4陣営がつばぜり合い:EV充電規格世界シェアでトップに立つ
日本発の規格「CHAdeMO」

 ヤマダ電機法人事業部がEV(電気自動車)用の急速充電器の販売に本腰を入れます。タッグを組むのは2017年国内出荷シェアNo.1(NCS登録ベース)の「ニチコン」です。

 同社の急速充電器は①他社を圧倒する小型設計、②万が一の機器トラブルでも迅速かつ低コストでリカバリー可能なユニット構造の採用、そして③年間電力コストを最小化する低待機電力。この3点を大きな武器として、競合を寄せ付けない高い支持をユーザーから獲得しています。その詳細については5月末発行のシャニム63号をご覧いただくとして、ここでは取材時のこぼれ話をお伝えしましょう。

 取材と言いましても、正直、EVに関してはまったくの門外漢。所有していないのはもちろんですが、運転したことも一度もありません。当然、充電をした経験もなく、充電システムや手法についても、まったくそのノウハウを知りませんでした。

 取材にうかがう際の礼儀として、事前に情報収集したのですが、やったことのないものというのは、どうしても上っ面だけになってしまいます。こういうときは潔く、「申し訳ありません。一からご教授ください」と願い出る以外にありませんでした。

普通充電(AC充電)と急速充電(DC充電)

 そもそもEVの充電には普通充電(AC充電)と急速充電(DC充電)の二つがあり、最大の違いは充電時間です。普通充電は一般家庭のコンセントなどからEVに内蔵した充電器を経由して充電を行うもの。フル充電までに8時間ぐらい必要です。

 これに対して急速充電は、公共施設などに設置された急速充電器から充電を行うもの。その利用可能時間は現状では、混雑回避などのために1回当たり30分まで。これで約80%の充電が可能です。

 ここで、そもそも疑問だったのは、急速充電器を利用した場合の、料金の支払い方法。道の駅などに設置された急速充電器をよく見かけますが、周辺にスタッフがいる様子もなく、といって無料ということでもないでしょう。どうやって支払うのかが以前からの疑問でしたので、今回ストレートに質問しました。

 日本のEVユーザーの約9割はNCSカード会員(またはNCS提携のEVメーカーカード会員)になっており、急速充電器を利用した場合はNCSを通じた支払いが一般的なのだそうです。しかも、その料金は30分で450円。これで300~400kmは走れるのですから、ガソリンに比べてかなり割安なことは確かです。もっともNCSカード会員は他に月額3800円の会費(急速充電器専用カードの場合)や初回手数料1400円などがかかりますが、それでも割安感があります。

日本発のEV充電規格「CHAdeMO(チャデモ)」

 そこでもう一つの疑問は、屋外に設置された急速充電器は、どこのメーカーのEVでもチャージ可能なのか、ということ。国内メーカーは同一規格の充電システムを推進しているとしても、では外国車はどうなのでしょう? 

 これについてはまず、世界ベースで見た場合、充電システムは現状で4陣営に分かれているとのこと。日本が開発して世界標準を目指している規格が「CHAdeMO(チャデモ)」です。これに対して欧米が推進している規格が「CCS(コンバインド・チャージング・システム)」、中国が規格化を進めているのが「GBT」、そしてEV業界の風雲児テスラが推進する独自規格「SC(スーパーチャージャー)」。現状でこの4陣営がしのぎを削っています。

 こうしてみると、日本はまた「ガラパゴス化するんじゃないか」と考えるのは私だけではないでしょう。

 ところがです。今現在、世界シェアでトップの充電規格は「チャデモ」なのだそうです。昨年10月にチャデモ協議会が発表したシェア状況で、チャデモはシェア32%でトップ。日本以外にもヨーロッパなど世界50カ国以上で、すでにチャデモ方式の急速充電器が設置されているとのこと。

 東南アジアなどでチャデモが普及するのはまだ理解できますが、ヨーロッパでも普及が進んでいるというのは、かなり意外です。チャデモ協議会が発表したデータによれば、ヨーロッパの急速充電器設置台数は現状、チャデモ約4000台に対して、CCSが約3000台、そしてテスラSCが1800台前後となっています。
 
 チャデモが首位に立つ要因を聞いてみると、日産の力が非常に大きいとのこと。同社のリーフは現状、世界で最も売れているEVですが、それはヨーロッパでも同様。日産はリーフを売りまくると同時に、チャデモ方式の急速充電器設置も強化。いちはやく充電インフラを整備することで、EVにおけるトップシェアの座を確立する戦略を推進中です。

 EVの“クルマ”だけをみれば、リーフよりもテスラの方がカッコよく、話題性でも先進性でもはるかに先を行っているように思えます。しかしながらEVは、充電できてナンボ。そのあたりを心得ているのがクルマメーカーの老舗・日産というわけでしょう。ヨーロッパはルノーの本拠地だけに、日産・ルノー連合の強みをEVでもいかんなく発揮したのではないでしょうか。

 対するCCS陣営に属するのはフォルクスワーゲンやBMW、メルセデスベンツなどの蒼々たる顔ぶれ。ただしEVとなると、そのシェアはまだ小さく、CCSインフラに与える影響もまだ大きくはないのでしょう。

 実際、ヨーロッパのEVチャージステーションでは、CCSとチャデモの双方のケーブルを備えた急速充電器が増加中とのこと。となるとチャデモは、簡単に「またガラパゴス?」と切り捨てられない日本製規格といえそうです。

VtoHへの発展の可能性

 チャデモもCCSも基本的には充電器ですから、ケーブルや充電ポートの違い以外には大差はなく、CCSの方が航続距離は長いというような、EVの本質機能に差が出ることはありません」。このことも現状でシェアトップのチャデモには優位かも知れません。わざわざ別規格の充電方式を採用し、新たにインフラを構築するよりも、充電インフラの進んでいる規格を採用する方が合理的、との考えはあるでしょう(もっとも政治的な判断がつきものだけに、簡単ではないでしょうが)。

 チャデモには他の充電方式との比較で、優位点が一つだけあるとのこと。それはEVと一般家庭をつなぐVtoH(ヴィークル・トゥ・ホーム)への発展性です。

VtoHはEVのバッテリーを非常用電源とし、貯めた電力を外に取り出して別の機器で使うもの。その際にはEVと外部機器の間での各種データ通信が不可欠になりますが、CAN通信(マイクロコントローラやデバイスが相互に通信できるように設計された規格。耐ノイズ性の強化がなされている)を用い、通信を別回線としているチャデモの場合、VtoHでも安定的な通信が可能です。

 しかしながらCCSは、電力線を通信回線としても利用するPLC(Power Line Communication)を採用。これはノイズが多く「VtoHには向かない」という声が関係者の間で支配的です。このことがEV充電器普及にどこまで影響するのかは未知数ですが、チャデモの優位点であることは確かです。

 ということで、「外国製EVは国内の急速充電器を利用できるのか」という当初の疑問ですが、答えは当然ながらYES。CCSなど外国規格を使っているメーカーも、日本国内への輸出モデルは、充電規格をチャデモに変換しているからです。またテスラのように、チャデモ変換アダプターを用意しているメーカーもあります。変換アダプターの開発にどの程度の技術やコストが必要なのかは分かりませんが、それで対応できるのであれば、そもそもEV充電の規格競争に、それほど目くじらを立てる必要もなさそう気がしますが?

 いずれにしても20世紀の経済や文化をけん引してきた内燃機関のクルマから、電気を動力とするクルマへと主役交代することは確かです。そう遠くない将来、誰もがEVに接する時代となるだけに、今回の取材は非常に有意義なものでした。EVやその充電インフラの拡大は、否が応でも我々の暮らしを大きく変革することになるはずです。(征矢野毅彦)