「透明NFCアンテナ搭載ディスプレイ」を開発/シャープNFCリーダー「不要」を実現
2019年以降の量産化を目指す

 「ディスプレイは重要な“マン・マシン・インターフェース”。私たちはそう考えています」
 こう語るのはシャープのディスプレイカンパニー、伊藤康尚開発本部長です。先日行われた「透明NFC(近距離無線通信)アンテナ搭載ディスプレイ」の開発に関する発表会において、新技術の紹介・解説の最後をこう締めくくりました。

 今回、シャープが発表した透明NFCアンテナとは“マン・マシン・インターフェース”の言葉通り、ディスプレイに新たな役割を付加したもの。透明化した同アンテナをディスプレイに搭載することで、ディスプレイそのものにNFCリーダーの役割を担わせることが可能な技術です。

 NFCは今やSUICAなどの乗車券や電子マネー、施設入場のセキュリティ、機器連携のペアリングなど、幅広い分野で活用されており、駅やコンビニ、自販機などを通じて日に何度も利用する方が大半でしょう。

 しかしながらシャープは現状のNFCでは、読み取るためにリーダーが不可欠なことに着目。これをディスプレイと一体化させることでさらに利便性を高められることから、2014年に同技術の開発をスタートしたとのこと。そして現段階では技術発表であり、量産化については2019年以降を目指すとのことでした。

 また、用途としては、NFC決済(コンビニ、スーパー、交通機関、自販機等)とNFC認証(学校や医療機関などのセキュリティ、クルマや自転車のシェアリング、機器連携、ゲームなどのアミューズメント等)をあげていました。

課題は光透過率の向上か!?

 これらの中でも、より利便性が高まりそうだと感じたのはコンビニやスーパーなどでのNFC決済です。スペースの限られたレジ周りでカードリーダーの設置が不要になり、レジスターディスプレイでの読み取りが可能になれば、店としては空いたスペースを他の用途に有効活用でき、お客もタッチすべき機器を探す手間が省けることになるからです。

 同技術で特筆できることは、ディスプレイ内の1箇所に読み取りポジションを設置するタイプだけでなく、複数箇所に設置しての同時検出が可能な、ポジションフリータイプを用意していること(こちらは2020年以降の量産化を予定)。この技術を応用すればレジスターのディスプレイだけで各社のNFCカードへの対応も可能となり、レジ周りのすっきり感はさらに高まることになりそうです。

 反面、ゲームなどのアミューズメントやデジタルサイネージなどへの搭載は、まだ少しハードルが高いようにも感じました。というのは“透明”とは銘打っているもの、アンテナ層の光透過率は80%以上。言い換えれば現状では20%近くの光をロスしているわけであり、このことが、色再現や描写力などを重視する事業者にとっては、懸念材料となるように感じたからです。

 伊藤本部長によれば「(導電線に用いている)メタルメッシュをより細めることで、透過率のアップが可能」とのこと。ただし、そのためには読み取り精度などの確実性や安全性などを同時に高めなければならず、そのハードルは決して低いものではないようです。このあたりは今後の技術開発の進展度合いによる、ということなのでしょう。

 「当面はATMや券売機など、直接画面と向き合って操作する機器から普及が進むはず」(伊藤本部長)との見通しを語っていましたが、これが現実的だと感じます。いずれにしてもディスプレイの新たな用途の開発は、シャープのミッションともいえるもの。透明NFCアンテナ搭載ディスプレイが2020年以降、どれだけ社会に浸透しているのかは非常に興味深いテーマのように感じました。(征矢野毅彦)