知ってトクする「年金講座」基礎の基礎第3章:老後の年金の詳細⑥
国民年金の「任意加入」(第27回)

 前回、「老齢基礎年金」を増やす方法として、国民年金の「任意加入」と「繰下げ」という制度を紹介したが、今回は「任意加入」について、もう少し詳しく説明しよう。

国民年金に任意加入できる人、できない人

 年金制度は原則的には強制加入の制度である。会社に就職したときに、給与明細を見て社会保険料がやたらと高いと驚いた経験がある人は多いだろう。しかし、だからといって、厚生年金から脱退できるかというと、それはできない。「強制加入」ということは、法律で定められた要件を満たす以上は、本人の意思にかかわらず加入しなければならないということである。

 それに対して「任意加入」とは、文字通り本人の自由意思により加入できるということであって、加入義務はない。したがって、任意加入できる人とは、年金加入義務がない人に限定される。

 国民年金の「第1号被保険者」と「第3号被保険者」の加入義務は20歳から60歳までである。つまり、60歳以降は加入義務がない、言い換えれば、年金制度上フリーの立場だ。フリーの立場だから、「任意」に加入できるのである。

 これに対して厚生年金の適用上限年齢は70歳だから、会社員は60歳を過ぎても会社勤めをしていれば、「第2号被保険者」として強制加入の立場だ。したがって、60歳以降も会社員であれば、国民年金に任意加入はできない。つまり、60歳以降も会社勤めをする人(厚生年金に適用されないパート等に転換する人は別)にとっては、「老齢基礎年金」を増やすために国民年金に任意加入するという方策は取れないことになる。

任意加入の期間

 「任意加入」の対象期間は、60歳から65歳までの5年間だが、「老齢基礎年金」の満額に必要な加入期間40年(480月)に達した場合には、65歳前でも加入はできなくなる。また、「任意加入」には、保険料の滞納という概念がなく、もし保険料を納付期限までに支払わなかった場合は、そこで脱退させられる。あくまでも「任意=自由」だから、「自分から加入するといったのに保険料を払わないとは何事か」ということだ。

 まとめると、「任意加入」の期間とは、①60歳から65歳までの5年間の内、②保険料を滞納なく納付し、③加入期間が480月に達するまでの間、ということになる。

保険料の価値

 60歳以降、国民年金に任意加入するとなると、保険料の納付が義務付けられることになるが、国民年金の保険料は平成30年度で月額1万6340円、年間約20万円の負担になる。決して軽い負担ではない。特に今まで保険料納付義務がなかった「第3号被保険者」だった人には、高く感じられるだろう。しかし、女性の平均寿命を考えれば割は良い。

 「老齢基礎年金」は40年(480月)加入で、満額の約78万円(平成29年度価額:779,300円)が受給できる。78万円を480月で割れば約1600円で、これが「老齢基礎年金」の月単価になる。したがって、1万6340円÷1600円で、約10回と少し受給できれば「元が取れる」計算になる。

 老齢年金は終身年金だから、生きるということは、その間年金を受給できるということである。年金支給開始年齢の65歳以降10回年金を受給するということは、65歳以降10年生きるということだ。女性の平均寿命は、およそ81歳だから、平均的には65歳以降16年間年金を受給できることになる。つまり、平均的に生きることができれば、支払った保険料の「元を取って」余りあるということになる。

 さらにいえば、任意加入を選択する年齢は60歳以降で、60歳まで生きた女性の平均余命は、約28年で、60歳+28年だから、統計上は88歳ぐらいまで生きる可能性が高いことになる。88歳まで生きれば、65歳から23年「老齢基礎年金」を受給できる。10年ちょっと受給すれば保険料の「元が取れる」のだから、23年前後受給できるとしたら、支払った保険料に対するリターン(年金給付)は倍以上ということになる。

 こう考えれば、「任意加入」は、特に女性にとって非常に割が良いといえるだろう。

「付加年金」とは?

 国民年金の保険料に400円(「付加保険料」という)上乗せすると、月400円に対して200円の「付加年金」が「老齢基礎年金」に加算される。

 例えば、400円の付加保険料を12ヵ月支払えば、200円×12ヵ月で年額2,400円の「付加年金」が加算されることになる。この場合、保険料負担は4800円で加算額は2400円だから、「付加年金」を2回受給すれば元が取れる計算になる。つまり、「老齢基礎年金」を受給してから2年間以上生きれば元が取れることになる。金額は少ないが割の良い制度である。

 「付加年金」は、本来は2階部分のない「第1号被保険者」のための制度だ。「第3号被保険者」も2階部分はないが、こちらは保険料の納付義務がないという恩恵的な立場なので対象外となっている。しかし、「任意加入被保険者」には 保険料の納付義務があるので、「第1号被保険者」に準じた扱いになっているのである。

「国民年金基金」とは?

 「付加年金」とは別に、2階部分のない「第1号被保険者」のための制度として、「国民年金基金」という制度がある。「国民年金基金」は公的年金ではないが、国民年金法に規定される準公的年金ともいえる私的年金制度である。「私的年金」だから、「遺族厚生年金」との支給調整もない。その面からは、「第3ステージ」対策になり得る。ただし、「国民年金基金」と「付加年金」はいずれかの選択制となっており、両方に加入することはできない。

 「国民年金基金」は、「付加年金」に比べると掛け金(国民年金基金の場合は保険料ではなく「掛け金」という)が高く、掛け金に対するリターン(年金給付)も「付加年金」に比べれば割が悪い。平均的に生きて、ようやく掛け金の原本をほんのわずか上回る程度の給付である。しかし、それでも、あまりにも低額な「付加年金」に比べれば多少はまとまった額の年金になる。

 「国民年金基金」は、以前は20歳から60歳までの期間しか加入できなかった。しかし、平成25年度以降は、60歳以上であっても国民年金に「任意加入」している人なら加入できるようになった。つまり、60歳まで「第3号被保険者」だった人も60歳以降国民年金に任意加入すれば、「国民年金基金」に加入できるようになったのである。

 「国民年金基金」は掛け金が全額所得控除されるので、所得がある人にとっては節税にもなる。どちらかというと自営業者向けの制度である。

渋谷康雄(しぶや やすお)
社会保険労務士 / 昭和32年生まれ。社会保険労務士。明治大学卒業。平成13年「渋谷社会保険労務士事務所」開業。平成18年「特定社会保険労務士資格」取得。得意分野は公的年金・65歳までの継続雇用制度構築・高齢者賃金設計・就業規則・個別労働関係紛争の相談等(年金、社会保険、労働法に関する分野)等。他に講演やセミナー講師、テレビコメンテーターなどとしても活躍。主な著書に「60歳からの年金・健保・雇用保険・税金の判断基準」(平成25年三訂版、日本法令)、「ケース別サラリーマン夫婦の年金がわかる本」(平成26年、日本法令)がある。
URL: http://yasuo-shibuya.main.jp/