“大増税”を前に知っておきたい!!サラリーマンのための
「源泉徴収票」の読み方


2017年度税制改正の「配偶者控除の見直し」や2018年度税制改正における「所得税の見直し」など、会社員の給与課税に影響する改正が相次ぐ。


自分は増税になるのか、変わらないのか──それを知る手掛かりが、毎年末から年明けにかけて受け取る給与所得の源泉徴収票だ。

だが、その読み方を知っているだろうか。見方を覚えることで税金への理解も深まる。そこで、今号は源泉徴収票の読み方の基礎を解説しよう。

給与所得の源泉徴収票には、1月1日から12月31日までの1年間に支払われた金額や源泉徴収額の他、年末調整が行われている場合には社会・生命保険料の金額や扶養親族数などが記載されている。

つまり、源泉徴収票から、「1年間にどのくらいの金額を稼いだか」「納めた税金額は」「税金算出の根拠は」といった情報が読み取れるわけだ。

さまざまな情報が記載された源泉徴収票だが、税金を理解する上で覚えておきたい部分を抜粋したのが図1である。特に、①から④は所得税額を算出する根拠となるポイントだ。以下、順を追って見ていくことにするが、手元に自分の源泉徴収票を用意すると分かりやすい。

図1 源泉徴収税額(所得税)の算出イメージ

※源泉徴収票の必要部分を抜粋、編集部にて作成。実際のものとは異なる場合がある

支払金額とは“年収”のこと

まず、所得税(源泉徴収税額)の算出イメージを確認したい。これを計算式として表したものが図2だ。源泉徴収票の流れに従えば、3段階の計算により算出できる。

計算の大元になるのが、①支払金額だ。いわば“年収”のことで、保険料や税金が差し引かれる前の金額である。給与だけでなく、住宅手当や残業手当など課税対象額もここに含まれるが、月10万円以下の通勤費といった非課税の金額は入らない。

また、年内に転職をした場合、以前の会社での収入が合算された金額となる(前職の源泉徴収票を現会社に提出した場合)。

2018年度税制改正で、「年収850万円超の会社員は増税」との見出しがメディアを飾った。その目安となるのが支払金額だ。これが850万円を超えている場合、2020年1月から増税になる。その理由は後述する。

次に、②給与所得控除後の金額(給与所得)を理解するには、「給与所得控除」の知識が欠かせない。この給与所得控除とは、会社員にとっての必要経費に相当するもの。

自営業者などは、事業に要した費用を経費として売上から差し引くことができるが、会社員にも同じように必要経費を認めて、収入から経費として控除できる仕組みである。とはいえ、会社員にとっての経費を具体的に管理するのは面倒なため、収入(支払金額)に合わせて表1のように金額を算出する。

例えば、年収700万円の場合、給与所得控除は190万円(700万円×10%+120万円)。給与所得控除後の金額は、収入(支払金額)から給与所得控除を引いた額なので、510万円(700万円-190万円)の記載となるわけだ。

なお、厳密には、支払金額が660万円未満では、別表で給与所得控除後の金額として直接計算される。一部の計算式を表2として掲載したので、参考にしてほしい。

図2 源泉徴収税額(所得税)の算出イメージ

表1 給与所得控除額の計算方法(2017年分)

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%
65万円に満たない場合には65万円
180万円超 360万円以下 収入金額×30% + 18万円
360万円超 660万円以下 収入金額×20% + 54万円
660万円超 1000万円以下 収入金額×10% + 120万円
1000万円超 220万円(上限)

※収入金額が660万円未満の場合、「所得税法別表第5」により給与所得の金額を計算する

表2 収入金額660万円未満の場合の給与所得計算(一部抜粋)

収入(支払金額) 給与所得の金額
162万8000円超 180万円未満 (収入金額÷4)× 2.4円
180万円超 360万円未満 (収入金額÷4)× 2.8 − 18万円
360万円超 660万円未満 (収入金額÷4)× 3.2 − 54万円

※1 162万8000円未満は割愛 ※2(収入金額÷4)については、1000円未満の端数切捨て

所得控除とは

ここまで、「収入(支払金額)―給与所得控除=給与所得」であることは理解できただろう。給与所得から、さらに差し引くことのできる「所得控除」の合計額を記載したものが、③所得控除の額の合計額だ。

所得控除できる項目として15種類が規定されているが、年末調整で計算されるのは主に保険料や人的控除など。認知度が高い医療費控除などは年末調整では処理されないので、自分で確定申告を行う。

所得控除として差し引くことのできる保険料は、健康保険・厚生年金があり、年間合計額が図1の「社会保険料等の金額」欄に記載されている。加えて、生命保険料や地震保険料を払っており、保険会社から送られた「保険料控除申告書」を会社に提出していれば、それぞれ「生命保険料の控除額」「地震保険料の控除額」として記載されているはずだ。

さらに、ローンを利用して新築住宅の購入や増改築などに伴う特別控除を受けている場合は、「住宅借入金等特別控除の額」に差し引ける金額が記載される。

だが、これらの金額をすべて加算しても源泉徴収票の「所得控除の額の合計額」とは一致しない。この合計額には源泉徴収票には載っていない人的控除としての額が含まれているからだ。人的控除とは、基礎控除(すべての納税者が一律に収入から差し引ける所得控除)や配偶者控除、配偶者を除く扶養控除(子供や親を養っている場合に収入から差し引ける所得控除)などをいう。

これらの控除情報は、図1の2段目から読み取れる。この例でいうと、配偶者と扶養親族が2人いることが分かる。だが、控除額までは記載されていない。具体的な金額については、知識として覚えておくことが必要。年齢や同居、障害の有無などにより金額が変わる場合もあるが、基本的な控除額を表3にまとめた。

これに従えば、図1の例では基礎控除38万円/配偶者控除38万円/特定扶養親族(特定)63万円/一般扶養親族38万円となる。なお、16歳未満の扶養親族は所得控除では対象外だ。ただし、住民税に関係するため、情報として人数が掲載されている。

前述の保険料控除と合算した合計額は279万円となり、その金額が所得控除の額の合計額として記載されているわけだ。

表3 主な人的控除で控除される金額

区分 金額
基礎控除 38万円
収入103万円以下の配偶者 38万円
収入103万円~141万円未満の配偶者 3万円~38万円
配偶者を除く一般の扶養親族 38万円
特定扶養親族(19歳~23歳) 63万円
70歳以上の同居親族 58万円
70歳以上の同居していない親族 48万円

配偶者控除の改正適用開始

ところで、この所得控除について確認したいのが「配偶者控除」。これが2017年度税制改正で見直され、2018年1月から適用されている。従来の制度では、配偶者の年収103万円以下で満額38万円を控除。この年収を超える場合は、「配偶者特別控除」として103万円~141万円の間で段階的に控除(38万円~3万円)を受けることができ、141万円超で控除がなくなる仕組みだった。

改正後、年収上限は150万円以下に引き上げられ、この金額までは38万円の控除が可能だ。それ以上はこれまでと同じように年収に応じて段階的に控除額は引き下げられ、201万円を超えると適用外となる。

基本的には減税だが、配偶者控除を受ける納税者に収入制限が設けられた。年収1120万円を超えると3段階で控除額が減り、同1220万円で配偶者控除を受けられなくなる。高所得者には増税といえるだろう。

源泉徴収税額を計算

ここまでくれば、税額の計算は難しくない。源泉徴収票で年間の所得税に相当する④源泉徴収税額の算出方法を詳しく見ていきたい。

源泉徴収税額は、「課税所得」に「税率」をかけて算出する。課税所得の計算は、前述の給与所得(②給与所得控除後の金額)から③所得控除の額の合計額を引けばよい。図1の例で計算すると、課税所得は231万円(510万円―279万円)となる。後は、これに税率をかけるわけだ。

日本の税率方式は「超過累進課税方式」といい、税率5%から始まって課税所得金額が増えるに従い、超過部分の税率が高くなる(最高40%)。これを計算するために用いられるのが表4だ。先の例を当てはめると、231万円は「195万円超330万円以下(10%)」に相当。税額は13万3500円(231万円×0.1-9万7500円)となる。

だが、これで終わりではない。2013年1月から復興特別所得税が所得税に上乗せされている。その税率は2.1%で、復興特別所得税も加味した税額の算出には税額13万3500円に102.1%をかければよい。その金額は、13万6300円(100円未満切捨)。これが最終的な源泉徴収税額として記載されている。

この源泉徴収税額を所得税として納めるわけだが、実際には毎月の給与から源泉徴収税額は天引きされて徴収されている。その合計額が、④より多ければ還付され、少なければ追加の支払いが必要となる。

表4 所得税額の計算方法

課税所得の金額(税率) 計算式
195万円以下 (5%) 課税所得 × 0.05
195万円超 330万円以下 (10%) 課税所得 × 0.1 − 9万7500円
330万円超 695万円以下 (20%) 課税所得 × 0.2 − 42万7500円
695万円超 900万円以下 (23%) 課税所得 × 0.23 − 63万6000円
900万円超 1800万円以下 (33%) 課税所得 × 0.33 − 153万6000円
1800万円超 (40%) 課税所得 × 0.4 − 279万6000円

850万円が増税ラインの理由

以上が、源泉徴収票から所得税額を計算する流れだ。ここで、前述した2018年度税制改正の「年収(①支払金額)850万円超の会社員は増税」のトピックに触れておきたい。

所得税の見直しで改正が予定されているのは、「給与所得控除」と「基礎控除」である。

具体的には、給与所得控除の最低ラインが現行の65万円(表1参照)から55万円に引き下げられる。このため収入から差し引ける給与所得控除が減少。年収850万円では現行の205万円から195万円となる。

さらに、「収入1000万円で給与所得控除220万円が上限」とされている現行制度に対して、改正後には「収入850万円で給与所得控除195万円が上限」へと変更される。つまり、850万円で給与所得控除は頭打ちとなり、それ以上は年収が増えても控除額は同じ。課税所得が増えることとなり、増税となるわけだ。

その一方で、基礎控除が改正により10万円引き上げられる(所得控除額の増加)。年収850万円までなら、給与所得控除の減額分と相殺されるため、従来と税額は変わらない。これが、増税ラインが年収850万円といわれる理由である。

所得税の増税は、単に所得税だけが増えるわけではない。給与所得の源泉徴収票は会社員だけでなく、各市町村に提出され、それを元に地方税が計算されるため住民税などにも影響する。基本的には所得税が増えれば、住民税も増えることになる。

給与所得の源泉徴収票は、サラリーマンの収入や税額の根拠を示した重要な書類だ。大事に保管しておくと共に、積極的に関心を持つことで税金への理解を深めてはいかがだろうか。