地方発!世界で活躍する会社お洒落なインソールでブランド発信、
パリで認められて「凱旋帰国」!!

日本ケミフェルト 株式会社[香川県]

香川県多度津町京町2番12号

代表取締役 吉田 寿

TEL. 0877-32-3251

URL. http://www.chemifelt.jp/

オンリーワンで世界に挑む!

 靴のインソールといえば、歩く時の衝撃を和らげるクッション材、あるいは靴のサイズを微調整するためのアイテム。こう思っている人が多いのではないか。足の裏に隠れるものだから、多くの場合、見た目は地味で、機能性を最重要視している。

 しかし、香川県多度津町の特殊素材メーカー、日本ケミフェルトが創り出したインソールは違う。格調高い着物の柄やカラフルな花柄をあしらったり、芝生や砂利、ニットの編み目をモチーフにしたり、かわいいクマやネコのイラストを描いたりと、ファッション性にあふれている。

 この個性的なインソール「SOKO」シリーズは、2012年1月、パリの国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」でデビュー。普通は初出展後、受注まで3年はかかるといわれる中、いきなり契約を獲得。以降、約10カ国で販売されてきた。

 「こういうコンセプトのインソールはない。そうでないと、オンリーワンにはなりません。地方の中小企業が打って出るには、オンリーワンでなければいかんのです」と吉田寿社長は力を込めて語る。

 吉田は愛媛県川之江市(現四国中央市)でスーパーマーケットを営んでいた家の長男。将来、家業を継ぐつもりで、役員として働いていたが、地元に大手スーパーマーケットが進出して業績が悪化。2000年に会社は倒産してしまう。

 その後、吉田はうどんのセールスを2年ほど続けた後、日本ケミフェルトに入社。社長を務めていた義父が倒れたことがきっかけだった。

 「それまでの食品流通とは違う業界ですが、差別化できるオリジナルの商品を持っており、面白味はある。私も一応、経営者としてやっていたので、一丁やったろかと思いました」と吉田は当時の思いを話す。

オリジナルの特殊素材で勝負

 日本ケミフェルトは1959年、大手靴メーカー、月星化成(現ムーンスター)の子会社として設立。「ケミフェルト」とは“ケミカルな(化学的に合成した)フェルト”という造語。商標登録もしている同社独自の特殊素材だ。

 ケミフェルトは、天然ゴムに特殊なナイロン繊維を加えて製造。ゴムよりも軽くて、弾力性はもちろん、通気性もある。

 さらに適度に滑りがよく、しかもグリップ力が優れているという、相反する二つの特性を併せ持つ。こうした特長を生かして、靴のインソールや大型テレビの足ゴム、車の天井の緩衝剤、介護用椅子の座面などに活用されている。

 吉田が入社したのは35歳の時。最初は分からないことだらけで、薬品の配合の仕方やゴムの練り方など、基礎から現場で覚えていった。学ぶうちに、スーパーマーケットの仕事との共通点があることに気づく。

 「お総菜の部門では、よく考えて調理することによって、オリジナリティのある味が出せる。ゴムの場合も同じで、薬品などの配合を変えることによって、独自の素材を作れます。地方の小さなメーカーであっても、付加価値を付ければ、世界を相手に発信できる。可能性がある、と思いました」

 とはいえ、当時は家電メーカーや自動車会社の下請け仕事に忙しく、独自の商品作りに向けて本格的に動くことはできなかった。

ブランドの方向性は「アート」

 2010年頃、日本ケミフェルトの工場はフル回転で稼働していた。2011年の地上デジタルテレビ放送移行に向けて、全国的に地デジ対応テレビの特需が続き、足ゴム用の素材製造に追われていたのだ。

 しかし、引っ切りなしに注文が入る中、吉田は危機感を覚えていた。この特需はもうすぐ終わる。一気に売り上げが減るのは、火を見るよりも明らかだ。今こそ、一般の顧客に向けた自社ブランドを作らねばならない──。

 2011年、ブランド作りを先行して行っている県内企業から、東京在住の生活用品デザイナーを紹介され、ブランディングに着手。吉田いわく、“居酒屋ミーティング”を重ねながら、独自の商品作りに取り組む。勝負するのは、創業以来のノウハウが蓄積された靴のインソールだ。

 「ニッチな世界ですが、足で悩んでいる人は多く、商品として分かりやすい。普通の中敷きはEVAという軟らかい素材で作ります。しかし、これはクッション性があるだけ。ケミフェルトは抗菌、消臭、調湿といった機能も備えています。こうした素材の良さをベースとし、ブランドの方向性をアートに振れば、食いついてもらえるのではないか、と考えました」

 こうして生まれたのが、実にオシャレで、機能性にも富むオリジナルインソール「SOKO」だ。JETRO(日本貿易振興機構)の協力を得て、世界最高峰のインテリア&デザイン関連見本市「メゾン・エ・オブジェ」を発表の場とした。

文具の新ブランドは米国で注目

 国際的な大舞台を選んだのは、まず世界の最先端で評価され、「凱旋帰国」を果たそうという目論見だ。デザイン性の高い商品では、よく使われる戦略だが、認められるためのハードルは高く、玉砕するケースもしばしば……。

 しかし、これまでにない個性派インソール「SOKO」の提案力は強い。世界各国のバイヤーが訪れ、興味深げに展示を見ていく。実際に商談も成立し、ドイツのインテリア製品卸業者から受注した。

 また、東急ハンズのバイヤーも興味を示し、表参道原宿の店舗で扱われることが決定。狙い通り、「凱旋帰国」することに成功した。

 ただ、「SOKO」を世界に発信する場合、欧米の「靴を脱がない文化」が気になるところだ。

 「でも、意外にパリの靴店では、ソフトシューズやルームシューズをけっこう売っているんですよ。ということは、家では脱いどるやんかと(笑)。浸透するのに時間はかかるかもしれませんけど、マーケットはあると考えています」

 「メゾン・エ・オブジェ」には2014年、15年にも出展。海外だけではなく、国内でも海外からバイヤーが訪れる商談会に積極的に参加した。

 さらに、2015年には文具の新ブランド「CORCHO CORCHO」を立ち上げて、北米最大級のデザイン雑貨・日用品見本市「NY NOW」に出展した。別のデザイナーとのコラボで、ぐっとシンプルなデザインが特徴。メモ帳の表紙にケミフェルトを使った商品などを提案し、アメリカでの反応が良かったと言う。

 今、インソールと文具のブランドの売り上げは、全体の1割強。これを3割ぐらいまで上げていくのが、今後の課題だ。「勝負するのは、値段ではなく感性。一生懸命に考えて、感性が世界に向いてさえいれば、どこで作ろうが関係ない」と海外で得た経験から語る。

 「自社ブランドは、会社を知ってもらうためのアドバルーン」と話す吉田。ここ6年の取り組みにより、随分遠くから見える高さにまで上がったのは間違いないだろう。(敬称略)