中小企業にも影響!2大改正法が施行クレカ扱う店舗は対応必須「改正割賦販売法」
「日本版司法取引」で企業犯罪の摘発増加!?

2018年6月1日、大手企業や中小企業、個人事業主を問わず適用される改正法が施行されたことをご存知ですか。「改正割賦販売法」と「日本版司法取引」の2つの法制度がスタートしました。改正割賦販売法については、以前にシャニム本誌(61号)でも取りあげましたが、この2制度について改めて概要を見ておきましょう。

●2018年は法・制度の改正ラッシュ。しっかりチェックしておきたい

クレカ扱う事業者は対応必死の改正割賦販売法

改正割賦販売法は2016年12月9日に公布され、2018年6月1日に施行。商品代金やサービス代金の分割払いなどに関する法律で、クレジット取引の公正化、消費者の利益保護などを目的としたものです。1961年の制定以来、何度か改正されてきましたが、今回の改正の注目は「クレジットカード取引に関わるもの」で、クレカ取引を行う小売店や飲食店にとってはインパクトが大きい改正といえるでしょう。

その詳細や対策は『「改正割賦販売法」徹底解説』を参照していただくとして、チェックしておくべきポイントは、「クレジットカードの情報を適切に管理すると共に、不正使用を防止する義務をクレカを扱う販売業者(加盟店)も負う」こととなりました。

従来、これらの義務はカード発行会社などが負うべきものとされてきましたが、改正法施行以後は加盟店も法律適用の対象となったわけです。しかも、個人経営の店舗から複数店舗をチェーン展開する大手事業者まで、クレジットカードを取り扱うすべての加盟店に適用されるため、改正の影響は事業規模に関係ありません。

小規模事業者や個人経営の店舗などはカード発行会社からの指示に従う受け身の姿勢で安全管理に取り組めばよかったわけですが、今後は義務主体として積極的に法律を守ることが求められます。万一、セキュリティ対策が不十分な場合には義務違反に問われ、直接の罰則は規定されていませんが、行政による立入検査などが行われ、場合によってはクレジットカード取引が扱えなくなる可能性もあります。

2020年に向けて、ますます外国人観光客が増える中、クレジットのIC化対応後進国といわれる日本の対応は急務とされています。その背景などについては、以前のトレンドレポートでも取り上げた「日本はクレジットカード取引のセキュリティホール!?」を参照していただければと思います。

対策の具体的な指針は、関係企業団体などにより組織されたクレジット取引セキュリティ対策協議会が策定する「実行計画(最新版は実行計画2018)」。実店舗(対面販売)とネット通販(EC)で求められる対策が異なっています。

6月1日に施行となりましたが、実行計画に基づく環境整備には対応すべき目標期限が設けられており、実店舗は施行日を基本に2020年3月。EC加盟店については2018年3月までの完了を目指すと、すでに経過しています。いずれにせよ、契約カード会社などから対策に関する説明があるはず、あるいはすでにあったはずで、規模の小さな店舗などは機器をリプレイスするだけで対応できるので負担も少ないでしょう。加盟店自らが積極的に対応し、早急にセキュリティ環境を整えたいものです。

日本版司法取引は企業にも影響

一方、同じく2018年6月1日に施行された制度が「日本版司法取引(*1)」です。これは、「刑事訴訟法等の一部を改正する法律(改正刑事訴訟法)」における改正項目の1つで、同制度の対象とされている犯罪に財政経済犯罪が多いため、「企業や関係者が巻き込まれるのではないか」と懸念されています。
(*1)正式には「証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度」

その詳細は他に譲るとして、日本版司法取引を端的にいえば「検察官が、被疑者(いわゆる容疑者)や被告に対し不起訴処分や求刑の軽減などを約束し、その見返りに共犯者などに対する捜査・訴追への協力を求める取引を制度化」したものです。例えば、企業の取締役と従業員が共謀した贈賄事件で、従業員が贈賄の計画や実際に贈賄した状況の詳細な供述を行うことで検察官の捜査に全面協力。その見返りとして、従業員は起訴猶予処分や軽い求刑となるといった具合です。

司法取引といえば米国のドラマなどで見られるように、「容疑者が罪を認めて減刑される」、あるいは「組織関係者が内部情報を供述して他の構成メンバーの逮捕に協力する」といったイメージでしょう。

前者は自己負罪型、後者は捜査・訴追協力型の司法取引といわれるもの。今改正で認められたのは捜査・訴追協力型のみ。さらに、取引の協議から合意まで、弁護人の関与が要件となるなど独自の規定が設けられているため、米国などの制度とは区別する意味合いで日本版とされているようです。

日本版司法取引のポイントをまとめると、以下のようになります。

 ・他人の事件について捜査・訴追に協力
 ・司法取引の協議から合意まで弁護士が関与
 ・司法取引の対象となる事件(特定犯罪)を規定

特定犯罪で摘発された被疑者や被告が、特定犯罪に関わる他人の刑事事件に協力する場合に、弁護士関与のもと司法取引の協議を行えるというわけです。

司法取引の施行により、「検察などの捜査機関は企業犯罪の端緒を把握しやすくなる」といわれています。このため、閉じられた環境で行われているため露見しにくかった談合や贈収賄などの摘発が増えると見られています。取引先が多い企業などは、従業員が意図せずして、こうした犯罪に巻き込まれる可能性があります。

さらに、両罰規定(違反者だけでなく、その違反者が所属する企業にも罰則を科すこと)がある犯罪の場合、企業自身も処罰を受けることがあります。企業自身が訴追され有罪判決を受けた場合、社会的イメージの損失が大きいだけに、これは避けたいところ。この点、日本版司法取引では企業の罪が問われた場合でも、特定犯罪では企業自身が司法取引の主体として検察と協議することも可能との見解が示されています。

企業は役職者や従業員が法令違反行為に関与しないよう、これまで以上にコンプライアンス遵守を徹底すると共に、日本版司法取引についてしっかりと理解を深め、万一の場合に備えておくことが不可欠といえるでしょう。(長谷川丈一)