パナ、ソニー、東芝が一斉発表「4K OLEDテレビ」混迷のACAS問題を独自発想でクリア
4K内蔵“日本初”を勝ち取ったレグザ

 大型連休明けの5月8日、ソニー、パナソニック、東芝の3社が、一斉に4Kテレビを発表しました。メイン機種はいずれもOLED(有機EL)テレビで、ソニーは「BRAVIA A8F」シリーズ、パナソニックは「VIERA FZ1000」シリーズ、そして東芝は日本初のBS/CS 4Kチューナー内蔵「REGZA X920」シリーズというラインアップです。

 3シリーズとも今年12月1日に始まる4Kテレビ放送を見据えたフラッグシップモデル。OLEDパネルこそLG製で共通していますが、画質再現のカギを握る画像処理エンジンには独自の技術を投入。その良否は実際に見比べてもらい、個々人の判断に委ねるほかありませんが、いずれにしても4Kコンテンツの高精細な映像を余すことなく再現できる最新モデルであることは確かです。

 その上で、敢えて今回のニューモデルの中から注目株を選ぶとすれば、やはり東芝でしょう。レグザX920シリーズは日本初のBS/CS 4Kチューナー内蔵OLEDテレビ。ブラビアとビエラが非内蔵(4Kテレビ放送の受信には専用チューナーが別途必要)であるだけに、余計に目立つ存在といえます。

なぜ東芝だけが4K内蔵機を発表できたのか!?

 しかしながら素朴な疑問が。なぜ、東芝だけが4Kチューナーを内蔵し、他社は非内蔵だったのでしょうか。東芝がチューナー技術にずば抜けている、ということもないでしょうし、どのシリーズも半年後に迫った4Kテレビ放送を見据えたニューモデル、しかもフラッグシップです。であれば、内蔵していた方が自然だと思うのは私だけではないでしょう。実はここに、東芝独自のアイデアが潜んでいるのです。

 4Kテレビ放送を受信するためには、ACAS(放送の暗号化とアクセス制御を行うシステム)の搭載が不可避です。現行のデジタルテレビ放送でも同じような機能のBCASが採用されており、これがなければ放送は受信できません。BCASはカード式ですが、ACASではこの機能をチップ化しており、チューナーそのものに搭載する仕様になっています。

 そして、同チップの出荷は2018年秋の予定。このため4Kチューナー内蔵のテレビの発売も、それ以降との見方が支配的でした。

 ところが東芝はACASの機能をモジュール化して、外付けのシステムとしたのです。このため本年7月の発売時点では、ACASチップは非搭載であり、本年10月以降にネットや電話等で申し込んだユーザーに、BS/CS 4K視聴チップを送付することとなっています。ユーザーは届いたチップを、モジュールにセットしてテレビに装着するというシステムです。

 これ自体は、それほどハードルの高いテクノロジーとは思えませんし、他社でも追随しようと思えばすぐにも対応可能だと思われます。にもかかわらず、東芝だけが今回のニューモデルでいち早く対応できた要因を、ある関係者は「一言で言えば商品化に向けた情熱だろう」だと話していました。

東芝の「BS/CS 4K視聴チップ」システム

 ACASの採用方式については、そもそも主導するACAS協議会とメーカー側の対立が続いていたとのこと。チューナー自体に組み込むべきという協議会に対し、メーカー側はBCASのような外付けにすべきという主張。結果として、チューナーへの組み込みという方向にまとまった中で、東芝は限りなく外付けに近いモジュール化を発案。「この案を、ACAS協議会に認めさせたのだろう」というわけです。

 これが事実だとすれば、もはや技術力よりも政治力に近い世界ですが、見方を変えれば東芝はそこまでやって「日本初のBS/CS 4Kチューナー内蔵テレビ」という栄誉をつかみ取ったことになります。こうした裏側の努力を消費者がどこまで評価するか–。今年のボーナス商戦の大きな見所の一つになりそうです。(征矢野毅彦)