必読!これがホントの“節税”講座消費者に納税義務がない消費税
10%への増税前にやるべきこと

寄稿:梅川 貢一郎(有限会社トライアングル 代表取締役・税理士・公認会計士)

http://www.umegawa.com/

2019年10月1日から消費税が、現行の8%から10%へ増税となります。今回は消費税についての話題をあれこれとお話しすることにします。

現在の消費税率8%は、2014年4月から適用されていますが、当初は、引き続いて翌2015年10月に10%に増税される予定でした。

しかし、安倍総理がその後2度にわたり増税を延期。そしてついに来年10月から10%となるはずです。

人気に多少の陰りが見えてきた安倍総理が再三の増税延期を行うのではないかという「希望的観測」もありますが、リーマンショックや東日本大震災のような大事件でも起きない限り(起きては困りますが)、まずあり得ないでしょう。

駆け込み需要は本当にお得?

では、来年の消費税増税に備えて、今から行うべきことはあるのでしょうか。はっきりいって、一般消費者としては何もありません。

「自動車や住宅などの値が張るものは、増税前に買っておいた方がよいのでは」。確かに事実上の2%の「値上げ」ですから、どうせ買うものであれば増税前に購入した方がお得と考えるのは正論です。いわゆる駆け込み需要は、今回もある程度起こるでしょう。

しかし、冷静に考えれば消費税の増税は「たかが2%」です。108円のモノが、110円になるだけ。値上がり率でいえば、1.0185倍になるだけです。「いやいや、そうはいっても5千万円の戸建てを新築すれば、100万円も余分に払うことになる」と反論されるかもしれません。

もっともな意見ではあるのですが、注意しなければならないのは、需要が集中すれば、そもそも本体の値段が2%以上も上がってしまうかもしれないという事実です。

5千万円の住宅であれば、通常、交渉次第で100万や200万円の値引きは十分あり得ます。しかし「駆け込み需要」で売り手が強気になれば、それも難しいこととなります。

実際に前回の8%増税時も、増税直前は駆け込み需要が起こり、日常品をはじめいろいろなモノが品不足になり値段も上がりしました。ところが増税後は一転「不況」となり価格は元に戻ったのです。

結局、増税直前に「高い買い物」をした人は、少しばかりの消費税の節約と引き換えに、トータルの支払いで損をしてしまいました。

しかも増税後には、前回の増税時と同様、住宅ローン減税の拡充や自動車税減税のおまけがもらえます。増税前にあわてて高い買い物をしてしまうことのないよう、注意が必要です。

では、消費税を預かる立場の事業者は、どのような対策が必要でしょうか。答えは、できることなら「今のうちに値上げをしておく」です。

前回の5%から8%への増税時にも「税込み価格」105円だった商品を、「税抜き価格」108円に変更するというような紛らわしい便乗値上げがありました。しかし今時の消費者は価格にはとても敏感なので、便乗値上げは大きな反発を受ける恐れがあります。

もちろん便乗値上げが法律で禁止されているわけではありませんし、事実前回は、電気料金やガス料金などの公共料金が便乗値上げを行っていました(大変なバッシングを受けましたが)。政府は便乗値上げを監視するためのキャンペーンを行うはずです。

さらに、消費税増税後にはお決まりの「消費不況」が訪れるはずです。そうなったらとても自分のところだけが値上げを断行というわけにはいきません。もし、値上げを検討しているのであれば、今が最後のチャンスでしょう。

消費者に納税義務はない消費税

ところで直接税と間接税という言葉をご存知でしょうか。直接税とは、所得税や法人税、相続税のように、税金を負担する人が直接納税義務を負う税金です。

一方、間接税とは、税金を負担する人と税金を納める義務のある人が別であるような税金です。間接税では、納税義務は事業者にありますが、それを消費者に負担してもらうことを「予定」した仕組みとなっているのです。言い換えれば消費者には納税義務がないのです。

消費税は間接税です。間接税は他には、たばこ税や酒税、ガソリン税(揮発油税)などがあります。これだけの説明ではピンときませんよね。

私は、消費税の納税義務がある事業者に対して、その仕組みを説明する際には、次のように話します。

お客様に100円の商品を消費税込み108円で販売します。このとき消費税分の8円はお客様から預かったことになります。一方、この商品は消費税込み54円で仕入れていたとします。つまり仕入先には4円の消費税分を支払っていることになります。

消費税の納税は、お客様から預かった8円の消費税から、仕入先に支払った4円の消費税を差し引いた残りの4円を支払えばいいわけです。預かった分からすでに支払った分を除いた残りを払うのだから、販売者であるあなたは1円たりとも負担することはありません、と。

いかがですか? 消費税は、最終消費者が負担する税金だから「消費税」というのだという理屈が分かったような気がします。

ところが、この説明は仕組みを説明しているのでウソではありませんが、法律として正確とはいえません。実は、消費税法には「消費者」などという言葉は使われていません。

「事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等につき、消費税を納める義務がある」とのみ規定しています。事業者には消費税の納税義務があると定めていますが、消費者は負担しなければならないとは書いていません。

あなたが税別100円の商品を買って、「消費税を支払うのはイヤだ」といって100円だけ支払ったとしても、あなたは「脱税者」ではありません。そもそも納税義務がないのですから(もっとも商店では商品を渡してくれないでしょう)。

消費税などの間接税は、消費者が税金を負担すること(転嫁といいます)を「期待」した税金なのです。強制はできないけれど消費者に負担して頂くことを前提に、事業者が納税義務を負うという、税務署などの徴税側にとっては確実に徴税できる都合のいい税金なのです。

課税する政府の思惑

消費税と同様に酒税も間接税です。ビールの酒税率は何パーセントか、ご存知でしょうか。約40%です。では、ガソリンにかかる揮発油税は? 約50%です。びっくりするほど高くありませんか。

しかし、ビールをスーパーで買っても居酒屋で飲んでもレシートに酒税の金額は記載されていません。ガソリンも基本同様です(スタンドによってはレシートに負担する揮発油税の金額が明記されているものもあります)。

かつて消費税が導入された当時、「当店は消費税を頂きません」とか「消費税をサービスいたします」などの消費税還元セール的な広告文をよく見かけました。これは消費税的にはまったく問題ありません。消費者はその商品の販売に課される消費税を支払う義務はないのですから。消費税を消費者に転嫁するかどうかは事業者の自由であるはずです。

しかしこのような広告文は、あたかも消費者が消費税を負担する必要がないような「誤解」を与えるという理由で、政府はわざわざ法令を作って禁止したのです。

消費税の表示方法も消費税の導入当初は、外税方式(本体価格と消費税をそれぞれ明記する方法)を採用しました。

本来であれば、酒税やたばこ税のように消費税も内税方式(本体価格と消費税額を合計した金額を表示する方法)を採用した方が、消費者は消費税を「意識」することなくあまり税負担を感じないので制度として導入しやすいのです。

しかし、外税方式のように消費税を明記すると、レシートを見た消費者は「負担しなければならないもの」という意識を持つであろうという目論見だったわけです。

その後、3%から5%に引き上げられた際に、本来の「負担感を紛らわせるため」に内税方式が採用されました。消費税の表示方法には課税する政府の様々な思惑があるわけです。

表示方法に秘める政府の思惑

消費税は本来、納税義務は消費者にはなく、事業者にあることはご理解いただけたかと思います。消費税は、商品などを購入した人が負担すること(転嫁)を「期待」した税金なのです。ところが現実にはこの転嫁がそう簡単ではありません。

消費税が導入された平成元年、当時は税率3%でした。多くの事業者が従来100円の商品を本来であれば税込み103円としなければならないところ、「釣り銭を準備するのが面倒」や、「うちは20年来100円で売ってきたのだから値段は変えません」などの理由で売価を変えないという行動に出ました。

しかし、購入者は消費税を負担しなくとも事業者は納税義務がありますから、100円は、実は本体価格97円、消費税3円となります。この場合、事業者は実質的に3円値引きして販売していることになります。実は、このようなことが消費税増税時にはとても多く見られます。

消費税の増税は、消費者にとってはまぎれもない「値上げ」です。支払う金額がトータルでいくら増えたのかが関心事だからです。

「値上げしたら売れないので、しょうがない、消費税分を値引き販売するしかない」。特に消費が冷え込んでしまったような状況では、実質値上げである消費税の転嫁ができず、事実上の値引き販売をしてしまう結果になるわけです。

同様なことはB to Bの事業者間取引でも頻発します。立場の弱い下請け業者は、発注先から常に値下げの圧力にさらされています。その結果、消費税が増税されても、「税込み価格は変えない」での納品を要求されることが起こります。

「値下げのお願い」という形式をとりますが、実質的には消費税の増税分は負担しない、という強迫です。

消費税の免税事業者とは?

さて、くどいようですが、消費者であるあなたは、消費税「相当額」を支払っていますが、消費税を納税しているわけではありません。

居酒屋で注文した刺身一皿400円(税込み)と生ビール一杯400円(税込み)は共にその商品の「価格」であって、その価格に含まれる消費税相当額や酒税相当額は「相当額」でしかありません。本当に納税されているかどうかは、その事業者によるわけです。

「そんなことどうでもいいよ」といわないでください。あなたが支払った「つもり」になっている消費税相当額が、実は納税されずに事業者のフトコロに入っている現実が存在するのです。これが消費税の「益税」とよばれる問題です。

原則として、売り上げが1000万円に満たない事業者は消費税の納税を免除されます。また、資本金1000万円未満の法人も、原則として設立から2年間は消費税の納税が免除されます。

このように消費税を免除された事業者を「消費税の免税事業者」とよびます。日本の個人、法人を含めた事業者の約60%が免税事業者であるといわれています。

先ほどの説明でいえば、お客様に100円の商品を消費税込み108円で販売します。このとき消費税分の8円はお客様から預かったことになります。一方、この商品は消費税込み54円で仕入れていたとします。つまり仕入先には4円の消費税分を支払っていることになります。

消費税の納税は、お客様から預かった8円の消費税から、仕入先に支払った4円の消費税を差し引いた残りの4円を支払えばいいと書きました。
ところが、この4円の納税を免除されるのが免税事業者です。理屈からいえば、免税事業者は仕入先に支払った消費税4円分のみを売価にプラスして104円で販売すべきですが、実際にはそうではないわけです。

その4円は事業者の収入となります。消費者が消費税のつもりで支払った8円のうち4円は、販売事業者の利益となっていたわけです。この制度は、税金分を負担する納税者にとっても免税を受ける事業者にとっても、好ましい制度とは思えません。

免税事業者制度の問題点

私は税理士という仕事がら、会社の社長や個人事業主から消費税に関するご相談をたくさん受けます。その中でも多いのが、「こんな多額な消費税とても納められない」です。実は数ある税金の中で、最も延滞率が高いのが消費税です。

特にこのような問題は、免税事業者として消費税の納税が免除されていた事業者が、初めて課税事業者となり消費税の申告を行った時に多く発生します。

本来、消費税は最終消費者が負担をすべき税金であり、事業者は預かった消費税を税務署に納税するだけだと述べました。預かったお金をそのまま支払うだけだから、支払えないはずがないという道理ですが、そう簡単な話ではないのです。

お金には色がついているわけではありませんから、本来108円の収入は、売り上げが100円で、消費税の預かり分が8円であるはずです。
ところが通帳ではあくまでも「108円」ですから、事業者の感覚としては「すべて売上代金」という認識です。

その結果、経費の支払いも給与などの金額設定もキャッシュベースで考えてしまいますから、最後の最後に消費税の支払いがあることを考慮せずにお金を使ってしまうことになるのです。

事業を開業した当初から、消費税を納税するという前提で商品の値段を設定したり、経費の使い方を考える習慣を身につけていればこのようなことになりません。

起業家は、免税事業者という一見「おいしい」状態を最初に経験してしまったため、本来の利益を出す仕組みやお金の流れを学習する機会を失ってしまったのです。消費税の延滞問題と免税事業者制度は密接な関係があるわけです。

「適格請求書保存方式」とは?

この免税事業者の問題も、平成35年から導入される「適格請求書保存方式」に伴って消滅しそうです。

消費税の納税の仕組みはすでに述べたように、販売時に預かった消費税から、仕入れや経費の支払時に支払った消費税を差し引き、その残りを税額として納付します。

ところで、平成31年の増税時に、これまでにはなかった食料品等の「軽減税率制度」が生まれます。仕入れや経費を支払う際に、消費税が8%なのかそれとも10%なのかが不明確では、納税する消費税額を計算する際に支払額をいくら差し引いてよいかが分かりません。

また、従来では消費税を納税しない免税事業者からの仕入れであっても、あたかも消費税を支払ったかのように計算していました。

そこで、消費税の課税事業者には、「適格請求書」なるものを発行させて、消費税額等を明記させることになりました。さらに消費税額を計算し、納税額を申告する際には、「必ず」この適格請求書の保存が必要であると決められました。

なぜ「適格」とよぶかというと、適格請求書を発行できるのは消費税の課税事業者のみだからです。消費税を負担しない消費税の免税事業者は、この適格請求書を発行することができません。

少なくともBtoBのビジネスの場面では、適格請求書を発行できない免税事業者は、圧倒的に不利になります。従来は免税事業者であっても100円のモノを108円で販売し、それを購入した事業者はその8円を消費税の納税時に控除ができました。

ところが、この制度が導入されたら、免税事業者からは適格請求書がもらえませんから、支払った108円はすべてが仕入価格となって、消費税の控除ができなくなります。たいていの事業者は、そんな取り引きに応じるはずはないでしょう。

結局、免税事業者は108円で販売していたものを100円に値下げするか、免税事業者をやめて課税事業者を選択するしかありません。その決断の時が、刻一刻と迫ってきていることは確かです。

「軽減税率制度」の問題点

消費税の10%への増税と共に導入される「軽減税率制度」は、ただでさえ複雑な消費税の制度をさらに複雑にします。

私は個人的には軽減税率制度の導入には反対です。低所得者に配慮して食料品にかかる消費税率を8%に据え置いたところで、たかが2%です。しかも、必ず「境界問題」が発生します。

マクドナルドでハンバーガーを「持ち帰り」といって購入すれば8%、しかし同じものを店内で食べると10%が適用されます。店は同一商品について両方のケースの価格を提示しなければなりません。

「持ち帰り」といって購入した人が、店内で食べ始めたらどのように対応すればいいの? 導入当初は様々な問題が起こると予想されます。
軽減税率の適用対象が食料品である理由は、低所得者への配慮から、という点は理解できなくもありません。

しかし、週2回以上発行される新聞が、なぜ軽減税率の対象なのかまったく理解できません。

あってはならないことですが、政府が「うるさい」新聞を黙らせるために「忖度」したのかと疑ってしまいます。

この原稿を書いている段階では未定ですが、食料品の購入など8%の軽減税率の適用を受けるにはクレジットカードなどの現金以外の決済が必要などという案もあります。

政府は、欧米や中国、韓国並みに現金決済の割合を減らし、取引の透明化を意図しているわけですが、そもそも軽減税率を必要とするような低所得者が、クレジットカードを所持しているかどうか疑問です。いずれにせよ軽減税率は問題の多い制度だと感じます。