製鉄所への各種提案◎JFEスチール西日本製鉄所(岡山県倉敷市)取引の起点はドライブレコーダー
第2弾は「コンベア監視装置」に!!

JFEスチール西日本製鉄所(岡山県倉敷市)

製鉄所への各種提案

JFEスチール西日本製鉄所(岡山県倉敷市)

「ヤマダ電機といえば家電小売り。それがビジネスソリューションで、これほどの開発力・提案力があるとは知りませんでした。今やすっかりイメージが変わりました」

こう語るのは大手鉄鋼メーカー・JFEスチールの西日本製鉄所倉敷地区環境防災室長・田所謙一郎氏だ。同社は11月8〜9日にかけて、ヤマダ電機法人事業部主催のソリューション展示会「鋼のIoT 2018」を構内大会議室で開催した。

次ページで紹介しているように、多数の最新ビジネス系ソリューションを紹介。二日間で延べ800名以上もの来場者を集める大盛況となった。

このイベントはJFEグループの各部署や多数の同社パートナー企業を対象としたクローズドなもので、JFEとしては初の試み。ヤマダ電機にとっても新たなスタイルのイベントであり、当初はどれだけの集客があるかを測りかねる状況だった。

だが、蓋をあければ予想以上の大盛況。JFEとの窓口役を務めるヤマダ電機・高藏正典大阪地区部長は「事故もなく無事に終わってホッとしました」という。そして、印象に残ったこととして「多くの来場者が、当社の提案を真剣に聞いてくださったこと」をあげている。

きっかけは「ドラレコ」

JFEスチールがヤマダ電機と取引を始めるきっかけとなったのは、昨年秋、クラウド活用型ドライブレコーダー「無事故プログラムDR」を導入したことだ。

これは、車載カメラと日本ユニシスのデータセンターとが常時通信し、危険運転やトラブルなどがあった場合、その映像や場所などをリアルタイムで管理者へメールするもの。JFEスチール西日本製鉄所倉敷地区では現在、10台に試験導入している。

同社構内を行き交う車両は1日に1万3000台にも及ぶだけに、事故予防は重要テーマの一つだ。その一環として3年前から汎用ドライブレコーダーを装着。これにより事故件数が35%ほど下がったという。

もともと同社の事故率は、エリア内大企業として最低水準を維持しており、直近の事故件数は年間20件ほど。これはJFEグループ内でもトップの実績であり、地元警察から「どういう取り組みをしているのか」との問い合わせがあったほどである。

「しかし、ゼロではありません」と田所室長。次の一手を模索していた時に、無事故プログラムDRと遭遇。「これはいける! と直感したことが、ヤマダ電機との取引のきっかけでした」と話す。

昨年の岡山県は死亡事故が増加するという非常事態に陥っただけに、水島コンビナートを代表する企業として、事故率のさらなるダウンはミッションともいえる。

試験導入の効果について、田所室長は「確かな手応えを感じている」と話す。例えば月に1回開催している安全会議では、危なかった運転状況の映像を公開。どのエリアが、どう危なかったのかについて分析し、どう対策すべきかを議論することで、安全運転の手法を掛け声ではなく、具体策として共有している。

これは録画するだけの汎用ドライブレコーダーとは違う、クラウド型の無事故プログラムDRならではの活用法だろう。田所室長は今後、全車への採用を計画しており、それにより現状で年間20件の事故件数を「一桁台にまで、一気に下げる」と意気込んでいる。

重要課題「コンベア監視」

無事故プログラムDRを通じてJFEとの取引をスタートしたヤマダ電機は、提案の第2弾として今、本業に踏み込んだソリューションを展開している。それは「ベルトコンベア・ローラーの異常回転を検知するシステム」である。

JFEの構内には、溶鉱炉の燃料となるコークスなどを運搬するベルトコンベアが無数に張り巡らされている。推進力であるローラーの数は、3万個以上にも及ぶ。

そのローラーが一つでも回転異常を起こせば、燃料の運搬に支障をきたし、作業の円滑化を妨げたり、滞留した燃料がトラブルを引き起こす危険性もある。

それだけにローラーの監視は重要任務。だが、従来は監視員による目視が主流であり、3万個のローラーすべての確実な監視には限界があった。「監視員の作業を支援するシステムがないか」ということが、JFEの重要な課題だったのである。

この話を田所室長とのミーティングの中から聞きつけたヤマダ電機の高藏部長は、即座に「実証実験をやらせてください」と申し出たという。パートナーの日本ユニシスが、ローラー監視に転用が利きそうなソリューションを用意していたからだ。

それは、一つひとつのローラーに小型のセンサーを設置し、個々の回転状況をリアルタイムで監視するもの。すべてのデータは日本ユニシスのIoTビジネスプラットフォームへ送信され、リアルタイムでチェック可能。そして、ひとたび回転異常が発生すれば、異常を管理者へ送信するシステムである。すでに一部のベルトコンベアに設置され、本格稼働への準備が着々と進んでいる。

大手メーカーにないヤマダの強み

これだけの大掛かりなソリューションが、ヤマダ電機の提案によるものという事実は、驚きといえるだろう。JFEスチールほどの大企業であれば、名だたるITメーカーやソリューションベンダーが、提案合戦を繰り広げることが普通だからだ。

実際、ローラー監視についても、ヤマダ電機と同じタイミングで大手ベンダーが提案していた。にもかかわらずヤマダ電機に決まった一番の要因は「スピードの速さ」だった。

製鉄所の屋外ベルトコンベアでセンサーを安定稼働するには、防塵・防水ケースへの装着が不可欠だが、大手ベンダーはこの設計に時間がかかったのだ。ところがヤマダ電機はこれを、3Dプリンターを使って1週間で仕上げたのである。

「その時です。『ヤマダはやる気だ』と思ったのは」と田所室長。「たった1週間でカタチにしてくるとは思いもよらなかった。本気だと分かりました。仕事は盛り上がった時に、一気にいきたいじゃないですか」

現実にJFEでは様々な大手メーカー製ソリューションが各所で稼働しており、田所室長は立場上、そうしたメーカーとの付き合いも長い。

だが、この間感じてきたことは「システムが大きすぎて応用が利きにくい」ということ。JFEのやり方に沿った完璧な最適化ができず、JFEがシステムに合わせなければいけない局面が少なからずあるからだ。

「ヤマダ電機には、それがない。我われのやり方を最優先してくれ、その上で『だったら、こういうソリューションはどうか』という提案になる。うちに寄り添ってくれるんですね。そこが大手メーカーとの一番の違いです」(田所室長)

ヤマダ電機は今回の「鋼のIoT 2018」で、多数のソリューションを紹介し予想以上の反響を呼んだ。これは田所室長の「当社社員に、最新ITに触れる場を提供したかった」という狙い通りの結果だ。そしてこれらは必ずや、JFEとの次なる結びつきの萌芽となるはずである。