大判ポスターの作成体感レポート/キヤノン「imagePROGRAF TX」&耐水メディア
ポスター作成コストを最大10分の1に

先日、キヤノンのショールームで、大判プリンターによるポスター作成の様子を取材する機会がありました。屋外掲示用の大判ポスターの内製化は技術的な課題、手間や時間がかかるといった理由から敬遠されがちで、コスト的には高くつくと分かっていても、外注に出してしまうことが多いのではないでしょうか。

しかし、同社の大判プリンター「imagePROGRAF」と印刷メディアを使ったポスター作成ソリューションでは、前述のようなイメージとは裏腹に、デザインから印刷、貼り付けまでずいぶんと簡単に作成できることに驚きました。

imagePROGRAF TXシリーズ

ポスター作成に使われたモデルは、「imagePROGRAF TXシリーズ」。大判プリンターというと、hpやエプソンなどのイメージが強いですが、実はキヤノンの「imagePROGRAF」ブランドは大判プリンターのカテゴリーにおいて9年連続No.1を獲得中(*1)の人気ブランドとのこと。TXシリーズは同ブランドの最新機種です。
(*1)IDC’s Worldwide Quarterly Large Format Printer Tracker 2017 Q4, By Company, 2009年~2017年, 国内大判プリンター市場の出荷台数において

●imagePROGRAF TXシリーズ。ラインアップは、右から「TX-4000(B0ノビ対応)」「TX-3000(A0ノビ対応)」「TX-2000(A1ノビ対応)」の3機種が揃う
型番 TX-3000
プリントヘッド 15360ノズル(MBK×5120ノズル、BK/C/M/Y×各2560ノズル)
最高解像度 2400×1200dpi
給紙方法 手差し(カット紙)/ロール紙
対応用紙長 ロール紙:最小203mm~最大18m~カット紙:最小203mm~最大1600mm
対応用紙幅 最小203mm~最大917mm(36inch/A0ノビ)
インターフェイス USB(Hi-Speed USB)/有線LAN/無線LAN(IEEE802.11n/g/b)
内蔵メモリー 128GB
ハードディスク 500GB
消費電力 動作時:105W以下/スリープ時3.6W以下
稼働音 動作時約51db(A)以下/待機時35db(A)以下
外形サイズ W1390×D766×H1168mm(スタンド装着時/バスケット閉時)
本体重量 約105kg

 

TXシリーズのスペックや機能などの詳細についてはホームページやカタログに譲りますが、実際にポスター作成をするにあたって驚かされたのは、印刷の速さとマルチファンクションロールシステムに対応していること。個人的に、写真を大判プリンターで印刷する機会が時々あり、その時の印象で「大判印刷にはそれなりに時間がかかる」と思っていました。

ポスターと写真との違いもあるのでしょうが、TXシリーズでの出力はサクサクと進みA0サイズを2分もかからず完了していました。

●個人的なイメージが覆された高速プリント

マルチファンクションロールシステム(2段ロール給紙機構)は、ロール紙を同時に2本セットできる仕組みのことです。ポスター作成は屋内や屋外、掲示場所といった用途により、紙質やサイズを使い分けることが多いもの。別売オプションのロールユニットを用意する必要はありますが、サイズや種類の異なる用紙を同時に装着しておけるので効率的な印刷が可能です。

しかも、ロール紙を本体の給紙部に置くだけで用紙が自動的に搬送されて、印刷が可能な位置に調整される「自動ロール紙セット」機能を搭載しています。これもまた個人的な経験で「大判プリンターは紙のセットが面倒」との思い込みがありましたが、これが見事に覆されました。この機能は、業界初(*2)とのことです。
(*2)大判インクジェットプリンター(A2サイズ以上)において。2017年12月7日現在。キヤノン調べ

印刷品質は、さすがはキヤノンという印象。聞けば、「新たに開発したLUCIA TDインクを採用。全色顔料なので、水濡れに強い。カラーインクを背景にマットブラックを印字するとインク間の表面張力の違いによりにじむことがあるが、これを抑制する技術を搭載し、カラーを背景に黒文字をくっきりと表現できる。これにより、高品質なポスターの作成が可能」とのことでした。

補足ですが、TXシリーズにはレイアウトや画像編集が簡単に行えるポスター作成ソフト「PosterArtist Lite」が同梱されています。業種やテーマに合わせた約100種類のデザインテンプレート、900種類以上の写真やクリップアート用の素材が用意されていますので、難しいと思われがちなポスターデザインの内製化も可能でしょう。

貼り付けが容易な耐水メディア

ポスター内製化を面倒にしている大きな要因として、印刷したポスターの加工が挙げられます。屋外や水に濡れる可能性がある場所での掲示では、光や水による色あせ対策として、ポスターの表面をラミネート加工する必要があるそうです。

この作業を内製で行うには難しく、外注時もコストアップの要因になっていました。キヤノンでは、耐水ポスター合成紙など、ラミネート加工不要で最長6カ月相当の屋外掲示を実現する耐水メディアのラインアップを用意しています。

実際に、耐水メディアに印刷したサンプルを頂いたので、自宅で水道水にさらしながら指で強くこすってみました。まったくにじむことなく、思わず「ほ~っ」とうなってしまいました。

●ショールームで実施されている耐水性の実験。数カ月、水にさらされているが印刷品質に変化はなかった

耐水性の確保に加えて、ポスター内製で面倒な点といえば、貼り付けです。ポスターの裏面への糊付けや設置場所への正確な貼り付けには専門的な施工作業が必要となるケースが多いといいます。キヤノンは、この課題も解決するために「糊付き耐水メディア」を用意しています。

貼付面に気泡抜きの溝を施した構造となっており、専門的なスキルがなくとも、位置決めや壁・ガラス面へ貼り付け時の気泡抜きが容易なことから、専門業者に依頼することなく自分たちでキレイに貼ることができそうです。

●複雑な場所にも貼りやすい気泡抜き溝を持つ印刷メディア

内製化は難しいは過去の話

キヤノンのTXシリーズと印刷メディアによるポスター作成ソリューションを見るまでは、個人的にも「デザインから設置まで、屋外掲示のポスター作成の内製は難しいだろうな」と思っていました。しかし、今回、実際に体験することで、それほど難しくないという印象が強くなりました。

内製化できれば、コストも削減できます。もちろん、機器の導入コストなどを加味することは必要でしょうが、多店舗展開の飲食店やスーパー、ドラッグストアなど一定数以上のポスターを活用する業種であれば、十分にコストメリットを享受できるはずです。

下記の表は、キヤノンによる試算ですが、外注時の1枚あたりの単価は5000円~7000円前後。これが、内製化により6分の1~10分の1にまで、大きくコストを削減することが可能です。

●キヤノン試算によるコスト削減のシミュレーション

内製化にはコスト面以外にも、納期短縮(急な作成案件にも対応でき、枚数不足が生じた場合でもすぐに追加が可能)やロット発注により発生するムダな作成・廃棄コストの削減といったメリットがあります。

「課題があれば、それを解決するソリューションが必ず出てくるものだな」と強く感じました。今後、キヤノン以外にも、こうした大判プリンターによるソリューションは続々と出てくるのではないでしょうか。こうしたツールを上手く活用しながら、ビジネスに賢く取り組みたいものです。(長谷川丈一)