編集長の体験レポート/シャニム編集長◎征矢野毅彦見れば分かるさ!新4K衛星放送

NHK BS4K「メキシコ・ユカタン半島/驚異の大自然」

新4K衛星放送への賛否

昨年12月1日からスタートした「新4K衛星放送」。すでに視聴された方も少なくないと思います。放送開始から3カ月ほどが経過しましたが、その評価についてネットなどでは、賛否両論といった状況です。

一番の高評価要因は、2K放送とは比較にならない高画質に対するもの。特にネイチャーものや旅行ものなどのドキュメンタリーについては、その優れた画質が誰にでも理解しやすいものであり、称賛の声が多く聞かれます。

一方で新4K衛星放送への不満のトップは、4Kで制作された番組数の少なさでしょう。

特に民放については現状、週の番組の大半が2K制作されたコンテンツの4Kアップコンバート放送。放送開始の初期段階では、民放の4K制作番組の少なさは、ある程度は仕方がないと思っていました。広告を糧とするだけに、一足飛びに4Kとはならないでしょう。とはいえ、「ここまで少ないのか」が偽らざる心境。

4K&8K制作番組が大半を占めているNHKは、さすがに見応えのある番組を揃えています。その一方で再放送が少なくはなく、まだまだ充実しているとは言い難い状況です。

これらの是正については、ある程度の時間が必要でしょう。BSデジタルハイビジョンがスタートした2000年当時も、今と同じような状況でしたが、昨今は優れたコンテンツが多く制作されています。新4K衛星放送も同じような流れで、徐々に拡充されるはずです。

疑似体験できる“ユカタン半島”

数量的にはまだ充実しているとは言い難い4K番組ですが、内容的には、見応えや新しい発見がある番組が少なくないことも事実です。ここでは個人的に「さすが新4K衛星放送!」と感じ入った番組を、いくつか紹介しましょう。

まずは「メキシコ・ユカタン半島/驚異の大自然」です。これは新4K衛星放送の開始前から、ぜひとも見たいと心待ちにしていた番組。もともとは新8K衛星放送用のコンテンツとして8Kで制作されたものですが、NHKは夜10時過ぎから「8Kベストウインドー」というコーナーを設置し、4Kにダウンコンバートした8K番組を放送しています。

ダウンコンバートといえども、その画質は文句なく一級品。特に「〜ユカタン半島〜」は新4K衛星放送の実力を、まざまざと見せつけてくれる名作だと思います。

内容はユカタン半島に点在するセノーテ(石灰岩地帯にみられる洞窟に、地下水がたまってできた天然の井戸・泉)に、ダイバーが8Kカメラを持ち込んで洞窟内部を詳細に撮影したもの。セノーテならではの、本来ならあり得ないはずの水中鍾乳石群が克明に描かれています。

何より驚かされたのは番組の冒頭です。左上の写真のように、どこまでも無色透明な水中の洞窟内を、ダイバーがまるで空中を飛んでいるかのように進むシーンがいきなり出現。これを見ただけで番組にくぎ付けにされたほどでした。

セノーテ内部の水は、石灰岩でろ過されているため、どこまでも無色透明。そして、やがて海の近くにまで達すると、またしても不思議なシーンに遭遇。セノーテの淡水と、海の海水とが入り混じるのですが、海水は比重が重いため、淡水と海水がはっきりと上下に分離。海水はやや濁ったように見えるため、上層の淡水を行くダイバーは、海上を浮遊しているかのように見えます。

セノーテについては知識としては認識していましたが、映像を見たのは初めて。しかも、ここまで鮮明かつ精細なものを見せられると、これはもう “疑似体験”という以外にありません。新4K衛星放送のよさを、実感できる番組だと思います。

肉眼で見えない世界を完全描写

同じく8Kベストウインドーが放送した番組の中では、「ルーブル/永遠の美」も強くお勧めできる内容です。3万5000点以上といわれるルーブルの美術品の中から、著名な絵画や彫刻などをピックアップ。全体像のみならず、細部までを克明に8Kカメラで撮影したものです。

番組の冒頭、ルーブルの関係者は次のようにコメントしています。

「肉眼で見えないものまで見える。芸術のディテールはもちろん、作者の意図までが見えることを期待しています」

このコメントに、当初は「オーバーだな」と感じたのですが、見終わったあとは一変。確かに「肉眼で見えないものまで見えた」と納得できました。

その最たるものと感じた絵画が「宰相ロランの聖母」(ヤン・ファン・エイク)です。これは「ブルゴーニュ公国フィリップ善良公の宰相であったニコラ・ロランが、天地創造の力を象徴する地球儀を持ちながら宰相を祝福する神の子イエスを崇拝している」(ルーブル美術館公式HPより)というもの。

そのサイズは約60cm四方というコンパクトな作品なのですが、その中に実に微細なものまでが描かれていることに驚かされました。

例えば聖母マリアがまとっているマント。そのスソの部分には、祈りの言葉が文字として書かれているのですが、これなどは一般人の肉眼では、まず認識不可能でしょう。これを8Kカメラで超高精細に撮影し、アップ画像として再生したことで、誰にでも認識できます。

また、背景には橋とそこを行き交う人々が描かれているのですが、人の大きさは1mmあるかないか。これは作品全体を、58インチ画面いっぱいに引き伸ばした状態でも肉眼では認識できない(というか人であることに気付かない)大きさです。

これも8Kカメラで克明に記録し、アップにして4K画面に映し出すことで初めて、一般人にも認識できるようになったわけです。美術品の鑑賞とは、実物を生で見ることが最も正しいと思っていたのですが、「それだけではない」ということを、はっきりと知らしめてくれた番組だと思います。

圧巻!「アラビアのロレンス」

NHKのBS4Kは映画の4K化にも積極的で、過去の名作を4K放送しています。その中でも「さすが4K」と感じ入ったのが「アラビアのロレンス」です。日本では1963年に初公開された名画であり、見られた方も多いでしょう。個人的にもスクリーン、テレビ放送、レーザーディスク、DVD、ブルーレイなどを通じて何回も見ています。

ところが今回、4Kリマスターされたものを見て、改めてこの映画のすごさ・素晴らしさを感じることができました。それは「砂」の美しさです。

周知のようにこの映画は、ヨルダンやモロッコなどでのロケを中心に、2年以上をかけて撮影した超大作。砂漠が重要な舞台になっているわけですが、そこを舞う砂が本当に美しい。特に逆光気味に太陽光を浴びた際の砂のキラメキは、過去に見たブルーレイなどの2K画質とは明らかに別モノと断言できるほどです。

4Kコンテンツではキラメキや光の描写が、ひと際美しいと感じるのですが、この映画にはそれを実感できるシーンが随所に登場します。例えば夜のキャンプで煌々とたかれた焚き火のシーン。あるいは戦闘シーンにおける燃え盛る炎等々。今までは見過ごしていたようなシーンでも、光の描写に思わず目を引き込まれることが何度もありました。

それと同時に、人間の表情の描写も、2Kとは明らかに異なると感じます。この映画では砂漠の風景や戦闘シーンだけでなく、人と人との葛藤も非常に重要です。

オマー・シャリフやアンソニー・クイン、アレックス・ギネスといった往年の名優たちの表情で、過去には見えなかったり見過ごしてきた部分が、4K化を機にクローズアップ。より繊細に描写され、あたかも画面から浮かび上がってきているような臨場感があります。「もう、何度も見たよ」という方にこそ、ぜひとも見ていただきたい部分です。

ここまで個人的に「さすが」と感じた4K番組をザッと紹介しましたが、いかがでしょうか。ここで重要なポイントは、NHKや民放の4K番組を見るだけならば、最小限の投資で済み、新たな受信料や契約料などは不要ということです。

自分の場合、既存の4K対応テレビ(三菱REAL LCD-58LS3)と既存の受信回線(NTT フレッツテレビ)を流用し、そこに4Kチューナー(フナイ「FT-4KS10」&シャープ「4S-C00AS1」)を追加接続しただけです。

新4K衛星放送で勘違いされていることは「NHKの受信料がアップするのではないか」ということでしょう。これは完全な誤解で、4K&8K受信料は既存のBSデジタル放送受信料に含まれており追加費用は発生しません。

つまりBSデジタルを契約し、4K対応テレビを持っているのであれば、4Kチューナーを追加しなければ「もったいない」ともいえるわけです。

特にBSプレミアムをよく見られる方であれば、NHKのBS4Kはその延長線上の高精細版。4Kチューナーの追加投資は、無駄にはならないように感じます。チューナーは安いものなら2万円台から。今後の発展性などを考えれば十分にリーズナブルではないでしょうか。CS4Kの受信対応は、それから考えても遅くはないと思います。

※4K放送を4K画質で楽しむためには、HDMI®端子(HDCP2.2と4K60Hz入力に対応)のある4Kテレビや4K対応テレビが必要です。※ハイビジョンテレビで視聴するときには4K画質にはなりません。

製品紹介

4Kチューナー内蔵ブルーレイディスクレコーダー
パナソニック DMR-SUZ2060
4Kチューナー
ソニー DST-SHV1
4Kチューナー
フナイ FT-4KS10
4Kチューナー
東芝 TT-4K100