西東京DCに新棟建設、ストック型ITサービス事業拡大/キヤノン既存棟と同面積でキャパシティ拡大
ストック型ITサービス事業比率4割へ

キヤノンマーケティングジャパンとキヤノンITソリューションズは、2019年3月1日から既存の西東京データセンターに隣接する新棟の建設に着手し、2020年夏にサービスをスタートさせると発表。データセンターを中核に据え、ストック型ITサービス事業の拡大に取り組むとしています。

高密度・高集積化を実現

新しく建設される西東京データセンター(DC)は、延べ床面積1万7107㎡(地下2階~地上3階)、ラック数は2880、CPU室床耐荷重1.5t/㎡、電力・通信回線引き込み2系統というもの。

「新棟は、既存の西東京データセンターとほぼ同じ規模だが、効率的なレイアウト設計と最新設備を導入し、ラック数は1.25倍、受電能力は15MVAから1.7倍となる25MVAに増強する」(キヤノンITソリューションズ・取締役常務執行役員・ITインフラサービス事業統括担当の笹部幸博氏)とのこと。より高密度・高集積化される見通しです。

●新棟のイメージ(キヤノンマーケティングジャパン提供)
●西東京センターの新棟概要(発表会資料より)

さらに、BCP対策への要望が強まる中、同社DCのユーザー企業からも災害発生時に作業や業務スペースとして活用できるBCPオフィスへのニーズが高いことから、「BCPオフィスフロア」を既存棟の666㎡から新棟では1500㎡へと2.3倍に拡大されます。

キヤノンMJグループとして5つ目のDC

キヤノンマーケティング(以下、キヤノンMJ)グループとしてのDC事業の歴史は1997年までさかのぼります。東京第一DCを同年に開設し、同事業に乗り出しました。以降、東京第二DCと沖縄県名護市に沖縄DCを建設しています。

そして、2012年10月17日、西東京の武蔵野台地に西東京DCを建設。DCの規模が一気に10倍に増強され、キヤノンMJグループとしてのDC事業を本格化させました。武蔵野台地の特徴は、東京から約20kmという交通の利便性に加えて、強固な地盤であること。海抜も60m以上と海岸線からも距離があるため津波や高潮などのリスクはほとんどないなど、BCP対策としてかなり優れた場所であるといってよいでしょう。

この西東京DCでは、運営品質を徹底して追及したとのこと。日本データセンター協会(JDCC)が規定したファシリティ・スタンダードにおいて最高ランクとなるティア4レベルに準拠しています。さらに、災害や障害発生時を想定した200にも及ぶシナリオに沿った訓練を毎週反復。これにより、世界で唯一のDC運営品質の評価制度である「M&O認証」を、国内DCとして2社目に取得しています。この他、安定したITサービスの提供により顧客満足を向上させるための国際規格「ISO/IEC20000」や有事に強いDCの証である「ISO22301」なども取得。新棟でも、同様の運営品質が提供される予定です。

2012年の西東京DCを造る際、すでに隣接地に同じ規模のDCを建設できる土地を確保しており、当時から「需要を見ながら、増床する」と新棟の建設について示唆していました。今回、既存棟でのサービス開始から約7年を経て、その実現に至ったわけです。

景気変動に強い経営体質へ

キヤノンMJグループは、2019年-2021年の中期計画として「主要製品の収益維持・拡大(レンズ交換式デジタルカメラ/インクジェットプリンター/MFP/レーザープリンター)」「ITソリューションを中心とした市場拡大領域における利益ある成長の実現」「成長を期待する事業における収益基盤の確立(ネットワークカメラ/プロダクションプリンティング/ヘルスケア)」を掲げています。

このうち、DC事業に関わるのが2番目の「ITソリューションを中心とした市場拡大領域における利益ある成長の実現」です。

発表会に登壇したキヤノンMJ取締役常務執行役員兼キヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)代表取締役社長の足立正親氏は、「国内ITソリューション市場は年平均2%増、データセンターは年平均8.5%増が見込まれる。特に、“攻めのIT”への期待は大きく、その中核をなすのがAI需要などに支えられるデータセンターとなる」と国内IT市場の見通しについて言及。こうした市場的な背景を受け、キヤノンMJグループもDC事業への注力度を高めているわけです。

足立氏は、顧客企業の経営課題として業務のあらゆる領域でデジタル化への対応が急務となっていることを指摘。大手企業に対しては共創によるサービス提供型モデルを強化する一方、中堅企業や中小企業へと対象とする顧客範囲を拡大。顧客がITを活用する上でのパートナー(ITコンシェルジュ)として、IT専任者の不在をカバーする課題解決型提案やオフサイト・オンサイトを組み合わせた独自性のある保守運用サービスを提供していくとしています。

●顧客の経営課題とキヤノンMJグループが提供する価値(発表会資料より)

さらに、大手企業、中堅・中小企業向けにSIサービスやITインフラサービス、業務パッケージソリューション、IT保守サービス、セキュリティといった幅広いITソリューションを提供することにより、顧客の課題解決に全方位で対応するとしました。

もともとキヤノンMJグループのDC事業では、インフラの提供をメインに、システムインテグレーションや再開発などに関わる売上が大きかったといいます。その中、2012年の西東京DCでのサービス開始時に、「インフラの提供からシステム開発、運用保守まで顧客のシステムを一気通貫で請け負えるビジネスを強化する」と掲示。サブスクリプションやエンハンス、DC/クラウド、保守・サポートなど、顧客との関係性を維持し継続的に収益を得られるストック型ITサービス事業の強化に乗り出しました。

ITソリューション事業全体の売上高については、2018年の1977億円から2025年までに3000億円に引き上げる構想を打ち出しています。このうち、DCサービスやクラウドサービス、システム運用サービスなどのストック型ITサービス事業の比率を2018年の30%から2025年までに40%へと拡大。これにより、景気変動に左右されない強い経営体質を目指すとしました。そのための役割が、西東京DCの新棟にあるのでしょう。

●ストック型ITサービス事業の売上比率(発表会資料より)

キヤノンといえば、個人的に真っ先に思い浮かぶのがカメラに関する技術。キヤノンMJグループでは、グループが有する顔認証技術や画像処理技術、手描き文字認識技術、言語処理技術などとAIを組み合わせたITサービスを幅広い業種に対して、西東京DCを中核に提供していくとのこと。さらに、こうしたサービスやデバイスからDCへと集まってくる膨大なデータの蓄積や分析を通じて活用することにより、新たなサービスや顧客価値を創造していくとしました。(長谷川丈一)

●新棟をアピールするキヤノンMJ取締役常務執行役員兼キヤノンITSの代表取締役社長である足立正親氏(右)と、キヤノンITSの取締役常務執行役員・ITインフラサービス事業統括担当の笹部幸博氏(左)