EV充電の「事業化」は儲かるのか!?現段階で設置事業者の主眼は
地域貢献策や集客策などが主流

 前回に続いて「EV充電器」ネタでいきます。今回のテーマはズバリ「EV充電器の設置事業」について。端的に言えば、今あるガソリンスタンドのように「EV充電ステーションは儲かるのか?」です。

 EVの現状の登録台数は19万台ほど。これが僅か2年後の2020年には「100万台(政府目標)」と予測されている超有望マーケット。EVステーションなどインフラの事業化に注目が集まるのは当然のことでしょう。その収支予測の前に、まずはEV充電器の基礎知識から。

 EV充電の方式には2種類あります。
1.「普通充電(AC充電)」:一般家庭用の電源などを用い車載充電器を経由して行う充電。充電器の価格は安いが(コンセント型で数千円、ポール型で数十万円)、フル充電までに8時間ほどを要する。
2.「急速充電(DC充電)」:道の駅などに設置された急速充電器を用いた充電。充電器の価格は高いが(数百万円)、30分間で約80%の充電が可能(NCS/日本充電サービスの契約充電器は1回の使用時間が30分までと規制されている)。

 これとは別に充電器の利用シーンで分類した充電タイプもあります。
A.「経路充電」:高速道のSAや道の駅、カーディーラ-―などに設置された充電器を使った充電(主に急速充電器)。国産車・輸入車を問わず、基本的にはすべてのEVユーザーが利用可能。目的地に向かう途中の継ぎ足し充電。
B.「目的地充電」:宿泊施設や大規模商業施設などに設置された充電器を使った充電(普通・急速のどちらの場合もあり)。基本的にはすべてのEVユーザーが利用可能。宿泊や買い物の時間を使っての充電。
C.「基礎充電」:戸建て住宅やマンション、事業所などに設置された充電器を使った充電(個人宅は普通充電が多く、事業所は普通・急速のどちらの場合もあり)。深夜など長時間の駐車中に行う充電。自家用車や社有車など限られた車両のみの利用が一般的。

 EV充電ステーションを事業化するにあたっては、「急速充電器を使った経路充電か目的地充電」ということになるでしょう。自社の空きスペースなどに急速充電器を設置するだけで、EV充電事業を行うことがすぐにでも可能だからです。

赤字覚悟の先行投資か、地域社会への貢献策か

 では、儲かるのか――? 結論からいえば、現状ではまったくの不採算。少なくとも電力の売買差益だけでは現状、大赤字を覚悟する必要があります。

 経済産業省が発表したレポート「EV/PHVの充電インフラに関する調査」(2016年)には次のような一文が記されています。

 「急速充電器の設置が進まない理由に、経済性確保が困難であるという点があげられる。(中略)充電設備は導入の初期コストが高額であり、施設運営者の負担が低くないと指摘されている。
 また、メンテナンス等を含めたランニングコストも一定レベルで必要となるため、初期投資コストを含め、初期投資額を回収できるまでの収入が十分に得られていない充電スポットが存在しているといわれている。収入の増加には利用頻度の向上や利用料金の見直し、費用の抑制には初期投資の抑制、メンテナンスコストの管理、電気代の抑制などの取り組みが必要と思われる」

 今現在、経路充電として運営されているステーションの大半は、NCSとの間で設置事業者として「一般提携契約」を結んでいます。そして、EVユーザー(約9割がNCSカード会員)が急速充電器を利用しNCSに支払った利用料の中から、一定額が設置事業者に支払われています。これが充電器設置事業者の売り上げ。

 NCSから支払われる額は1分あたり9.8円(※1)。ユーザーが30分利用した場合は、294円が設置事業者の売り上げというわけです。設置事業者のEV充電における売り上げはこれのみ。平均的なEC急速充電器の利用頻度は現状、年間600時間程度といわれているそうですから、これを単純計算すれば年間売り上げは35万円強。

 ここから設置事業者は電力会社への支払いやメンテナンス費用などを賄うわけですが、その総額を経産省では年間70万~130万円と試算しています。しかも、それとは別に充電器の購入費や工事費(同省試算では330万~1650万円)がかかりますから、どう考えてもビジネスとして成立しないことは明らかでしょう。

 今後、EVが急速に普及して充電器の利用頻度が飛躍的に高まったり、充電器価格やメンテナンスコストが大幅ダウンをすれば、状況も変わるでしょう。また、今はEV普及を最優先して充電器の利用料金を低く抑えているNCSが今後、利用料金をアップし、事業者への支払額をアップする可能性も否定できません。

 その意味では、EV充電器事業の将来性までもを否定することはできませんが、少なくとも今は先行投資と考えられるかどうかが、事業参入の最大のポイントでしょう。

 現状で経路充電としてEV充電器を設置している民間企業は、「地域社会への貢献策」や「集客や宣伝のためのサービス」などと位置付けているケースが大半とのこと。CSRや本業の付加サービス目的ですね。「結果として地域での認知度が高まったり、先進性のアピール、そして集客につながるのであれば、広告宣伝費やCSR活動費として割り切ることができる」(関係者)。

 こうしたアプローチは、固定価格買取制度が始まる前の太陽光発電に、類似しているようです。普及の1stステップとしては順当なのかもしれません。しかし、今後の急速普及のためには、別のもっと刺激的な起爆剤が必要なことは明らか。それは何なのか? そのタイミングはいつなのか? 本気で事業化を考えている企業は今、その情報を静かに待っているのかも知れません–。(征矢野毅彦)

※1)EVユーザーのNCSへの支払額(充電器の利用料)は15円/1分。