福島敦子のアントレプレナー対談NHKや民放、大手新聞社が大注目
「報道の機械化」を実践する通信社

株式会社JX通信社 米重 克洋 代表取締役

株式会社JX通信社(東京都千代田区飯田橋4-1-11 信濃ビル5階)

株式会社JX通信社
●事業内容
◎インターネットによる各種情報提供サービス ◎速報(ニュース速報・リスク情報の配信)
◎データジャーナリズム(世論調査・選挙情勢調査) ◎ニューステクノロジー(ニュースエンジンの提供・研究開発) 
●資本金・準備金:7億1593万円
●主要取引先:パナソニックシステムソリューションズジャパン株式会社、株式会社産経デジタル、日本放送協会、日本テレビ放送網株式会社、株式会社テレビ朝日、株式会社TBSテレビ、株式会社テレビ東京、株式会社フジテレビジョン、一般社団法人共同通信社、株式会社共同通信デジタル ほか
●HP: https://jxpress.net//

初のサイト運営は中学3年の時

福島米重社長は「報道の機械化でジャーナリズムとビジネスの両立を目指す」をミッションに、2008年にJX通信社を設立。すでにNHK、民放キー局、大手新聞社などに情報を提供しています。まず、メディア業界のどこに問題を感じて、会社設立に至ったのかを教えてください。

米重課題として感じていたことは、報道産業が労働集約的だということです。何から何まで人間がやる業界であると。結果としてコストが非常に重い構造になっています。

その一方で広告出稿量などが下がってきています。そういう状況の中で、持続可能なのかという点が大きな課題だと感じており、そこを解決するという仕事を、やらせていただいています。

福島そういう点に着目したきっかけは、どんなことだったのですか。

米重実は2004年、中学3年生の時に、航空業界のニュースサイトを立ち上げたんです。当時はブログが出始め、WEBサイトを自分で作るソフトなどが流行っていた時期。

そんな折にニュースサイトを作り、ピークで30万PVぐらいいきました。当時としては多いと思うんですけど、それでも小遣い程度にしか収益が上がらなかったという経験がありまして。「ニュースサイトって、もしかしてあんまり儲からないのかな」と思ったんです。

同じような時期に、市民記者がニュースを発信するというコンセプトのニュースサイトが多く立ち上がっていたのですが、それも2〜3年で大半が潰れました。オンラインのニュースメディアは、本当にマネタイズが難しいんだなということを痛感しまして、その課題を解決しなければいけないというのが、きっかけになっています。

福島もともと航空業界に関心をお持ちで、それで航空ニュースのサイトを始めたとうかがいました。

米重はい。中学生の頃から航空会社を経営したいと思っていたんです。それで「航空業界はどうあるべきか」といったことを、自分なりに研究していたんです。

一方で新聞やテレビニュースは、昔から楽しく見ているタイプだったので、興味の結節点が航空ニュースサイトだったんですね。いきなり航空会社を作るのはちょっとできないので、その手前で自分が興味を持てて、課題解決にも取り組めるんじゃないかと思った分野が、メディアだったということです。

大手報道機関への情報提供

福島JX通信社の事業内容は各種ニュースサイトやSNSをチェックし、バリューのあるニュースを収集・編集して、報道機関向けに発信することです。具体的な仕組みはどのようになっているのですか?

米重それは「ファストアラート」という報道機関向けのサービスです。

例えばこのタブレットに表示されているのは、今現在起こっている事故の関連情報です。SNSなどでどんどん投稿されているんですよ。

こういう情報が投稿されたらその内容を、写真やつぶやきなどから解析して「どこで何が起きた」と判定しています。今表示している事故情報は、新宿駅の近くのコンビニに車が突っ込み7人ぐらいがケガをした、というものです。

福島リアルタイムで関連情報がどんどん投稿されているんですね。

米重はい。今日の13時半過ぎに起きた事故の関連情報が、13時50分頃から入り始めています。こういった事件・事故情報は、これまでだと警察や消防が報道機関に発信していたのですが、今は現場の目撃者がSNSでアップする時代になっています。

その内容をAIで解析し、どこで何が起きたという判定をして、発信します。これを報道各社がチェックして、取材に出向くというような、そんな流れになっています。

福島この関連情報をアップしている人たちは、御社と契約しているわけではなく、一般のSNSユーザーですよね。その情報を収集して発信するんですね。

米重そうです。もちろんSNS各社の規約には、完全に則った上での収集・発信活動です。

福島膨大な情報が集まってきますよね。それをAIで解析して、重要と思われるものをピックアップしているんですか?

米重おっしゃる通りです。例えば単純に事故とか火事と検索しても、実はそれに関係する情報はSNS上にはほとんどないんです。関係ないものが9割以上。

例えば事故といっても「自撮りに失敗して事故った」といって写りの悪い写真をアップしている人とか。基本的にはノイズのような情報がほとんどなので、人間が検索するのでは、めちゃくちゃ非効率なんです。

それを代わりにAIが解析して、「これは確かに火事だね・事故だね」と判断した上で発信しています。これにより圧倒的に多くの情報を、短時間で確認できます。

福島なるほど。ただ、どうなんでしょう。SNSは必ずしも正確な情報だけではありませんよね。フェイクニュースみたいなものもあります。情報の正確性は、どう担保していらっしゃるんですか?

米重例えばフェイクとしてSNS上に流される一番多いパターンは、過去の事故や災害写真、動画の使い回しなんです。

こういうものに関しては、過去に出回った画像や写真を解析していますので、問答無用に「フェイクである」として自動で排除できるようになっています。そういうタイプのデマやフェイクに関しては、99%以上は排除できています。

福島そんなに情報精度が高いんですか。

米重デマをでっち上げるというのは、やる側は簡単にできると思っているかもしれないのですが、見破るポイントがいろいろあるんです。そういうところを機械的に対策することで、かなり防げています。

一般向けのニュース配信

福島ファストアラートは報道機関向けの一次情報発信ですが、一般の方向けにもニュース速報を配信されていますね。

米重「ニュースダイジェスト」という兄弟サービスです。事件・事故に限らず報道価値が高いと判断したニュース記事を、速報として検知して、アプリでプッシュ通知するサービスです。

実はこれ、ファストアラートよりも先にできたサービスなんです。記者の方たちにもけっこう使っていただいています。そして、これがきっかけで、報道機関の方からコンタクトをいただくことも少なくありません。見かけは普通のニュースアプリなんですけど、通知の届くスピードが「一番早い」ということを目指して作っています。

福島ファストアラートは、一次情報を受信した報道機関が実際に取材に出向いて確認します。でも、確認の術を持たない一般の方への情報は、もっと正確なものでないといけないわけですよね。

米重おっしゃる通りです。ですから流れとしては、ニュースになる前の情報はファストアラートが一番早い。そして、なったあとの情報はニュースダイジェストが一番早いというすみ分けでやっています。

ニュースダイジェストも一部、事件・事故・災害の情報を配信することはあるんですけど、その時は外部の災害情報専門会社と連携し、事実かどうかを確認しています。

既存通信社とのすみ分け

福島御社には共同通信社が出資していますが、既存の通信社にとってJX通信社の存在は脅威なんじゃないのですか?

米重そうですね。共同通信さんには比率も高く持っていただいているので、我われが伸びるということは彼らにとってもプラスです。

通信社とは本来、マスコミの取材コストを頭割りするための組織ですよね。だから長い目で見ると、通信社の存在価値というのは、今以上に高まらないといけないはずなんです。ただ、そこがアナログであるために、その役割が果たせていないとなると、やっぱり厳しくなると思います。

ですからアナログではなく、自動化された形でやりますということを、我われがモデルとしてしっかり作り、それを他のメディア、通信社と共有していけば、取材コストの頭割りという本来の存在価値を持続できると思います。

福島逆にAIではできない、記者の能力によって情報収集したり、記事を書いたりということを強化すべきではないかということですね。

米重おっしゃる通りです。AIでは絶対にできない部分というのはあります。例えば課題を設定して、そこに対して取材をするとか、いわゆる言論機関的な役割。こういうものに関しては、やはり人間でないとできない。そういうところにこそ集中すべきだと思うんです。

ところが実際に記者の方に話をうかがうと、正直、かなりの部分が、機械化可能な単純業務に割かれています。こういうところをしっかり機械化して頭割りにする。そして浮いたリソースを人間にしかできない業務に振り向ける。

そうすることで「コストを下げながら、付加価値を高める」という矛盾したことを実現できる。テクノロジーを使えば課題解決できるというのが、我われが考えていることです。

抜群の精度を誇る世論調査

福島事業内容に世論調査サービスもあります。これも自動化で、ということですか?

米重そうです。ビジネスとジャーナリズムの両立ということを考えた時に、政治情勢や選挙情勢の情報が今もっとも厳しい状況です。今までだったら一つの選挙で、情勢調査も序盤・中盤と2回やっていたものが1回になったり、あるいはそもそも行われなくなるというような、そんな変化が起こっているんです。

こういうことになると、有権者がその選挙の情勢について知る機会が減ります。結果として関心があまり高まらずに、投票率もそのまま微妙な感じになって、現職が自然に再選されるような、投票率がめちゃくちゃ低い選挙が、全国に増えつつあります。報道が役割を果たしきれてないがゆえに、政治や選挙が厳しくなっている部分があると思います。

福島そういうことは、ニュースや新聞は絶対に報じませんよね。

米重そうですね。新聞社も報道したいとは思っているんですけれど、やはりコストが高いんですよ。お金がかかるわりに、選挙の情勢報道で儲かるわけではないということが、厳しくなっている一番の要因ですね。

その部分を解決しようと思った時に、やはり調査手法の部分で、人間がやるのと同じぐらいのクオリティのものを、機械がやれば10分の1以下のコストにできます。それを実現したのが、我われの情勢調査サービスなんです。

福島実際、どういうふうに調査するのですか?

米重クラウドのシステムの中から電話回線にそのままつないで、ランダムに作った電話番号にかける仕組みです。機械で電話をかけること自体は2000年代の後半ぐらいから、けっこうありました。ただ、音声がいかにもコンピュータの声でしたし、変な間などがあってどうしても回答率が低かったんです。

我われの場合、音声合成という技術を駆使しています。声が機械だということは分かるのですけれど、人間が電話を切らないような改良ですね。相手がイラッとしたり、不快にならないようなところを目指して、読み上げのテンポや声の高さ、間などを繰り返しチューニングして、回答率がなるべく高くなるようにしました。

福島世論調査の精度・確実度はどれぐらいなんですか?

米重実際の選挙でいうと、例えば2017年の都議選。あの時は報道各社が事前調査で、自民党と都民ファーストが第一党争いをしていると報じていました。

しかし当社の調査では一貫して、都民ファーストが自民党の2倍ぐらいの支持率を得ているという結果が出ていましたので、かなり大勝するのではないかということを早くから予測していました。結果として得票率はほぼ的中。というか、1〜2ポイントぐらいの差。上位三党は全部的中でした。

情報の収集・発信に磨き

福島AIによって多くの職業が失われるということがいわれています。報道の世界もどう変化すると見ていらっしゃいますか。

米重今の報道産業は端的にいって、放っておいたらそのままシュリンクするという状況にあると思います。その背景には、今まで紙や電波のメディアに割かれていた滞在時間が、スマートフォンなどに移っているという変化があります。

では滞在時間を戻せるかといえば、それは消費者の行動なのでもう無理なんですね。ですから報道産業のほうが、スマートフォンという膨大な滞在時間がある場所で、何ができるかという方向に形を変えていく必要があると思います。

今の情報の流れは、一般の人がSNSを介して一般の人に情報を伝えるCtoC型に変わってきています。

一方で、BtoC型でないと伝えられないこと。例えばそれこそスクープ報道とか、何か問題を発見して、それについて取材で深掘りをして伝えていくような報道。そういうものは、BtoC型でちゃんと組織として成り立ってないとできない。

そのレイヤーが分かれるというか、CtoC的な流れとBtoC的な流れに分かれて、それぞれにビジネスモデルがあるという状況になるんじゃないかと思っています。

福島最後に今後の飛躍のために、どんな展開を考えていらっしゃるのかをお聞かせください。

米重そうですね。今CtoCと申し上げたんですけど、やはり一般の方たちにJX通信社という報道機関があることを、もっと広く認知をしてもらうこと。それが情報を集めるための、重要な鍵になってくると思うんです。

例えば、週刊文春さんは「文春砲」とかって話題になりますけど、要は情報提供者が、週刊文春に情報を持ち込んだら、あれだけの発信力で伝達してくれるというふうに思っている。だから、そこに情報提供する人が非常に多くいるわけですよね。

ということは、報道機関が情報を集める力は、発信力にある程度、比例しているんではないかと思っていまして。そういうことを考えると、我われも報道機関としての認知をしっかりと広げていって、ニュースダイジェストから情報を集めていく。あるいは、ニュースダイジェストを通じて、事件・事故の情報を寄せていただく。

そのためには事件・事故・災害などの情報をしっかり集めて、それをいち早く報道機関に提供する。同時に我われニュースダイジェストのユーザーにも、しっかりと提供できるようにしていく。そうすれば速報性もまた一段と上がって、ライフライン的に使われる時代になるんじゃないかなと思っています。

福島あくまでも追求するのはスピードと正確さですね。

米重そうです。ですから、ストレートニュースの部分で、いかにそれを昇華させていくか、価値を磨いていくかという部分を意識しています。情報の入り口と出口・収集と発信のところを、これからも徹底的に磨いていこうと思っています。(敬称略)

米重 克洋(よねしげ・かつひろ)氏
1988年(昭和63年)8月、山口県生まれ。私立聖光学院高等学校卒業後、学習院大学経済学部入学。幼少より新聞を愛読する、いわゆる「ニュースジャンキー」であり、2004年から4年間、航空専門ニュースサイトを運営(ピーク時月間30万PV)した経験から、オンラインニュースメディアのマネタイズの課題に関心を持つ。ニュースコンテンツをメディア同士で取引する「仮想通信社」事業を構想し、大学在学中の2008年に(株)JX通信社を設立。
福島敦子(ふくしま・あつこ)
ジャーナリスト / 津田塾大学英文科卒。中部日本放送を経て1988年独立。NHK、TBSで報道番組を担当。テレビ東京の経済番組や週刊誌「サンデー毎日」でのトップ対談をはじめ、日本経済新聞、経済誌など、これまでに600人を超える経営者を取材。現在、BSジャパンの経済番組「マゼランの遺伝子」のキャスターを担当。経済・経営の他、環境、コミュニケーション、地域再生、農業・食などをテーマにした講演やフォーラムでも活躍。上場企業の社外取締役や経営アドバイザーも務める。島根大学経営協議会委員。1997年にはワインアドバイザーの資格を取得。主な著書に「愛が企業を繁栄させる」(リックテレコム)をはじめ、「それでもあきらめない経営」「ききわけの悪い経営者が成功する」「就職・無職・転職」「これが美味しい世界のワイン」などがある。
URL: http://www.atsuko-fukushima.com/