「働き方改革関連法」準備状況の調査結果を公表/日本・東京商工会議所規模の小さな企業ほど低い認知度
対策では人手不足の課題が鮮明に

先日、日本・東京商工会議所が「働き方改革関連法への準備状況等に関する調査」の集計結果をまとめました。2019年4月から順次施行される働き方改革関連法ですが、中小企業の現場では思った以上に認知や対策が遅れているようです。

「働き方改革関連法」の認知度

まず、働き方改革関連法で個々の法律に関する名称・内容、その施行時期について調査した結果、認知度自体が進んでいないことが判明。この傾向は、従業員規模が小さくなるほど顕著で、商工会議所では「2019年4月に施行が迫った年次有給休暇の取得義務化をはじめ、法律のさらなる周知が求められる」としています。

時間外労働の上限規制/年次有給休暇の取得義務/同一労働同一賃金

「時間外労働の上限規制」「年次有給休暇の取得義務」「同一労働同一賃金」に関する調査において、最も認知度の高かった改正項目は年次有給休暇の取得義務で、名称・内容に加えて施行時期も把握しているとした割合が7割を超えました。これは、同改正法が大企業と中小企業とも今年の4月から施行されることが背景にあるのでしょう。

最も認知が遅れていた項目は同一労働同一賃金です。名称・内容ともに知っているとした割合は51.5%、施行時期については45.4%にとどまりました。

一方、働き方改革において、その是正が最も喧伝されている改正項目といえるのが時間外労働の上限規制でしょう。これは、研究開発や医師などの一部の業者をのぞき、時間外労働については「月45時間、年360時間」を超えてはいけないという規制がかけられるもの(例外規定あり)。その名称・内容、施行時期に関する認知度はほぼ6割という状況となっています。

●図1:働き方改革関連法の認知度/「時間外労働の上限規制」「年次有給休暇の取得義務」「同一労働同一賃金」(日本・東京商工会議所資料より抜粋)

割増賃金の猶予措置廃止/管理簿の作成義務/高度プロフェッショナル制度

「割増賃金の猶予措置」とは、1カ月で60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率は50%以上という取り決め。中小企業には適用が猶予されていましたが、2023年4月には猶予が廃止されます。少し先のこととはいえ、認知度は5割を下回っています。

大企業、中小企業とも2019年4月から施行される「労働時間等に係る管理簿作成義務」については、名称・内容ともに知っているとした割合は46.2%、施行時期を知っているとした割合は50%。時間外労働などの状況を把握するためには管理簿の作成は欠かせません。特に、規模の小さな企業ではしっかりとした勤怠管理がなされていないケースも少なくないだけに、早急な体制の整備が必要でしょう。

メディアなどで大きく取り上げることの多い「高度プロフェッショナル制度」は2019年4月施行(大企業・中小企業とも)。その創設や内容、施行時期を知っているとした企業は4割を大きく下回っています。

●図2:働き方改革関連法の認知度/「割増賃金の猶予措置廃止」「管理簿の作成義務」「高度プロフェッショナル制度」(日本・東京商工会議所資料より抜粋)

従業員規模別の調査結果

「時間外労働の上限規制」「年次有給休暇の取得義務」「同一労働同一賃金」については、従業員規模別ごとの状況もまとめられており、いずれも規模が小さくなるほど認知度が低下するという結果となりました。

従業員50人以下の企業では、全体として最も認知度が高かった年次有給休暇の取得義務化について法律の内容や施行時期を知らないと回答した比率が3割を超え、時間外労働の上限規制に関しては約半数が知らないとしています。同一労働同一賃金については、内容や施行時期を知らないと答えた企業が約6割を占めました。

●図3:従業員規模別の認知度/時間外労働の上限規制(日本・東京商工会議所資料より抜粋)

「働き方改革関連法」への準備状況や課題など

働き方改革関連法には対応すべき改正項目が多々ありますが、人手不足の中小企業にとって特に影響が大きいものとして、時間外労働の上限規制と年次有給休暇の取得義務化が挙げられるのではないでしょうか。

実際、時間外労働の上限規制に対する準備状況をたずねた調査では、「対応済・対応の目途が付いている」と回答した企業は45.9%にとどまっています。認知度調査において法律の名称や内容を知っているとした企業に限っても、「対応済・対応の目途が付いている」と回答した企業は6割以下という状況でした。

「対応済・対応の目途が付いている」と回答した企業に取り組み内容をたずねた質問では、さまざまな対策が挙げられており、最も多かった項目から順に「時間外労働の管理の徹底」(57.4%)、「出退勤時間管理や休暇取得に関する管理職や一般社員への研修、意識啓発」(56・0%)、「業務内容や人員体制の見直し・平準化」(51.7%)などとなっています。

また、時間外労働の上限規制への対策にすでに取り組む企業に課題を聞いたところ、図6のような項目が挙げられています。「業務量に対して人員が不足している」(54.9%)や「年末年始や年度末など、特定の時期に業務が過度に集中する」(50.1%)といった人手不足、繁閑による業務量の偏りなどが上位を占めました。さらに、「取引先からの短納期要請や急な仕様変更等への対応」も36%となっており、商工会議所では「下請取引適正化対策の強化が求められる」とコメントしています。

●図4:「時間外労働の上限規制」の準備状況(日本・東京商工会議所資料より抜粋)
●図5:「時間外労働の上限規制」への対応として講じた取り組み(日本・東京商工会議所資料より抜粋)
●図6:「時間外労働の上限規制」への対応にあたっての課題(日本・東京商工会議所資料より抜粋)

一方、今年の4月に施行が迫っている「年次有給休暇の取得義務化」の準備状況については、全体集計で「対応済・目途が付いている」企業の割合は44%。法律の名称と内容を把握している企業に限った調査でも52.4%にとどまっており、準備が進んでいるとはいいがたい状況です。

年次有給休暇の取得義務化について、「対応済・目途が付いている」と回答した企業が講じた取り組みでは、図8のような項目が挙げられました。「年次有給休暇の計画的付与」(59.2%)、「出退勤時間管理や休暇取得に関する管理職や一般社員への研修、意識啓発」(48.3%)、「業務内容や人員体制の見直し・平準化」(38.3%)が上位を占めています。前述した時間外労働の上限規制への取り組み内容と共通することから、「時間外労働の上限規制と年次有給休暇の取得義務化への対策は一体的に取り組まれている」(日本・東京商工会議所)ことが見てとれます。

対応にあたっての課題として挙げられた項目は、図9の通りです。「業務量に対して人員が不足している」「特定の時期に業務が過度に集中する」など、時間外労働の上限規制と同じように人手不足や業務の繁閑に関することが上位にきています。年次有給休暇に関わる独自の課題としては、「社員が、自身の病気や休養、家族の介護・子育てのために有給休暇を残しておきたいと考えている」との項目が上位に挙げられました。

●図7:「年次有給休暇の取得義務化」の準備状況(日本・東京商工会議所資料より抜粋)
●図8:「年次有給休暇の取得義務化」への対応として講じた取り組み(日本・東京商工会議所資料より抜粋)
●図9:「年次有給休暇の取得義務化」への対応にあたっての課題(日本・東京商工会議所資料より抜粋)

なお、調査概要については、東京商工会議所ホームページ内の『「働き方改革関連法への準備状況等に関する調査」集計結果について』で詳細が公表されています。「高齢者雇用の拡大に関する調査」についてもまとめられているので、合わせて参考にしてはいかがでしょうか。(長谷川丈一)