知ってトクする「年金講座」基礎の基礎第3章:老後の年金の詳細⑤ 
「第3ステージ」対策(第26回)

 前回は、一方または双方がサラリーマンである夫婦にとっての「第3ステージ」の重要性について述べた。今回は、「第3ステージ」対策について考えてみよう。

夫は「老齢厚生年金」、妻は「老齢基礎年金」

 一方または双方がサラリーマンの夫婦であって、かつ夫の「老齢厚生年金」が妻の「老齢厚生年金」より高い夫婦の場合、「第3ステージ」の年金額を決定づけるのは夫の「老齢厚生年金」だ。つまり、夫の「老齢厚生年金」が高ければ、夫の死後に妻が受給する「遺族厚生年金」も高くなるということだ。

 妻の場合、自分の「老齢厚生年金」は建前上終身年金だが、「遺族厚生年金」とは相殺の関係にあるため、実質的には夫が健在である間の有期年金に等しい。しかし、妻にとって「老齢基礎年金」は文字通り終身年金であって、一生ものである。したがって、「第3ステージ」対策は、夫は「老齢厚生年金」を増やし、妻は「老齢基礎年金」を増やすことが肝要だ。

 対して、妻の「老齢厚生年金」が夫と同等か、また高いような「共稼ぎ夫婦」、夫が自営業で妻が会社員という夫婦の妻にとっては、「老齢厚生年金」も「老齢基礎年金」も同等といえる。自分の年金のトータル金額を増やすことに留意すべきである。

 しかし、どうすれば「老齢厚生年金」や「老齢基礎年金」を増やすことができるだろうか? ここで、年金の増やし方をもう一度整理しておこう。

「老齢厚生年金」の増やし方

 厚生年金加入者の年金はいわゆる「2階建て年金」で、1階部分の「老齢基礎年金」の上に2階部分の「老齢厚生年金」が乗る形になる。つまり、厚生年金加入期間は「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」がダブルで増えることになっているが、「老齢基礎年金」の算定期間は、厚生年金加入期間の内の20歳から60歳までの40年に限定される。20歳前と60歳後の厚生年金加入期間は「老齢基礎年金」の年金額にカウントされない。

 「老齢厚生年金」に限っていえば、厚生年金加入期間が長くなるほど増えることになる。厚生年金の上限年齢は70歳である。

 「老齢厚生年金」は「報酬比例年金」であって、その算定方法は、「報酬比例の月単価」×「加入月数」となる。したがって、加入期間が同じなら給与や賞与(社会保険上の報酬)が高いほど年金額は高くなる。しかし、給与や賞与は、会社次第という面があり、個人の意思ではどうにもならないことも多い。やはり、なるべく長く働く(社会保険の適用基準を満たす働き方をする)ことが「老齢厚生年金」を増やす方法となる。

「老齢基礎年金」の増やし方

 「老齢基礎年金」の年金額算定期間は、20歳から60歳までの40年間であり、その期間の内、先に述べた厚生年金加入期間(第2号被保険者期間)と、「第3号被保険者」期間、「第1号被保険者期間」の内国民年金の保険料を支払った期間が年金額に反映される。「老齢基礎年金」には、満額という上限があり、平成29年度価額は779,300円(平成30年度も同額)となっている。したがって、まずは「老齢基礎年金」を満額にすることを考えたい。

 「老齢基礎年金」の満額は、国民年金に40年(480月)、しかも20歳から60歳までの40年間に限定されているから、その間にもし滞納があれば満額にはならない。滞納は、保険料納付義務を負う「第1号被保険者」だけのことだから、まずは「第1号被保険者」になったときに滞納をしないよう心掛けたいところだ。

 自営業者でなくとも、例えば、普通のサラリーマン人生を送っていた人でも転職時にブランクがあれば「第1号被保険者」になり得るし、会社員の妻で「第3号被保険者」だった人が、収入が高くなって(年収130万円水準以上)「第1号被保険者」になることもある。満額の「老齢基礎年金」を受給したければ、そういうときに保険料をきちんと支払っておくことだ。

 学生の間は20歳以上であっても国民年金加入義務がない時代があった。そうすると、学生だった期間のうち20歳以上の期間は、年金加入者ではないのだから滞納ということにはならないが、年金的には空白の期間となり、「老齢基礎年金」の年金額には含まれない。

 20歳になれば、学生であっても国民年金加入義務が生じることとなったのは、平成3年度からである。したがって、平成2年度までに20歳になり、かつその時点で学生だった人は、法的な年金加入義務を果たし、仮に滞納が1カ月もなかったとしても満額の「老齢基礎年金」は受給できない。世代でいうと、昭和46年4月1日以前生まれの世代だ。

 また、「第1号被保険者」には、保険料免除制度や保険料納付猶予制度がある。前者は、保険料を納付しなくても一部が「老齢基礎年金」の計算に含まれるが、後者は猶予されたまま後日保険料を追納しなければ、「老齢基礎年金」の計算に含まれない。

国民年金の「任意加入」

 いずれにしろ、60歳時点で国民年金の加入期間が40年(480月)に満たないため、満額の「老齢基礎年金」を受けられない人はかなりいると思われるが、そういう人の場合、60歳から65歳までの期間、国民年金に任意で加入できるという制度(国民年金の「任意加入」制度)がある。60歳から65歳までは5年間(60月)あるので、60歳時点で満額に不足する期間が60月分以内であれば、60歳以後に満額にするためのチャンスがあるということである。

 なお、当然だが、国民年金の保険料を支払わなければならない。それまで「第3号被保険者」だった人にとっては、今まで保険料を支払わなくても良かったから、保険料の支払いについて多少抵抗感はあるかもしれない。

「繰下げ」

 現在の公的年金制度の年金支給開始年齢は65歳だが、年金受給時期を遅らせることにより年金が増額されるという制度がある。これを「繰下げ」という。「繰下げ」の逆の制度に「繰上げ」という制度もあるが、こちらは本来の支給開始年齢より早く年金を受給することができる反面、年金額は割り引きされてしまう。

 「老齢基礎年金」を増やす方法をまとめると、①滞納をしない(第1号被保険者のとき)、②60歳から65歳まで「任意加入」をする(60歳時点で40年の加入期間がない場合)、③繰下げをする、の三つの方法があるということだ。

渋谷康雄(しぶや やすお)
社会保険労務士 / 昭和32年生まれ。社会保険労務士。明治大学卒業。平成13年「渋谷社会保険労務士事務所」開業。平成18年「特定社会保険労務士資格」取得。得意分野は公的年金・65歳までの継続雇用制度構築・高齢者賃金設計・就業規則・個別労働関係紛争の相談等(年金、社会保険、労働法に関する分野)等。他に講演やセミナー講師、テレビコメンテーターなどとしても活躍。主な著書に「60歳からの年金・健保・雇用保険・税金の判断基準」(平成25年三訂版、日本法令)、「ケース別サラリーマン夫婦の年金がわかる本」(平成26年、日本法令)がある。
URL: http://yasuo-shibuya.main.jp/