2019年度税制改正の動向は!? 経済産業省が要望を提出個人事業者と中小企業の事業承継促進
設備投資関連減税、延長・拡充を要望

2019(平成31)年度税制改正の大綱公表に向けた準備が進んでいます。例年通り各府省庁、税理士連合会や会計士協会などの関係団体から要望書や意見、建議書などが提出されており、中小企業の税制に影響を与える経済産業省も「平成31年度経済産業省税制改正要望」を2018年8月31日にまとめました。

要望書のポイントでは、大枠として「1.地域経済の活性化、中小企業・小規模事業者の生産性向上」「2.車体課税の抜本見直し(ユーザー負担の軽減等に向けた見直し)」「3.生産性革命の実現に向けたイノベーションの促進」「4.グローバル化に対応した競争環境の整備」の4点が挙げられています。

このうち、中小企業や小規模事業者の事業などに関連するのが、「1.地域経済の活性化、中小企業・小規模事業者の生産性向上」です。その内容と改正概要を見ていきましょう。

事業承継対策を促進

●2019(平成31)年度税制改正における「1.地域経済の活性化、中小企業・小規模事業者の生産性向上」のポイント。経済産業省の資料より引用

中小企業や小規模事業者向けの2019年度改正で、“これ”というような目玉的なものはなさそうですが、新設制度として「個人事業者の事業用資産に係る事業承継時の負担軽減措置」と「事業承継ファンドから出資を受けた場合の法人税等の特例」の創設要望が出されています。

ここ数年、税制改正の大きな傾向として中小企業・小規模事業者における事業承継の後押しに注力していることが挙げられます。この背景には、「2020年までに世代交代の平均年齢とされる70歳に達する経営者が30万人に達するにも関わらず、70代や80代の中小企業の経営者でも半数以上が事業承継の準備を終えていない」といった社会的要因があります。このため、行政は2016年頃から事業承継促進のための施策を強化しており、税制面からの支援も、その1つとなっているわけです。

「個人事業者の事業用資産に係る事業承継時の負担軽減措置」は2018年度改正でも提出されていましたが、そこでは見送られたたため、2019年度で改めて要望されました。制度設計などの詳細は明らかにされていません。しかし、「個人事業者は一般的に資金力が低く、事業承継時の税負担のために事業承継時に必要不可欠な事業用資産を売却しなければならない事態を防ぐための措置を構ずる必要がある」としており、承継による事業存続のためにも思い切った減税策が望まれます。

●「個人事業者の事業用資産に係る事業承継時の負担軽減措置」創設の概要。経済産業省の資料より引用

一方、「事業承継ファンドから出資を受けた場合の法人税等の特例」は、中小企業のM&A(親族外承継)を促すことが目的。どれほど優良企業であっても、後継者がいなければ事業の存続はままなりません。そうした中で、注目されているのが親族外承継。オーナー経営者から株式を買い取って経営権を取得する事業承継ファンドも、その1つです。

しかし、事業承継ファンドを通じた大規模法人による出資が一定比率を超えた中小企業は「みなし大企業(資本金1億円以下の事業者で、発行済み株式等の2分の1以上を同一の大規模法人が所有、または3分の2を大規模法人が所有)」として、さまざまな中小企業税制の適用を受けることができません。

そこで、事業承継ファンドによる事業承継を促進するため、「一定の要件を満たす事業承継ファンドから出資を受けた場合、中小企業税制を適用できる」制度の創設が要望されています。

●「事業承継ファンドから出資を受けた場合の法人税等の特例」の概要。経済産業省の資料より引用

設備投資の活性化、研究開発支援、経営基盤強化

中小企業や小規模事業者などによる設備投資関連の減税策では、延長や拡充が中心となっています。延長や拡充などの要望が出された制度は、「中小企業投資促進税制」「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」「中小企業経営強化税制」などで2年間の延長要望が提出されました。さらに、研究開発に関連した減税制度として「中小企業技術基盤強化税制」についても拡充と延長の要望が提出されています。

●「中小企業投資促進税制」は単純延長。経済産業省の資料より引用
●「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」拡充・延長の概要。経済産業省の資料より引用
●「中小企業経営強化税制」の延長・拡充の概要。経済産業省の資料より引用
●「中小企業技術基盤強化税制」の拡充・延長の概要。経済産業省の資料より引用

また、「中小企業等の法人税率の特例」も2年間の適用延長が要望されています。資本金1億円以下の中小法人は、本則として年800万円以下の所得に対して法人税率が19%に軽減されていますが、さらに特例により15%に軽減されています。

同減税制度は2019年3月末までの時限措置ですが、「2016年には約90万の事業者が利用しており、本税制措置がなくなると設備投資や賃上げに悪影響を与える」との理由から、延長が要望されました。

経済産業省が提出した要望書の概要については、こちらのページを参照してください。個々の制度の概要についてまとめられています。

例年通りならば、2019年度の税制改正大綱は12月中旬から下旬にかけて公表される予定です。見送られる要望も出る可能性はありますが、大枠としては要望から大きく外れることなないでしょう。(長谷川丈一)