株式の贈与と相続に関連した現行の「贈与税・相続税の納税猶予」制度を拡充するもの(拡充内容は図1参照)。現行制度では、納税猶予となる株式数(3分の2まで)や税の猶予割合(80%)に上限が設けられている。

このため、納税猶予といっても実際に猶予されるのは相続株式の53%(3分の2×80%)ほど。事業承継税制では、これらの制限が撤廃されることとなり、事実上、事業を承継した際の税負担はゼロとなる。

さらに、税制適用後のリスク軽減策も盛り込まれる方向だ。「税制適用後は5年間で8割以上の雇用維持」という現行要件が弾力化されるため、引き継いだ事業を継続している限りは全額を納税猶予できる。事業継続が困難となり会社を譲渡や解散した場合でも、納税額の減免制度が導入される見通しだ。

また、現行制度では先代経営者から後継者へというマンツーマンの相続・贈与のみが猶予対象だが、事業承継税制では「親族外を含む複数の株主から後継者(最大3人)への承継」も減税対象になるという。

事業承継税制の適用には、同制度の施行から5年以内に承継計画を提出した上で、実際の承継を10年以内に行うことが要件だ。

なお、事業承継に関連して、相続時精算課税制度の適用範囲拡大(贈与者の子や孫でない場合も適用可能/事業承継税制の適用を受けることが要件)や、M&Aによる事業承継を支援する制度(登録免許税・不動産取得税の軽減)も導入される予定である。

図1 次世代経営者への引き継ぎを支援する税制(事業承継税制)の創設・拡充

■所得・研究開発関連減税

2018年度改正では、中小企業の賃上げ支援強化を目的に所得拡大促進税制が拡充される。支援内容が深掘りされ、「国内に勤務する従業員の給与などを増加させると、増加額の15%を税額控除できる」ようになる。

現行制度は支給総額を比較する基準年が設けられているなど、適用要件が複雑で規模の小さい企業には使いにくかった。拡充策では、「給与等支給総額が前年以上」と「平均給与等支給額が前年比で1.5%以上増加(算出方法も簡素化)」の2要件を満たせばよい。

さらに、平均給与等支給額が前年比で2.5%以上増加している場合、「教育訓練費が対前年比10%以上」「中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定取得」の2つを要件に、上乗せ措置として税額控除25%を適用することが可能だ(図2)。

基本給だけでなく、ボーナスや残業手当、アルバイトやパートの給与も含まれるので、経営状況を考えながら柔軟に調整することがポイント。成長への原動力となるのは社員の意欲であり、それを引き出す戦略の1つが賃上げといえるだけに、うまく使いたい。

また、2017年度税制で拡充・延長された研究開発税制は、2018年度も継続税制として活用が可能。モノ作り型の研究開発に加えて、IoT(モノのインターネット)やビッグデータ、AIなどを活用した新サービスの開発に要する試験研究費も対象となるだけに、新ビジネスの創出に取り組む事業者はチェックしておきたい制度といえる。
図2 所得拡大促進税制の拡充