準備万端? 1年を切った「Windows 7」のEOSまだ移行期間には“1年も”余裕がある?
その誤解が生産性ダウンの原因に!

マイクロソフト「Windows 7」のEOS(延長サポート終了/2020年1月14日)まで、ついに1年を切りました。これを、「まだ1年もある」と考えるのは早計です。2019年はITシステムに関係するイベントが目白押しで、これらがOSの移行にも影響を与えると見られているからです。その辺の事情を、改めてレポートしましょう。

なぜ、OSの移行が必要なのか

2018年9月に楽天インサイトにより実施された調査によれば、「Windows 7の延長サポート終了を認知している中小企業の割合は57%」と報告されています。それから約5カ月が経過しているだけに、もう少し認知率は向上していると思われますが、「実際に移行を完了した」、あるいは「すでに準備に取りかかっている」という割合となると、まだまだ低いのが現状です。

●Windows OSのサポートライフサイクル期間(マイクロソフトのWebページより引用)

新しいバージョンや新モデルなどへの乗り換えについては、「早期乗り換え派」と「ギリギリ派」に分かれるもの。特にOSの移行では、この傾向が強いといわれています。実際、知り合いの事業者を見ても、Windows 7を使っているケースは少なくありません。その理由には「コストをかけたくない」や「操作に慣れているから」といった答えが返ってきますが、根本的には「すぐに移行する理由がない」と考えているようです。

メーカーをはじめ、さまざまなメディアでも喧伝されているように、OS移行が不可欠とされる最大の理由はセキュリティに関すること。2020年1月14日に延長サポートが終了すると、セキュリティ更新プログラムや有償・無償サポートなど一切のメーカーサービスが提供されなくなるため、サイバー攻撃による情報漏えいや金銭被害に遭う確率が飛躍的に増大することになります。

このため、安全にパソコンを使うには延長サポートが切れる前に、移行することが求められているわけです。そうなると冒頭で触れたように、「まだ1年あるじゃないか」と考えがちですが、Windows 7で提供されているセキュリティ更新は最低限のもの。そもそも10年も前に開発されたOSだけに、巧妙で複雑化する最近のサイバー攻撃を防御するには設計が古く、心もとないというのが実情。この点については、マイクロソフト自身も以下のように指摘しています。

「サイバー攻撃の進化は著しく、Windows 7が開発された当時のセキュリティ設計はもはや古い。最新のサイバー攻撃に対しては力不足。セキュリティ機能の実装レベルがはるかに高いWindows 10に早期に移行してほしい」

経営層のサイバーリスク認識率は31.4%

これだけセキュリティに関わるリスクが告知されているにも関わらず、OS移行が進まない背景には、サイバーリスクに対する認識の希薄さがあるようです。以下は、トレンドマイクロが2018年12月に発表した「法人組織におけるセキュリティ実態調査2018年版」からの引用です。

同調査によると、サイバーセキュリティに関する問題を事業継続上、あるいは組織運営上のリスクとして経営層が「十分に認識している」と回答したのは、全体の31.4%にとどまるとのこと。サイバー攻撃は、他人事と感じているのではないでしょうか。

そうした中、同調査によると2017年1年間でセキュリティインシデントに起因した情報漏えいなどの重大被害を経験した国内法人組織は42.3%。原因究明に要した調査費用や改善策の導入、損害賠償などの事後対応費を含めた年間被害額は平均2億1153万円と、過去3年連続で2億円を超えたとのこと。サイバー被害は確実に発生しており、自社には関係ないと言い切れないわけです。

この調査は被害として顕在化しているものだけです。最近のサイバー攻撃は、「気づかれずに侵入し情報を窃取。痕跡を残さずに消える」ことが特徴。気づいていないだけで被害が出ている事業者はもっと多いと推測されています。

さらに、オリンピックなど大きなイベントが開催される国や地域には、サイバー攻撃が集中するといわれています。2020年に東京オリンピックが開催される日本が、格好のターゲットとなる可能性が考えられるわけです。セキュリティ性能の高いWindows 10へと早めに移行することが得策ですし、ましてやEOS後にWindows 7を使い続けるといったことは避けるべきでしょう。

2019年、移行準備に余裕を持つべき理由とは

セキュリティ的な側面を考えると、少しでも早くWindows 7のEOSに備えるべき理由は理解できることでしょう。さらに移行への早期着手が推奨される要因が、2019年には多数あるのです。

具体的には「PC不足」、「改元」や「消費増税」などです。ニュースなどでも報じられているように、2018年秋ごろからインテルのパソコン向けプロセッサー(CPU)が供給不足となっており、一部のメーカーではパソコン生産が滞っており、パソコンの供給にも影響が出ている状況です。

インテルでは「2019年にはCPUの供給不足は解消する」としていますが、その時期については明言していません。パソコンの供給不足が続くなかで、例えば消費増税前やEOS前などに需要が集中することになれば、場合によってはパソコンが手に入らないといった事態も想定する必要がありそうです。

また、マイクロソフトにより互換性が検証されているWindows 10ですが、社内で利用している既存ビジネスソフトとの互換性確認やソフトのバージョンアップ、周辺機器の対応確認などはやはり必要となります。実際に新OSを使いながらソフトや機器との相性や不具合などを確認し設定調整などを行うのに必要な期間は、導入ソフトや周辺機器が少ない小規模なIT環境で3カ月程度とされています。

そうなると、今年の秋口ころでも移行スケジュール感としては間に合いそうですが、前述したようにパソコン供給の問題に加えて、2019年5月には天皇の生前退位に伴う改元が確定しており、さらに同年10月には消費税の10%への増税が予定されています。

いまだWindows 7を使っている事業者にとって、2019年はOS移行だけでなくソフトやシステムなどITに関連した環境の見直しが次々と到来するわけです。優先順位としては改元や消費増税への対応が先ですが、Windows 7環境のまま改元や消費増税に対策を講じても、すぐにWindows 10への移行作業に取り組まねばなりません。OS移行、改元や消費増税など対策が必要な一連のイベントにまとめて対応するのが効率的ではないでしょうか。逆にいえば、対応の方法を間違えると、余計な手間がかかるだけでなく、生産性低下にもつながりかねません。

事業者として改元や消費増税に対応作業が発生するのはもちろん、いずれの改正もIT機器やシステムの設計・仕様変更に影響するだけにメーカーも手一杯となる可能性が高いことが予想されます。そうした状況下では、十分なサポートを受けられない可能性もあります。

さらに2020年には、Office 2010やWindows Storage Server 2008など、Windows 7と同じ頃にサポート終了を迎えるマイクロソフト製品が多々あります。こうした背景を鑑みれば、Windows 7のEOSまで1年を切った今こそ移行の準備にとりかかることが、さまざまなITイベントへの効率的な対策であることは間違いないでしょう。(長谷川丈一)