デジカメ新時代「フルサイズ・ミラーレス」キヤノン、ニコンが相次ぎ新規参入
プロが大絶賛!! 異次元テクノロジー

パナソニックも新規参入を表明

 今、カメラ業界は35mmフルサイズ・センサーのミラーレスカメラの話題で持ち切りです。ソニーが2013年に初のフルサイズ・ミラーレス「α7シリーズ」を発表し、先鞭をつけたこの市場に、この秋、ニコン(Z7&Z6)、キヤノン(EOS R)が相次ぎ新規参入。さらにはパナソニックやシグマも参入を表明するなど、今や“フルサイズ・ミラーレスにあらずんばデジカメにあらず”といった様相です。

 個人的にはEOSのミラー式デジタル一眼レフ(以下、一眼レフ)をメイン機としており、十分に満足しているのですが、この急速な潮流変化に「この先、どうしたものか」と思案していることも確かです。今後、キヤノンやニコンは、レンズやアクセサリーのニューモデルではミラーレス中心となることが明らかですし、一眼レフは早晩、過去の遺物となる可能性が高そうだからです。

 キヤノンはEOS Mシリーズというミラーレスもラインアップしていますが、こちらはAPS-Cセンサー搭載の、カジュアルなモデル。悩むほどの存在ではないのですが、EOS Rはフルサイズ・センサー。しかも、マウントまで変更しており、キヤノンの今後の本命シリーズであることは間違いありません。ソニーやニコンのフルサイズ・ミラーレスも同じ位置づけにあり、買い換えるかどうかを悩んでいるユーザーは非常に多いと思います。

 それにしても、カメラ好き以外の人からすれば「フルサイズって何? どこがいいの?」という話でしかないでしょう。これはデジカメの心臓部であるセンサーのサイズを指していて、フルサイズとは36mm×24mmの大型のもの。昔の35ミリ・フイルムと同等サイズなので、フルサイズと呼ばれています。
 以下に主なデジカメのセンサーサイズをまとめてみましょう。

 ●フルサイズ:36×24mm/864平方mm
 (各社のフラッグシップ一眼レフが採用している大型センサー)
 ●APS-C:23.6×15.8mm/372.88平方mm
 (一般的な一眼レフが採用しているセンサー。キヤノンのものは、これより一回り小型)
 ●マイクロフォーサーズ:17.3×13mm/224.9平方mm
 (オリンパスとパナソニックがミラーレスカメラに採用しているセンサー)
 ●1/2.3型:6.2×4.7mm/29.14平方mm
 (一般的なコンパクトデジカメが採用しているセンサー)
 ●1/2.5型:5.7×4.3mm/24,51平方mm
 (iPhoneやスマホなどが採用している小型センサー)

 一言でセンサーといっても、これだけサイズの差があるわけです。一般的な一眼レフに搭載されているAPS-Cと比べても、フルサイズは倍以上の面積。センサーが取り込む光の量が多く、それだけ高画質ということができます。実際、フルサイズ・ミラーレスの市場参入を表明しているパナソニックのコメントを見ると「さらなる高解像度やより豊かなボケ味を追求するためには、フルサイズが必要になると考えていた」と発言しています。

 パナソニックはオリンパスと同様にマイクロフォーサーズ・センサーを採用しており、優れた動画性能やコンパクトさを生かしたカメラ作りに定評があります。しかも同社は、2008年に世界初のミラーレスカメラDMC-G1を発売したパイオニア。そうしたメーカーがフルサイズの参入を表明したということは、やはりフルサイズの高画質を裏付ける一つの証左といえるでしょう。特に同社の場合、今後の4K、8Kという動画トレンドを考えてもフルサイズが不可欠といえそうです。

プロが大絶賛する異次元の「AF機能」

 個人的に親しくお付き合いさせていただいている複数のプロ写真家と話をしていても、最近はフルサイズ・ミラーレスの話題一辺倒という状況です。自分がEOSユーザーということもあって、キヤノン系の写真家さんと接する機会が多いのですが、それらの方々はすべてEOS Rを購入済み。中には一眼レフのボディをすべて処分し(レンズは互換性あり)、今後はフルサイズ・ミラーレス一本で行くとい宣言している方もいるほど。

 ここで勘違いしていただきたくないのは、キヤノン系プロ写真家といえどもカメラやレンズ類は基本的にすべて自費で購入しているということです。キヤノンからは「貸与はあっても贈与はない」と皆さん、異口同音に話しています。つまりはプロが自分の使う道具として自らの意志とコストで、一眼レフからフルサイズ・ミラーレスへとシフトしているわけです。

 ただし、彼らの声をいろいろと聞くと、一眼レフとの比較でフルサイズ・ミラーレスが、格段に画質がよくなった、というような評価は今のところ耳にしていません。もとより近年のフルサイズ一眼レフは各社とも基本的な画質への評価が非常に高く、これを大きく凌駕するのは至難の業ともいえるでしょう。

 それよりもフルサイズ・ミラーレスへの高い評価は、操作系に集中しています。その最たるものがAF(オートフォーカス)に関するもの。

 例えばEOS Rの場合、AFフレーム選択可能ポジションは5655ポジション。これはファインダー内に設定するAFポジション(ピント合わせの位置)を5655の中から任意に選択できるということ。しかも、AFポジションは縦100%、横88%の範囲に分布しているので、ファインダー内のほぼすべてといっていい場所で、任意にAFポジションを設定できます。

 これがどういうシーンで役立つかというと、例えばこちらに向かって走ってくる列車をファインダーの隅において狙っても、AFが追いかけ続けてくれることになります。

 自分が今、メインで使っている一眼レフEOS 5Dマーク4はセンターを中心にした61ポジションですから、その差はまさしく雲泥! 画面の隅の列車を追いかけるAFは不可能なので“置きピン”というテクニックを使って対応していますが、EOS Rならカメラ任せでOKということになります。

 しかもすべてのポジションがF11対応AFというのも画期的です。この便利さをかいつまんで説明すると、例えば望遠レンズで焦点距離が足りない場合には、テレコンバーターというアクセサリーを使って焦点距離を疑似的に延ばすのですが、その際、トレードオフとしてレンズのF値が下がる(数字が大きくなる=レンズが暗くなる)という現象を余儀なくされます。

 F値が下がることのデメリットの一つは、AF機能が大きく制限されること。例えばAFが機能するポジションが限定されたり、AFの合焦速度がダウンしたり。そしてF11まで下がると、AFはほとんど機能しないというのがこれまでの常識であり、マニュアル方式でのピント合わせになります。それだけに、すべてのAFポジションでF11対応というのは、今まではまったく考えられなかった衝撃的な世界。知り合いのプロ写真家のすべてが、非常に高く評価している部分です。今までミラーレス嫌いで有名だったある写真家も、EOS Rを機に、完全乗り換えを検討しているほどです。

 思えば30年ほど前にキヤノンが初のAF一眼レフカメラEOSシリーズを発表した時にも、レンズのマウント方式を一新。従来型レンズとは互換性のないAF独自の新たな世界を提供して、ライバルのニコンとともにAF一眼市場を切り開いてきました。

 そして2018年。その2社がほぼ同時に新たなマウント方式によるフルサイズ・ミラーレス市場に参入したわけですから、時代は明らかに違う方向に進み始めたことは確かでしょう。世界的なデジカメ・マーケットは今、シュリンクが続いていますが、フルサイズ・ミラーレスの拡充がどんな変化をもたらすことになるのでしょうか。一カメラマニアとしては、一人でも多くの方がカメラに目を向けるようになれば、と願う次第です。(征矢野毅彦)