地方発!世界で活躍する会社「京都の四季」を凝縮したミニ盆栽が
シンガポールの富裕層を虜に!

有限会社 フラワーハウスおむろ[京都府]

京都府京都市

代表取締役 島本 壮樹

TEL. 075-465-5005

URL. http://kyoto-omuro.jp/

手軽・簡単・ミニチュアで勝負

手間暇かかって難しく、なかなか手を出しにくい趣味……。多くの人は「盆栽」にこういったイメージを持っているのではないか。しかし、京都の老舗花店「京都花室 おむろ」(有限会社 フラワーハウスおむろ)の盆栽はまったく趣が違う。社長の島本壮樹が熱を込めて語る。

「手軽、簡単、ミニチュア。この三つが、うちの盆栽のキーワードです。観葉植物をインテリアにするような感覚で、もっとカジュアルに、京都の四季を楽しんでいただくことをコンセプトにしています」

島本が提案するミニ盆栽「京都小鉢シリーズ」は、海外では「Interior Bonsai」という名で展開。“シンガポールの銀座”といわれるオーチャード地区の高級百貨店などで販売され、現地の富裕層を虜にしている。

フラワーハウスおむろは1955年創業の老舗花店。島本は4代目だが、本来、跡を継ぐのは兄のはずだった。しかし、その兄は南アフリカで不慮の事故により客死する。

島本は大学卒業後、外資系企業に就職し、営業やマーケティングなどに携わる。ところが、数年たたずに今度は父が病死。行き場のない思いを抱える中、東日本大震災が発生し、島本は社内公募された被災地ボランティアに手を挙げた。

「被災地では、死のはかなさを感じました。いつ何が起こるかわからへん。自分の思ったことに挑戦して、いつ死んでもええような生き方をせなあかん、と強く思いました。同時に、亡くなった父が残したものをそのままにしておいてええんか、という思いも湧いてきました」

激しい思いに揺さぶられた島本は、会社を退職。2011年11月、家業を継承した。

花卉の流通を改革して産直に

島本は花卉業界の市場動態をしっかり調べることから始めた。「前職ではブランディングの勉強をさせてもらったので、そこで学んだことを活かしていこうと考えました」と引き継いだ当初を振り返る。

花の87%以上は市場を介して流通。まず生産者から地元のJAが買い上げ、それが市場に行き、さらに仲卸経由で花店に渡る。調査すると、この複雑なフローを経て、客が花を買うまで、平均して約2週間もかかることが分かった。

「なんで2週間もかけて、生もんを扱うんやろ。ダイレクトにやればええんちゃうかと、産地直送で販売することを考えました。そうすれば、現状よりもずっと早くお客様に届けられるはずです」

産地直送は、生産者にも大きなメリットがある。市場を通すと、中間マージンが発生するため、売値は低くならざるを得ない。島本は全国の多くの生産者を1軒1軒回って訴えた。

「最高級のお花だけを扱わせてください。値段は、言い値でかまいません。市場の卸価格の3倍、4倍でも買います」

愛情込めて栽培したものを、技術と手間に見合った高値で買ってもらえる。真剣に栽培に取り組む生産者ほど、島本の考えに賛同。花卉業界初の産地直送は、こうしてスタートした。

「京都」を前面に押したブランド作り

流通を革命的にシンプルにした島本は、大きな需要がある葬儀を扱わず、お祝いと盆栽を事業の2本柱にすることに決めた。

しかし、こうした新しいビジネスモデルは、従来の顧客には受け入れられるものではなかった。京都花室 おむろは、それまで何千社もあった顧客のほとんどすべてを失う。

「開店や開業など、ハッピーに、前向きになれる仕事をしたい、という思いがあったんですよ。それに、父のやってきたことを踏襲するのではなく、自分の作り上げたもので、市場にインパクトを与えたかった。こう思い、大きく事業を変革しました」

顧客が離れた結果、収入は激減。半年ほどの間は、廃業するかどうかの瀬戸際状態だったという。実はこの頃、外資系で働いていたという実績から、ヘッドハンティングの誘いがたびたびあった。けれども、「年収数千万円で来ませんか」といったおいしい話をすべて断る。

「本当に品質の良いお花をお客様に届けたい、花卉業界を変えたい。こういう思いがなかったら、続けられへんかったかなあ」と島本は苦境の時代を振り返る。

当初こそ苦しかったものの、花が高品質で長持ちすることを新規の客が評価。インターネットを通じた販売によって、売り上げは伸びていく。

さらに、「京都」を前面に出したブランディングが奏功。新しいセンスによる「変わり胡蝶蘭」「色付き胡蝶蘭」などの「京都胡蝶蘭シリーズ」、四季を表現するミニ盆栽「京都小鉢シリーズ」の人気が高まっていった。

輸出したいのは「京都の文化」

当時はインバウンドが大きく伸びてきた時期。店舗にも外国人観光客が多く立ち寄るようになった。彼らはミニ盆栽を手に取り、口々にいった。「この盆栽を持って帰りたい。自分の国で楽しみたい」と──。

「でけへんのかな、やってみたいなと思いました。前職は外資系ですし、海外への思いは元々あったんですよ」と島本は話す。大きな壁である植物検疫を突破するため、島本はジェトロ(日本貿易振興機構)の協力を得て、輸出を可能にするプロセスを作り上げた。

最初の海外進出は、シンガポール最大級の植物園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」。公式サイトから、「シンガポールの人たちに、ぜひ桜のお花の素晴らしさを体感してもらいたい」とメールで提案したら、好感触の返信がきた。早速、現地に飛んで商談。イベントへの参加が決まった。

2016年3月に開催された植物園のイベントで、ミニ盆栽の桜は見事に花開いた。初めて見る日本の春の象徴に、シンガポールの人たちは目を奪われた。

上々の反応を見て、これならいけると島本は確信し、富裕層御用達の高級店に的を絞って営業。「伊勢丹シンガポール」「高島屋シンガポール」「タングス・オーチャード」の催事に立て続けに参加する。

伊勢丹では同店の催事史上、歴代最高の売り上げ(単位面積当たり)を記録。高島屋では、日本の商品を扱う常設店舗でも扱われるようになった。

わずか2年程度で、海外の売り上げは全体の約3割まで伸張。今後は香港やベトナム、タイなどの他、EUやアメリカへの輸出も探っていく。

順調な展開を見せる中、島本は「売り上げを伸ばすことも大事だとは思うんですけど…」と信条を語る。

「単なる商品ではなく、日本の文化、京都の文化を感じてもらうツールとして輸出したい。例えば日本独自の花見の文化なども提案していきたいですね」

失敗しない秘訣は、試行錯誤しながら、成功するまでやり続けること。こう話す島本は、これからも自分の信じる道を走り続けるに違いない。

満開を迎えた桜の小鉢(ミニ盆栽)をテーブルに置き、花を愛でつつ日本酒を飲む。近い将来、いろいろな国で、こうした「HANAMI」が見られるようになるかもしれない。(敬称略)