フルサイズミラーレスを発表/パナソニック老舗ライカのLマウント採用で
レンズ世界を超拡張したS1シリーズ

 パナソニックがついにフルサイズミラーレスカメラ「LUMIX S1R/S1」の2モデルを発表。3月22日から発売を開始します。価格はS1Rが税込み約45万円、S1が同約30万円(いずれもボディのみ)。S1Rはプロ向けのハイエンドモデル、S1がミドルユーザー向けといったところでしょうか。どちらも高価格ゾーンに位置するモデルであることは確かです。

 まだ実機を触っていないので今回はスペック面中心の評価になりますが、第1印象としては風景やポートレート、スタジオ撮影などを意識したモデルのように感じました。特にS1Rは4730万画素(S1は2420万画素)とトップクラスの水準。ローパスフィルターレス設計などと相まってかなりの高精細な描写が可能でしょう。

ハイレゾモードで1億8690万画素を実現

 しかも、「なんだ、これは?」と思わず目を留めたのが「ハイレゾモード」です。このモードを使えば、なんと約1億8690万画素相当(187M/16736××11168)の超高精細画像が撮影できるとのこと。これはS1Rの場合ですが、S1でも9600万画素相当とのことで、これでも十分に異次元のレベル。フルサイズ後発のパナソニックとしては、これぐらいの派手な独自機能が必要なことは分かりますが、それにしても画素競争もついにここまできたかと、思わずにはいられません。

 ハイレゾモードとは解説によれば「ボディ内手ブレ補正の機構を活用して、CMOSセンサーをサブピクセルピッチで移動させながら、8回にわたって連続撮影。この画像をカメラ内で合成処理し、187M相当の高解像度写真を生成する」とのこと。どういった写真になるのか、現段階では想像もつきませんが、ここまで解像度が高まれば、写真のリアリティが高まることは確かでしょう。4Kテレビが出始めの頃、その高画質ぶりを伝える表現として「窓から外の景色を眺めているような」というセリフがよく使われましたが、ハイレゾモードの画質は、その最たるものといえるのかもしれません。

 8回の連続撮影ということで、「だったら列車や飛行機などの動く被写体にはNGなのね」と思ったのですが、そこはさすがパナソニック。ハイレゾモードのMODE2を使えば、動きのある領域は合成処理を行わず、その部分は1枚目の撮影画像のみを使用するとのこと。動いている部分はノーマル画素で、周囲は超高精細という絵になるというわけです。

 個人的にはこの機能、というかこのカメラは静態撮影でこそ、最大限に威力を発揮するように感じます。というのは超高画素にはメリットとデメリットがあり、自分のように列車や飛行機などの動く被写体をメインとしている人間にとっては、S1Rのような超高画素カメラにはデメリットというか、扱い方が非常にシビアで難しい部分があると感じるからです。

 それは“被写体ブレ”のリスクです。3000万画素ぐらいまでの解像度であれば、ほとんど問題にならないレベルの被写体ブレであっても、5000万画素前後となるとブレがはっきりと認識できるケースが増えてくるからです。どんなに高画素であっても被写体がぶれてしまった写真は、(わざと狙ったのでない限り)ボツにせざるをないでしょう。

 手ブレと違って被写体ブレは、三脚でしっかりとカメラを固定しても防げるものではありません。相手が動いているわけですから、結局は超高速シャッタースピードを設定してカメラで止める以外にないわけです。

 一般にシャッタースピードを上げながら適正露出を維持するには、絞りを開けるかISO感度を上げることが必要ですが、そのことの制約は少なくありません。例えば絞りを開ければピントの合う範囲が狭くなりますし、ISO感度を上げすぎれば画質が荒れる可能性があります。つまり被写体ブレを防ぐためにシャッタースピードを上げるということは、何らかのトレードオフを覚悟する必要があるわけです。

 なので個人的にはS1Rよりも画素数の標準的なS1の方が使いやすそうであり、魅力を感じるのですが、風景やポートレートなどの静態がメインの方はまったく違う判断をされるでしょう。要は画素数の多い方が高画質という単純な判断ではなく、撮りたい被写体によって最適なモデルを選べることが、S1R/S1シリーズの一番のポイントだと思います。

ライカの歴史的資産の共有

 もう一つ、個人的に非常に興味深い点はライカLマウントを採用していることです。S1R/S1シリーズでは、パナソニックがこれまでメインとしてきたマイクロフォーサーズ・マウントのレンズを装着できませんが、その代わりドイツの名門ライカとのアライアンスを本格化させたわけです。そして一番の期待は、ライカ製のLマウント用レンズアダプターを使えば、ライカ製Mマウントのレンズが装着できるのではないか、ということです(このあたりは明確に取材していないので、今週末のCP+でしっかりと確認してきます)。

 話が少しマニアックになって恐縮ですが、カメラメーカーとして長い歴史を持つライカには複数のマウント方式があり、その中でもMマウントのレンズはライカのブランド力を決定づけた世界的に人気の高いシリーズ。種類も豊富で名玉と称されるモデルも多数あります。一方のLマウントは純粋なデジタルカメラ用のマウントなのですが、同社はLマウントのカメラにもMマウントのレンズを装着できるようにアダプターを出しており、それを多分、パナソニックのS1シリーズでも流用できるだろうと期待しているわけです。そして、これが可能であれば、S1シリーズの価格に対する評価は一変するのではないか、とも思っています。

 というのはライカのカメラは超高級品で、35ミリフルサイズのモデルはボディだけでも80万円超という世界。これと比べれば、S1の約30万円という売価は、ライカレンズを装着できるフルサイズカメラとしては相当にリーズナブルということになります。

 写真の決め手がレンズであるというのは、デジタルがどれほど進化しても不変でしょう。その意味でS1シリーズの発売は、今までライカに手の出なかった人にとっても福音となるのではないかと思います。ライカとしても、自社製レンズのユーザー拡大の好機になるわけであり、パナソニックとしてもやりたかったことの一つがこれではなかったのか、とも思うほどです。

 かなりマニアックな世界での話なのですが、スマホのカメラ機能が革新的な進化を続けている現状、ミラーレスや一眼レフに求められるものは、画質や機能以外にも、もっと情緒的な部分ではないのかと感じます。その意味でカメラの老舗ライカとのアライアンスを強化したパナソニックは、ライカの歴史的な資産の共有が可能になるわけであり、そこにライカにはない革新的テクノロジーを加味することで今後、カメラメーカーとして面白い存在になるのではないかと思っています。(征矢野毅彦)