本田雅一のスペシャルレポート“Premium”/ついに始まる!!「新4K・8K衛星放送」NHK「4K作品」を先行視聴
予想以上の出来栄えに大満足!!

ライター:本田雅一(フリージャーナリスト)

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ついに始まる!!「新4K・8K衛星放送」本田雅一のスペシャルレポート

12月1日から、いよいよ各社による4K放送、およびNHKによる8K放送が始まる。4K映像に関しては、すでにネット配信業者を中心に4Kの映像作品が消費者の手元に届けられ、またCS放送ではスカパー!プレミアムの4K放送が定着している。

しかし、NHK、日テレを除く在京民放キー局の放送回しは、日常が4K化するという意味において大きな意味がある。では、12月1日以降、4K・8K放送はどのような内容になっていくのか?

今回はNHKの高精細放送チャンネル「BS4K」、「BS8K」に関して、番組の概容について映像クリップを視聴する機会があった。関係者への取材を交えながら紹介しよう。

毎日18時間、毎週40本を供給

実はNHKは、1年前の段階で「制作はすべて4K以上の解像度で行っている」と話していた。番組作りはほとんど4K化。受信料で運営されているNHKならではの先行投資といえるが、注目はより多くの人が視聴することになるだろうBS4Kの充実度とコンテンツの“幅”だ。

通常のハイビジョン放送も同時に行っているだけに、そこに“高精細”、“HDR”といった要素をどう加えていくのかが注目される。

その規模は「毎日18時間、毎週40本の新作」というものだ。高画質コンテンツといえば、自然や歴史ドキュメンタリなどの“ファクチュアル”というジャンルが定番。そこに、すでに4K撮影が定着している映画、あるいはフィルム制作の4K復刻版などを揃えれば、ある程度の本数は確保できる。だが、それでは実用放送の枠を埋めることはできない。

一方で、一般的な番組編成はハイビジョン放送で行っている。日常のお茶の間に届ける映像は地上波、BSともに数チャンネルを運営している。では、BS4Kはどうなるのか?

まず、平日の朝やプライムタイムの編成は、ハイビジョン放送と一体化したものになるという。すでに4Kで制作しているため、それを4Kチャンネルでもそのまま放送するというわけだ。

しかし平日の日中は曜日ごとにテーマ性を持たせ、4K及び4K/HDRの魅力を伝えるコンテンツを放映するという。つまり「今日は火曜日だから、宇宙をテーマにした特集番組を4Kで楽しめるかな?」といったイメージを定着させ、まずは視聴者に4K映像との接点を持ってもらうということだ。

具体的には、

 

  • 月曜:音楽・伝統芸能・エンターテインメント
  • 火曜;自然・科学・宇宙
  • 水曜:ドラマ
  • 木曜:文化・教養・教育
  • 金曜:紀行・地域・暮らし


 
こういったジャンル分けで、それぞれに最新技術を活かしたコンテンツを用意する。その上で、週末に4K画質を強く意識した特番を数多く編成する。

特に土曜日はBS4Kでしか見ることができない、高精細映像を活かした自信のあるコンテンツを投入する。4K映画を放映する「4Kシアター」も土曜日夜9時からの枠を割り当てるなど、比較的、視聴者が余裕を持てる土曜日に高精細を押し出した番組を創って行く。

4Kコンテンツの軸となるのは、定番の紀行ものや海外取材を含む自然科学などのファクチュアルコンテンツ、スクエアエニックスと共同制作するフルCGコンテンツ、それに過去の人気コンテンツのうち、フィルムネガで保管されているアーカイブコンテンツを最新技術で修復した映像、それに4Kでの放映を意識して制作するドラマなどだが、驚いたのはその映像の品質だ。

取材した編成局展開戦略推進部チーフ・プロデューサーの金谷美加氏は「BS4Kは、NHKが取り組んでいる超高精細映像への入り口です。今後は4Kを基本画質として制作に取り組み、その上で特別な作品を週末に流すべく作品を創っていきます」と話してくれた。

各ジャンルに“密度の濃い”番組

定番の紀行ものは「フロム・ザ・スカイ〜4K空紀行〜」。ドローンを用いた空からの広角映像で、日本の名所を巡る。隅々まで細かな情報が詰まった映像はHDR制作。HDR映像は窓から風景を見るように高いリアリティを得られることが特徴だが、その圧倒的なリアリティは、これまでの放送にはなかったものだ。

実際に空を飛んで景勝地を巡ったような気分になれる、4Kの高精細、HDRおよび広色域を活かしたダイナミックレンジと深みが上手に活かされている。

スクエアエニックスと共同制作の「人類誕生」(英語:Out of the Cradle)は、100%CG制作で作られた映像。光学デバイスを通さないため、制作者がこだわって作り出した映像の質感がそのまま楽しめる。

ドラマは大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)」が100%、4Kのワークフローで制作される。これまでも4Kカメラは使われていたが、このドラマではセットやメイク、衣装などに至るまで4Kを意識したものだ。

ニュース番組も、ウィークリーで30分ではあるが、4K向けに特別編集する放送枠がある。取材用カメラでも4K記録し、災害地などの様子をより高い現実感で伝える他、従来のカメラでは写っていなかった細かな情報(広報用クリップでは、拿捕した外国の船の積み荷を拡大し、日本製の船外機などが搭載されている……などの使い方がされていた)を拡大して、ハイビジョンとの差異化を図っていた。

このほか海外ロケの紀行もの、HDRを活用してスタジアムの雰囲気をより現実に近い映像で伝えるスポーツ中継も行われる。

前述したように、現在、NHKはすでに4Kでの撮影が主となっているため、4Kコンテンツそのものが多い。あらゆるジャンルに関して層が厚く「密度の濃い」ものが多いが、その中でも、実際の映像を見て「これは!」と納得させられた映像作品群がある。それは極めて質の高いフィルム作品のレストア版だ。

「奥さまは魔女」を4K化

レストア作品の放送は多岐に亘っており、海外ドラマ、NHKのオリジナル番組の両方で、フィルムネガからのスキャン、復元作業を経た作品が放映される。

海外ドラマは、現在分かっている範囲では、日本で特に人気の高かった「奥さまは魔女」「刑事コロンボ」がネガフィルムからのスキャンと修復処理などにより、極めて良い画質で復活する。前者は16ミリフィルム、後者は35ミリフィルムからの復元だが、試聴した映像はいずれも極めて高画質だった。

映画祭も開催されるカンヌのシアターで両方のクリップを楽しんだが、フィルムからのスキャンだけに、極めて情報量が多く、色彩情報も見事に再現されていた。大作と呼ばれる映画と同等の復元レベルである。

この両作品はハリウッドで復元処理が行われたものを買い付けて放送するが、編成局編成センターの笠井氏によると、NHKが所蔵するフィルム作品に関しては、特に1960年代にフィルム制作されていた番組アーカイブを、NHK自身が復元処理しながら放送を行っていくという。

米国で開発されたAIを用いた復元アプリケーションを使い、スキャン処理から復元の第一段階までを簡素化できるようにしたことで、所蔵する3500本以上のネガフィルムを効率的に処理可能になったという。

最終的には人間が確認して手作業も加わるが、かなりの範囲をソフトウェア任せにできるようになり、膨大なアーカイブを高品位に現代に蘇らせることが可能となった。当時の放送と比較し、高性能なスキャナでフィルム情報を読み取っているため、以前なら分からなかった情報も映像に反映される。

このツールで真っ先に取り組んだのが、35ミリフィルムで制作された「ミクロワールド」という番組で細胞の世界を紹介したものだ。

また新日本紀行という、かつての人気番組であり、1960年代の日本のリアルを映しだした番組は16ミリフィルムでの撮影だったそうだが、こちらも修復技術の進歩もあるのだろう。4Kでの放送に充分な納得感がある仕上がりだった。

日本の巨匠と言われる映画監督の作品も、BS4K向けに復元版を放映する。小津安二郎、黒澤明、溝口健二。三人の代表的な映画監督の作品の4Kリマスターを行う。カンヌでは「羅生門」の高鮮度の映像が流されたが、元となるネガがモノクロということもあり、現代のレベルで見ても高精細で細かなディテールが際立つ映像に仕上がっていた。

こうした無限とも思えるアナログコンテンツの4K復元は、今回発表されたタイトルだけでなく、さらにスコープを広げて多様なコンテンツの復元、放映が行われる予定だ。

8Kの可能性示す「セノーテ」

一方、8K放送はFIFAワールドカップ、フィギュアスケートNHK杯、大相撲などの再放送をHDRで日中放映するほか、22.2チャンネル音声による音楽コンサート、8Kリマスターされた映画などの放映が予定されている。

4Kとは異なり、当面の間、エンドユーザーによる録画視聴が不可能であることから、高品位素材の繰り返し放送が行われる。8K番組の魅力を伝えるため、BS4Kでも夜10時〜12時までの2時間、「8Kベストウィンドウ」としてダイジェスト版を4K解像度でも放送する予定だが、やはり目玉は得意の“特番”だ。

メキシコはユカタン半島にある、サッカースタジアムと同等の大きさがある水中洞窟に、初めて8Kカメラを入れた「神秘の水中鍾乳洞 セノーテ」は、その透明度の高さ、“悪魔の鐘”といわれる幻想的な造形などに加え、海水と淡水が水中でハッキリと境界として視認できることで知られている。

屈折率の違いにより、澄み切った淡水から見ると海水との境目が、まるで海面のように見えるが、そのままカメラで撮影しても、なかなかその雰囲気は再現できない。

写真にある、まるで海面の上でダイバーが空を飛んでいるかのように見える映像は「巧妙なライティングによって、肉眼で感じられるように境目をハッキリと浮かび上がらせた上で、8Kカメラによってはじめて捉えることができた」と年間180本以上も水中撮影をしているNHKのカメラマン・松本恭幸氏は話す。

これ以外にも丁寧なライティングで美術品の風合いを完璧に8Kカメラで捉えた美術作品として、フランス政府と共同制作で進めてきた「ルーブル美術館 美の殿堂の400年」は、さらに多くの所蔵品の収録を進めて4回に分けて放映する。ほかにもベルサイユ宮殿やローマ・コロッセオに実際に旅行したかのような体験を得る「2時間でまわる」シリーズも制作している。

また、来年3月にはカズオイシグロ原作の「浮世の画家」が、8K制作でドラマ化されるなど、新しい挑戦が目白押しだ。

取材地では8K作品も機材の関係から4K/HDRでの視聴だったが、撮影と編集のプロセスが完全に8K化されていることもあり、最終的な視聴体験が4Kではあっても、他の作品とは比べものにならないリアリティだった。

さて、このように着々と準備が進むNHKによる本気の超高精細放送への準備だが、その初日となる12月1日には、4K、8K、それぞれの解像度で生中継イベントが行われる。4K生放送には南極から、8K生中継はイタリア・ローマから行われる。

8Kの生中継はBS4Kでもダウンコンバートして、BS4K向けの南極中継も8Kにアップコンバートして放映するなどの施策を考えているというが、本稿執筆時点ではまだ決定事項ではなかった。スケジュールは放送直前に発表される見込みだ。

民法の4K放送に関しては、まだその詳細が見えてきていないが、少なくともNHKが用意しているラインナップに関していうならば、すでに普及が進んでいる4Kテレビ向けにチューナーを接続したいと思わせるだけの魅力があるように見受けられた。この品質を続けることができれば、高品位な4Kテレビの販売に弾みも付いてくるだろう。