水銀灯の生産終了を宣言/パナソニック水俣条約を受け2020年6月に生産終了
今後は業務用LED照明の提案を本格化

 パナソニックが2020年6月をもって「水銀灯の生産を終了する」と発表しました。2013年に採択・署名された水俣条約に対応するためで、今後は水銀灯が多く使われている高天井用照明や投光器、街路灯、道路照明などについてLED照明器具のリニューアル提案を強化するとのことです。

「水俣条約」とは?

 水俣条約といわれても、ピンとこない方も多いかもしれません。正式には「水銀に関する水俣条約」といい、2013年10月に熊本県で開催された国連環境計画の外交会議で採択・署名され、2017年8月に発効されたもの。第1条の目的には「水銀及び水銀化合物の人為的な排出及び放出から人の健康及び環境を保護すること」と記されています。

 具体的には、水銀の一時採掘から貿易、水銀添加製品や製造工程での水銀利用、大気への排出や水・土壌への放出、水銀廃棄物に至るまで、水銀が人の健康や環境に与えるリスクを低減するための包括的な規制を定めた条約です。そのための施策の一つが「水銀を使用した一般照明用の水銀灯について、その封入量に関係なく、製造や輸出入の2021年からの禁止」です。

 以下は照明に関する主な条約の内容です。
・一般照明用の高圧水銀ランプの製造・輸出・輸入を2021年以降禁止
・メタルハライドランプ・高圧ナトリウムランプは規制対象外
・紫外線ランプなど一般照明用以外の特殊用途用ランプは規制対象外
・蛍光灯は水銀封入量を規制
(5~10㎎/パナソニックでは蛍光灯照明器具について、2019年3月末の生産終了を発表済み)

世界の水銀被害の実情

 実は個人的には、LED照明の取材にかかわるまでは、水銀被害などには全く関心がなかったというのが正直なところです。水銀による健康被害と聞いても、今時どこの国の話、ぐらいにしか考えていませんでした。

 ところが全世界の水銀の、年間利用量は3000トン以上もあり、その最大の用途が「零細小規模金採掘」だということを、取材を通じて初めて知りました。

 同採掘はコストを優先した原始的な手法で、アフリカやアジア、中南米の途上国を中心に世界70カ国以上でいまだに行われているとのこと。砂金と水銀とをアマルガム化(水銀と砂金との合金)し、これを加熱して水銀を気化させて残った金を取り出す手法です。
 
 その際、作業員は気化した水銀を吸い込んでしまい被害にあうわけです。全世界にはこの作業に従事している人が1000万人以上もおり、その半分近くが女性、子供も1割程度含まれているという事実を知ったときには、愕然としたことを覚えています。

 この作業に必要な水銀の、主要供給源の1つが廃棄された水銀灯や白熱電球など。この製造を禁止することで、金採掘用の水銀の供給を抑制。零細小規模金採掘そのものの廃絶を目指すのが水俣条約の主旨ですが、LED照明という新たな照明装置が出てきた今となっては、一刻も早い対応が待たれるところです。

LED照明の入れ替えはランプのみか? 器具ごとか?

 今後はパナソニックに限らずすべての照明メーカーが、どこかのタイミングで水銀灯の製造を中止することになります。すでに白熱電球や蛍光灯などではLED照明への置き換えが加速していますが、今後は業務用として広く浸透している水銀灯の、LED照明への入れ替えが本格化することになります。

 水銀灯をLED照明に置き換えることのメリットには次のようなものがあります。
・消費電力の抑制:水銀灯比30~40%
・長寿命化:水銀灯比約5倍の6万時間
・演色性(色の見え方):水銀灯との比較ではるかに自然光に近い
・低温特性:▲20℃(水銀灯は▲5℃)
・始動:瞬時に全灯(水銀灯は徐々に始動)

 特に照明のコストを考えた場合、LED照明の低消費電力はかなり魅力的なはず。しかも、長寿命による交換頻度の低減も、そのための作業コスト抑制につながるだけに大きなメリットといえます。逆にLED照明へ入れ替えることのデメリットは考えにくいだけに、事業者にとってはきわめて合理的な選択だと思います。

 一つ問題があるとすれば、照明器具ごとの入れ替えか、ランプのみの交換か、ということでしょう。初期コストだけを考えればランプのみの交換の方が安く済むことは確かです。しかしながら照明器具にも寿命があり、古くなった器具を使い続けることは、安全性や省エネ性の面から疑問視する声が少なくないことも事実です。

 これについては特に規制があるわけではなく、ユーザー個々の判断に委ねるしかありません。LED照明への入れ替えについては、ランプだけでなく器具をどうするのかについても、専門家とじっくり相談することをお勧めします。(征矢野毅彦)

パナソニックLED投光器「NNY24600K」