2019年度 中小企業関連「税制」解説設備増強や災害対策など、経営基盤強化に向けた投資に追い風

防災・減災投資促進税制でBCP対策
個人事業者向け「事業承継税制」新設

 2018年12月14日、2019年(平成31年)度の与党税制改正大綱が公表された。
 メディアで伝えられているように、今年の10月施行予定の消費増税対策を優先。増税の影響が心配される住宅や自動車関連などの減税策が並んだ。
 一方、中小企業や小規模事業者向けでは、前年度に続き設備投資や事業承継関連などが充実する見通し。
 なお、本稿は税制改正大綱ベースの解説であり、制度設計や詳細などの最終決定は省令などを確認すると共に、具体策は必ず専門家に相談してほしい。

 新設や改正、さらに前年からの継続制度を含め、2019年度に中小企業や個人事業者が活用できる主な減税策は表1の通り。

 新設と延長により設備投資向け制度が充実すると共に、行政が後押しする事業承継に関連して個人事業向け支援策が導入される。以下、改正制度を中心に各施策のポイントを見ていこう。要件など制度設計の概要については表2も参照してほしい。

■表1 2019年度税制における中小企業・小規模事業者向けの主な制度

設備投資関連減税
中小企業防災・減災投資促進税制 新設
中小企業経営強化税制 延長
中小企業投資促進税制 延長
商業・サービス業・農林水産業活性化税制 延長
少額減価償却資産の特例 継続
生産性向上特別措置法に基づく固定資産税の特例 継続
事業承継関連税制
個人版事業承継税制 新設
事業承継ファンドから出資を受けた中小企業に対する特例 新設
法人版事業承継税制 継続
個人版事業承継税制 新設
その他税制
法人税率の特例 延長
中小企業技術基盤強化税制(研究開発税制) 延長
交際費課税の特例 継続
所得拡大促進税制 継続

※新設:2019年度税制改正で新しく創設されるもの
※延長:適用期限が到来した制度について延長措置が講じられるもの
※継続:前年度から引き続き適用可能なもの

■設備投資向け減税制度

 延長や拡充が中心の設備投資関連における注目減税が、「中小企業防災・減災投資促進税制(中小企業の災害に対する事前対策のための設備投資に係る税制)」の創設だ。

 全国的な自然災害の発生により、住民だけでなく企業や事業者も大きな影響を受けたことは記憶に新しいところ。この制度は、災害時にも事業継続を可能とするための事前対策強化を後押しすることを目的に新設される制度である。

 対象は、「(連携)事業継続力強化計画」の認定を受けた中小企業や小規模事業者(*1)だ。対象設備は自家発電機や衛星電話、防火シャッターなど(金額要件あり)。対象設備への投資に対して20%の特別償却が適用される。

 同税制の活用スキームは、図1の通りである。まず、(連携)事業継続力強化計画を策定する。計画には、災害時に事業を継続するための事前対策に関する取組内容や導入する防災・減災設備などの記載が求められる方向だ。

 作成した計画を経済産業大臣に提出して認定されると、記載した防災・減災設備が特別償却の対象となる。

 個人事業者を含め、中小企業向けの設備投資減税で最も活用率が高い制度といえば、少額減価償却資産の特例だろう。前年度改正で延長措置が講じられており、2019年度も継続して使うことができる。

 この特例では、30万円未満の機器などの償却資産を購入した場合、制度を適用したい事業年度内に事業用として使い始めることを要件に、年間で合計300万円までの資産を即時償却できる。PCや複合機、プロジェクターなど対象機器は幅広い。新品だけでなく、中古資産も対象となる。

 上限金額まで有効に活用するポイントは、決算時に即時償却する資産を選択すること。というのも、「上限300万円まで」という要件は、金額ベースではなく、台数ベースで判断されるからだ。

 例えば、28万円の機器11台を購入すると合計金額は308万円だが、このうちの300万円までを損金処理できるというわけではない。即時償却の対象は10台分の280万円(28万円×10台)で、残りの1台については耐用年数に応じた減価償却により処理することが求められる。

 このため、上限金額までフル活用するには、処理する資産をどう組み合わせるかを考えることが効果的というわけだ。この他、活用にあたっての留意点などを図2にまとめたので参考にしてほしい。

■図1 中小企業防災・減災投資促進税制

■図2 「小額減価償却資産の特例」のポイント

定番の投資減税も延長

 2019年度税制改正では、中小企業などの設備投資を支援することを目的に、「中小企業経営強化税制」「中小企業投資促進税制」「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」が、いずれも2年間(2021年3月末まで)の時限措置として延長される。

 中小企業経営強化税制(2017年度改正で新設)は、「中小企業等経営強化法」がベースの設備投資税制だ。

 これは、強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づいて取得した設備などを対象に、即時償却か税額控除を選択適用できる制度。税額控除は7%を基本に、資本金3000万円以下の中小企業や個人事業者は10%を税額控除できる。

 制度設計や要件などは従来と同じ単純延長だが、対象設備について一部強化される見通しで、「働き方改革に関連する設備も本税制措置の対象となる場合がある」(中小企業庁)ことが明確化される。

 この制度では基本的に生産性向上や収益力アップにつながる機械や器具などが対象だが、工場などの休憩室に設置される冷暖房設備や作業場のテレワーク用PCなども、「生産等設備に該当し、働く環境を改善して生産性アップなどにつながるならば経営強化税制の適用対象となる場合がある」(同前)という。

 また、中小企業経営強化税制は国税であるため、生産性向上特別措置法をベースとした地方税の「固定資産税の特例(2018年度改正で新設/*2)」と併用できることがポイントだ。

 生産性向上特別措置法に基づく固定資産税の特例は、一定要件(表2参照)を満たした中小企業などが行った設備投資に対して、その資産にかかる固定資産税がゼロから2分の1の範囲で軽減(最初の3年間/課税標準は市町村の条例による)される制度である。固定資産税は赤字事業者でも納付義務があるだけに、負担軽減のメリットは大きい。

 設備投資税制において、定番ともいえる制度が中小企業投資促進税制。対象設備を導入した場合に、30%の特別償却か7%の税額控除を選択適用できる減税制度だ(税額控除は資本金3000万円以下の中小企業など)。制度設計は従来と同じ単純延長となる。

 ほぼ全業種向けの制度だが、対象設備が機械装置やソフトウエアであることから、製造業や建設業などにおいて活用が期待される。

 これに対して、小売や飲食店などの個人店舗や小規模事業者などに適した制度が、商業・サービス業・農林水産業活性化税制である。投資促進税制と同じく、対象設備に対して特別償却30%を適用でき、資本金3000万円以下の中小企業などは税額控除7%との選択適用が可能だ。

 商工会議所や認定経営革新等支援機関などの専門機関に相談の上、そのアドバイスに従い導入した設備に対して減税措置を適用できる。

 今回の改正における留意点としては、具体的な改善効果が求められることが挙げられる。現行制度でも、経営改善に効果的な設備であることの明確化が必要だが、2019年度は「この税制による設備投資と経営改善により年間2%以上の売り上げ、または営業利益の伸びが達成できると見込まれること」という要件が追加される見通しだ。

■表2 2019年度税制における中小企業等向けの主な設備投資減税の概要

中小企業防災・減災投資促進税制
適用対象者 青色申告書を提出する中小企業者
減税措置 「(連携)事業継続力強化計画」記載の価額要件を満たした対象設備について、特別償却20%を適用できる
対象設備/資産等 自然災害などへの事前対策を強化するために必要な防災・減災設備(機械装置:自家発電機、排水ポンプなど/器具備品:制震・免震ラック、衛星電話など/建物付属設備:止水板、防災シャッター、排煙設備など)
要件 ●経済産業大臣による「(連携)事業継続力強化計画」の認定取得
●価額要件は、機械装置:100万円以上/器具備品:30万円以上/建物付属設備:60万円以上
備考 -
適用期間 2021年3月末まで
少額減価償却資産の特例
適用対象者 青色申告書を提出する中小企業等
減税措置 要件を満たす対象設備を導入した場合に、全額即時償却か税額控除7%/10%を選択適用できる(税額控除10%の適用は資本金3000万円以下、または個人事業主)
対象設備/資産等 ●生産性向上設備(A類型):機械装置/測定工具・検査工具/器具・備品(試験・測定機器、冷凍陳列棚など)/建物付属設備(LED照明、空調など)/ソフトウエア(情報の収集・分析・指示機能) ●収益力強化設備(B類型):機械装置/工具/器具・備品/建物付属設備/構築物/ソフトウエア
要件 ●「中小企業等経営強化法」の認定取得 ●生産性向上設備は「生産性が旧モデル比で年平均1%改善する設備」(工業会が確認)/収益力強化設備は「投資収益率で年平均5%以上を実現する投資計画に関わる設備」(経済産業局が確認)●価額要件は、機械装置:160万円以上/測定工具や検査工具:30万円以上/器具・備品:30万円以上/建物付属設備:60万円以上/ソフトウエア:70万円以上 ※生産性向上設備については、以下の期間内に発売開始されたもの(機械装置:10年以内/測定工具・検査工具:5年以内/建物付属設備:14年以内/ソフトウエア:5年以内)
備考 ●対象は生産等設備を構成するもの(働き方改革に資する設備なども含まれる場合がある)で、事務用器具備品、本店や寄宿舎などに関わる建物設備、福利厚生施設に関わるものなどは該当しない ●国内投資であること ●中古資産・貸付資産でないこと
適用期間 2021年3月末まで
中小企業投資促進税制
適用対象者 青色申告書を提出する中小企業等
減税措置 一定規模の設備投資を行った場合に、特別償却30%か税額控除7%を選択適用できる(税額控除の適用は資本金3000万円以下、または個人事業主)
対象設備/資産等 すべての機械装置/測定工具・検査工具/一定のソフトウエア(複写販売するための原本、開発研究用ソフトウエアなどは対象外)/貨物自動車/内航船舶
要件 価額などの要件は、機械装置:1台160万円以上/測定工具・検査工具:1台120万円以上(または1台30万円以上かつ複数合計120万円以上)/一定のソフトウエア:1つのソフトウエアが70万円以上(または複数合計70万円以上)/貨物自動車:車両総重量3.5t以上/内航船舶:すべて(取得価格の75%が対象)
備考 ●器具備品は対象外(2017年度改正で廃止)●測定工具・検査工具、ソフトウエアで価額を合算する場合、同一事業年度内に取得していること
適用期間 2021年3月末まで
商業・サービス業・農林水産業活性化税制
適用対象者 青色申告を提出する中小企業者等。指定事業(小売業や情報通信業、広告業、飲食業、水産養殖業などの商業/サービス業/農林水産業に関わる事業。公序良俗に反するものなど、一部については指定事業から除外)
減税措置 経営を改善する設備を取得した場合に、特別償却30%か税額控除7%を選択適用できる(税額控除の適用は資本金3000万円以下、または個人事業主のみ)
対象設備/資産等 「経営改善指導助言書類」に記載された設備(器具備品:椅子や什器など主に店内に設置するもの/建物付属設備:照明/冷暖設備/給排水設備/トイレなど主に店内改装に関連するもの)
要件 ●アドバイス機関(商工会議所や認定経営革新等支援機関など)から経営改善に関する指導や助言を受け、その証明書に記載された設備であること
●本税制を用いた設備投資と経営改善により、年間2%以上の売上高または営業利益の伸びが達成できると見込まれること
●価額要件は、器具備品:1台または1基30万円以上/建物付属設備:60万円以上(工事費や設置費も含む)
備考 ●中古設備や貸付用設備は対象外 ●企業にとって主業である必要はない ●確定申告時にアドバイスを受けた証明書類を提出
適用期間 2021年3月末まで
生産性向上特別措置法に基づく固定資産税の特例
適用対象者 青色申告を提出する中小企業等 ※「導入促進基本計画」の同意を受けた市町村(市町村内で地域指定がある場合あり)
減税措置 固定資産税の課税標準を3年間にわたりゼロ~2分の1に軽減(割合は市町村ごとに条例で規定)
対象設備/資産等 生産性向上の指標が旧モデル比で年平均1%以上向上する設備(最新モデルの必要はない)
要件 ●市町村の計画に基づく投資であること ●労働生産性年平均3%以上 ●価額要件と販売開始時期:機械装置160万円以上(10年以内)/測定工具・検査工具30万円以上(5年以内)/器具備品30万円以上(6年以内)/建物付属設備60万円以上(14年以内※家屋と一体となって効用を果たすものを除く)
備考 ●生産・販売活動などに直接使うものであり、単純更新やバックヤードの設備などは対象外 ●中古資産は対象外
適用期間 2021年3月末まで

※中小企業等とは、資本金または出資金の額が1億円以下の法人/資本金または出資金を有しない法人は常時使用の従業員が1000人以下/常時使用の従業員数が1000人以下の個人事業主/農業協同組合など/ただし、みなし大法人は対象外/2019年4月1日以降に開始される年度から、3年間平均15億円を超える所得を得ている法人も対象外 ※設備投資減税では、①リースはファイナンスリースのみ対象(所有権移転外リースは税額控除のみ)でオペレーティングリースは適用外、②中古品は基本的に対象外、③取得設備は制度を利用したい当該事業年度内に使用を開始すること

■事業承継関連税制

 事業承継関連では、個人事業者向けの「個人版事業承継税制」新設が大きな目玉といえるだろう。

 この税制は、個人事業者の事業用資産を相続、または贈与を受けて事業を継続する場合に、事業用資産に課される相続税・贈与税が100%納税猶予される特例だ。

 個人事業者向けの事業承継に関わる支援策としては、以前から「事業用小規模宅地の特例」がある。これは土地に対する課税評価額を最大80%減額できるもの。だが、建物や機械などの事業用資産には減税制度は用意されていなかった。

 個人版事業承継税制では、土地・建物(土地400㎡/建物800㎡まで)に加えて、機械・器具備品や車両・運搬具、乳牛や果樹などの生物、特許権といった無形償却資産など対象となる事業用資産の範囲が幅広い。

 この税制は、2019年1月1日から2028年12月31日までに行われる相続・贈与を対象とした10年間の時限措置。具体的な制度設計の決定はこれからだが、「経営承継円滑化法」に基づく認定取得や承継計画の提出(2019年4月1日から5年以内)など、基本的な部分については法人版事業承継税制とほぼ同じスキームが検討されている。

■その他の税制

 設備投資と事業承継関連以外の制度としては、「法人税率の特例」と「中小企業技術基盤強化税制」の延長措置が挙げられる。

 法人税率の特例は、中小企業(資本金1億円以下)の法人税を軽減する制度だ。もともと中小企業の法人税率は年800万円以下の所得について、19%に軽減されており、同特例では2021年3月までの時限措置として、さらに15%まで軽減される。

 研究開発税制は大企業も含めて全法人が活用できるが、中小企業は中小企業技術基盤強化税制として優遇措置を適用することが可能だ。

 この税制の減税措置は、試験研究費に応じた金額を法人税額から控除できるもの。試験研究費12%に相当する金額を税額控除(法人税額の25%が上限)できる。さらに、一定割合以上増加させた場合には、法人税額の35%を上限に最大で試験研究費の17%を控除できる上乗せ措置が講じられている。2019年度改正では、この措置が2年間延長される。

 増加割合など一部の要件は変更される方向だが、基本的な制度設計などは現行と変わらない。

 この他、2018年度改正で延長された「交際費課税の特例」と「所得拡大促進税制」も、2019年度において継続活用することが可能だ。

 円滑な事業活動に不可欠といわれる交際費に関わる制度が、交際費課税の特例。税法上の中小企業は、「定額控除限度額(800万円まで)の交際費を全額損金参入」か「支出した飲食費の50%を損金算入(上限なし)」のいずれかを選択適用できる。

 一般的な中小企業であれば、基本的には前者で十分な減税効果が得られるだろう。

 この特例を最大限に活用するためには、社外関係者との1人あたり5000円以下の飲食費について、交際費とは別に損金処理することがポイントだ。

 所得拡大促進税制は、中小企業の賃上げ支援を目的としたもの。国内に勤務する従業員の給与などを増加させると、増加額の15%を法人税から控除できる。

 2018年改正の延長時に適用要件が緩和されており、「給与等支給額が前年以上」「継続雇用者給与等支給額が前年比1.5%以上増加」という2要件を満たせばよくなった。さらに、継続雇用者への給与などの支給額が一定以上増加している場合には、上乗せ措置として25%の税額控除の適用も可能だ。

 給与には、社員の基本給与だけでなく、ボーナスや残業手当、アルバイトやパートの給与も含まれる。

 働き方改革関連法の「同一労働同一賃金」の導入が、中小企業では2年後に施行される。その対策に、この税制を活用して早期に体制を整えるのも一考ではないだろうか。

(*1)本稿執筆時点、租税特別措置法において個人事業者についても対象となるよう審議されている
(*2)中小企業等経営強化法をベースに2016年度改正で創設された「固定資産税の特例」とは異なる。2016年度新設の特例は2019年3月31日で終了