AIoT武器にペット市場へ参入/シャープAIoTをフル活用したシステムトイレ
飼い猫の健康状態を日々「定点観測」

 先日、シャープがユニークな新商品を発表しました。猫用システムトイレ型ペットケアモニター「HN-PC001」です。シャープ得意のAIoTを活用した“飼い猫用トイレ”です。

 HN-PC001は猫の尿の量や回数、体重やトイレの滞在時間などを自動計測してクラウド上に記録し、これをシャープ独自の「異変検知アルゴリズム(AI)」で解析。尿量の多い・少ないや滞在時間の長短、体重の増減やトイレ回数の増減など異変が検知された場合には、飼い主のスマホに通知して猫の健康管理をサポートするものです。

 しかも、猫の多頭飼い(世帯当たり平均飼育頭数1.75頭)という現状のニーズに合わせて、別売りで個体識別バッジ「HN-PM001」を用意。猫の首輪に装着することで、最大で3頭までのデータを個別に記録・解析できます。

 発売は2018年7月30日、メーカー希望小売価格はHN-PC001が税別2万4800円、HN-PM001が税別3980円となっており、他に記録・解析サービスが月額300円(税別)かかります。

 この設定が高いのか・安いのかについては、動物を飼育していない自分には判断が難しいのですが、猫好きの知人に聞いた話では「健康管理することで動物病院への通院回数が減らせたり、治療費の減少などにつながるのであれば、決して高くはないのでは」とのこと。そして何よりも、「猫のためのこういったサービスを事業化したこと自体が注目できる」と前向きに評価していました。

猫のための“ソリューションビジネス”

 今回の発表で個人的に興味をひかれたのは、飼い猫マーケットについてでした。国内で飼育されている猫の頭数は952万頭(2017年/日本ペットフード協会調べ)とのこと。国内の総世帯数を5000万とすれば、ざっくりといって5軒に1軒が猫を飼っている計算ですから、けっこうな規模のマーケットです。ちなみに飼い犬は892万頭おり、両者を併せると1844万頭。これは同時期の、15歳未満の子どもの総数1571万人を、大きく上回る規模だそうです。

 しかも飼い猫の平均寿命は11.9歳(2014年)ですが、これは1990年の5.1歳から倍以上もの伸び。この傾向は今後も続くと予想されており、発表会に出席した鳥取大学の岡本芳晴教授は次のように解説していました。

 「猫の死亡原因のトップはガンで38%。ここに腎不全が22%で続いており、腎不全を克服するだけで、平均寿命はさらに5歳以上伸ばせるだろう」

 飼い猫の頭数はまだまだ増える余地があるわけです。そこに着目したシャープの試みは、成長ビジネスとして的を射たものといえ、その斬り込み役が「HN-PC001による尿の健康管理」というわけです。

 「猫の一次診療では飼い主への問診が重要。ここで飼い主が猫の症状を、どれだけ正確に獣医に伝えられるかにかかっている。HN-PC001による定点観測は非常に有効であり、正確な問診が可能になる。しかも多頭飼いのケースでは難しかった“どの猫が病気なのか”の見極めも、簡単に行うことができる」(岡本教授)。

 このコメントは、ペット愛好家にとっては福音のようなものかもしれません。前出の知人も「猫は病気の時が一番心配で、金もかかる。ここがクリアされるのだったら、飛びつく愛猫家は多いのではないか」と話していました。

 約1000万もの市場規模がありながら、これまでほとんど手つかずだった飼い猫の健康管理支援マーケット。その開拓に乗り出したシャープ。この取り組みは“インターネットを活用した新たなソリューションビジネス”という観点からも、非常に興味深いものではないでしょうか。(征矢野毅彦)